このブログの更新通知を受け取る場合はここをクリック

ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

fragie.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

ふらんす堂の編集日記と最新ニュースなど。 By YAMAOKA Kimiko
by fragie777
プロフィールを見る
画像一覧
更新通知を受け取る
Twitter Facebook Instagram
< February 2021 >
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28
カテゴリ
全体
インタビュー
本紹介
賞
未分類
以前の記事
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
more...
最新のコメント
muuyamaさま ..
by fragie777 at 18:57
最近、私もデジカメをアス..
by myuyama at 10:17
失うべきものを失わないと..
by koichi at 13:33
https://www...
by math at 13:14
Yukukoさま ..
by fragie777 at 18:15
高遠弘美さま 第3..
by fragie777 at 18:59
山岡様 いつもありがと..
by 高遠弘美 at 15:46
桂幾郎さま コメン..
by fragie777 at 13:31
お久しぶりです。 いつ..
by 桂川幾郎 at 10:43
kensukeさま ..
by fragie777 at 23:52
検索
画像一覧

もっと見る
エキサイト
XML | ATOM

Powered by Excite Blog

会社概要
プライバシーポリシー
利用規約
個人情報保護
情報取得について
免責事項
ヘルプ

エメラルドグリーンの眼差し。

2月14日(日) バレンタインデー 旧暦1月3日



今日もあたたかな春の一日となった。

わたしは新しいデジカメを胸にかかえて仙川沿いをあるくことにした。

そして、そのまま仕事場へむかうのだ。




エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21120760.jpg

これはまずご挨拶に撮ったわがカルガモ。




ワイシャツの上にカーディガンをはおり、さらに薄手のコートを着て出かけた。
いったいどんな格好していったらいいのか見当もつかない。
暑くなったら脱ぐことができるように重ね着をすることに。



ということで、すぐに暑くなってしまい、ウールのカーディガンを袋に突っ込んだ。



エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21130610.jpg

こんな風に。





エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21121201.jpg

仙川。


エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21121574.jpg

手前の石のうえに、黒いものが。。。


エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21121878.jpg

川鵜である。

水の青さは空の青さだ。


エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21122688.jpg

黒光りをさせながら悠然とあたりを見ている。


エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21122965.jpg

眼の色がこんなに美しいエメラルドグリーンとは知らなかった。



エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21130091.jpg


鋭い眼差しで魚を探している。




エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21123453.jpg
この目、
そしてこの嘴、、、

攻撃的ななんともいい顔である。

身体の鱗模様もイカシテいる。

ちょっと、魅了されてしまった。。。。。



散歩する人たちが、ときどき見ていく。。。






あたらしいカメラはまだ手になじまず、何よりも落とさないように、取り扱いにも緊張する。


今日はiPhoneを落とした(!?)くらいで、デジカメは落とすこともなく、まずは一安心。

慣れていけば、もう少し自由にいろんなものが撮れるかも。。。






エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21283264.jpg

雑木林もあたたかな日差しに満ちていた。。。。







今日は、片山由美子著『色の一句』より、今日の日付のもの。


 スプーンに杏仁豆腐春ともし    松尾隆信


明りには、季節それぞれの表情がある。春の灯に感じるのは華やぎとかすかな憂いだろうか。ひと掬いの杏仁豆腐がかくも美しく見えるのも、まぶしい春の灯ゆえである。豪華なシャンデリアの下、デザートをゆっくり味わっているのであろう。春の夜の宴も間もなく果てようとしている。(『はりま』)季語=春灯(春)






美しい一句である。
実は、この句を紹介したいま、わたしも今日仕事場で杏仁豆腐を食べたこと思い出している。
お腹がすいたので、セブンイレブンで杏仁豆腐と蕎麦麦茶をもとめた。
少し前に雑談のときにスタッフの文己さんが「セブンの杏仁豆腐がおいしい」って言っていたのを思いだしたからだ。
プリンよりもさっぱりしていて、ヨーグルトよりも優しい甘さ。ちょっと香ばしいアーモンドエッセンスの香りが好きだ。
ああ、でもこんな優雅な雰囲気じゃなかった。
バランスボールの上に乗って、ふわふわしながらそれはもう一挙に平らげた。
お腹がすいてだんですもん。
華やぎも憂いも、鼻先をかすめもしなかった。。。











エメラルドグリーンの眼差し。_f0071480_21500829.jpg




飼い主とは違って、優美で物憂げな日向子。










# by fragie777 | 2021-02-14 21:59 | Comments(2)

新しいデジカメ。

2月13日(土) 魚上氷(ううこおりをいずる) 旧暦1月2日



デジカメを買いに吉祥寺のヨドバシカメラまで車で行く。

新しいカメラを買うと思うとすごくうれしい。





新しいデジカメ。_f0071480_19324812.jpg

吉祥寺は相変わらずの人出。
若者を中心ににぎわっている。


美味しいラーメン屋さんがあるということろに来てみたのだが、すでに店はあとかたもなかった。


新しいデジカメ。_f0071480_19325494.jpg


新しいデジカメ。_f0071480_19325709.jpg

街中の一角で咲く紅梅。



新しいデジカメ。_f0071480_19325986.jpg





カメラは一眼レフに憧れたが、値段が高いのと使いこなせないだろうということと、あくまで仕事のためのものと考えるといままでの延長線上のものにした。
わたしはキャノンのデジカメをこれまで愛用してきたのだが、今回もそれ。

購入してから、アマゾンでそのカメラを調べたところ評価が高いので少し安心。
カメラを失って寂しかったわたしの心がいまは喜んでいる。

明日は天気がよかったから仙川沿いをあるいてみよう、ああ、それともふたたび自転車に乗って井の頭公園まで行ってみようかしら。
ちょっとウキウキしている。









今日は、髙橋順子詩集『川から来た人』より。




 光る川



 ある日ぼくらのあいだに
 光る川が流れた
 十七歳だった
 川が流れたので
 見つめあわないわけにはいかなかった
 水が乱反射し
 きみの顔はゆがんだり影になったり
 白く感光したりした
 川があいだに流れていたので
 触れ合うことができなかった
 だからきみにほんとうに鼻があるのか
 ことばはどこから発せられるのか
 どんなひたいをしているのか
 それよりもなによりも
 きみがほんとうにこの世にいるのか
 さえもつかめなかった
 ぼくらは世界の涯から
 手紙を書き合った
  まだ返事が来ない
  待ってます
 そればかり書いた 
 「あした試験なのにこの手紙を書いています」
 あした試験なのに手紙を書かせていたものが
 川の剃刀土手に
 ひたひたと星の波を寄せている










新しいデジカメ。_f0071480_19523603.jpg







# by fragie777 | 2021-02-13 19:57 | Comments(0)

わたしを初期化したい気分。

2月12日(金)  旧暦元日


わたしを初期化したい気分。_f0071480_17283289.jpg

深大寺の欅。
全体にうっすらと赤味をおびている。
ここはとくに欅が素晴らしい。



わたしを初期化したい気分。_f0071480_17290325.jpg

木々も早春の空にのびやかにその枝を泳がせているようだ。



わたしを初期化したい気分。_f0071480_17290643.jpg

鳥はたぶんヒヨドリ。



またやってしまった。
えらい失敗を。。。


いまくどくどとわたしの失敗談を書き始めたのだけど、
全部削除をした。
なにも書かないことにした。

それよりも反省しろ、yamaoka!!って自分に喝を入れた。


ということでいまはしょんぼりしております。
布団をかぶって寝てしまいたい気分。

が、
すこし経てば、また不死鳥のごとく蘇ります。
ふてぶてしいヤツだ、なんて思わないでくださいませ。
このツラの皮の厚さでなんとかやってまいりました。


ありがたいことに、皆さんやさしく許してくださることだ。
いまもかえってお電話をいただいてしまった。
本当に救われたような気持ちである。


以下、今日の反省点です。(傾向と対策)

カレンダーに予定をかくときは、決して日にちを間違えないこと、
誰かほかのスタッフに確認してもらおう。
もっと自分が粗忽者であることを認識しよう。
いたたいたご案内はときどき見直そう。

まだほかにあるような気がするけれど、、これだけは基本ね。



今日も実は木曜日だと思って、リモート体制を無視して早く来てしまった。
仕事場にむかう商店街で曜日を間違えたことに気づく。
(ああ、こんなに早く出社する日ではなかったのだ)
ふらんす堂のドアーをあけたとたん、スタッフに怪訝な顔をされる。




最近体力管理は、こう言っちゃなんだけどすばらしく良いのだ。

ずっと身体を診てもらっている整体の片山洋次郎先生に、「歳のわりにはわるくない」と褒めてもらったところである。
若いうちは個々人そう大差ないのであるが、わたしくらいの年齢になると個人差が出て来るらしい。
身体も軽いし、それほど疲れることもないし、夜もよく眠れる。
「筋肉がいいかんじについてきている」ということ。
R化の問題は、骨であるよりも筋肉の問題らしい。
皆さん、筋トレにはげみましょう。


しかし、肝心の情操のほうがどうもあやうい。
筋トレをしてわたしの粗忽が解消されるのであれば、それはもう鍛えまくるのであるけれど。
そこはどうもちがうらしい。



悩ましい。。。。






 朝寝せりわたしを初期化するために     高橋道子
 









わたしを初期化したい気分。_f0071480_18355072.jpg











# by fragie777 | 2021-02-12 18:46 | Comments(0)

浅春の寺。

2月11日(木)  旧暦12月30日



よく晴れた一日となった。
ご近所の深大寺まで車をとばす。
隣接している神代植物園に行きたいのであるが、緊急事態宣言にともなってここもお休み。
なかに入ることができないのでせめて深大寺をふくめてその回りを散策。




浅春の寺。_f0071480_17211578.jpg

深大寺山門に咲いていた紅梅。



浅春の寺。_f0071480_17211782.jpg




浅春の寺。_f0071480_17212342.jpg

境内は相変わらず人が多い。


浅春の寺。_f0071480_17212076.jpg

こちらはにぎやかに咲く紅梅。




 いつときの大きな日向梅の花  安田徳子  


 紅梅や恋せば髪の伸びやすき  池田瑠那





日差しはまぶしく、確実に春になったことを実感する。
まさに、

 
  風光りすなわちもののみな光る    鷹羽狩行


という感じ。





浅春の寺。_f0071480_17361524.jpg

門前の仲見世通りへとつづく道。




浅春の寺。_f0071480_17215028.jpg


「だめよ、落っこちるわよ」

ってお母さんに呼び止められていた子ども。




 春の水とはこどもの手待つてゐる   ふけとしこ



の句を思いだした。



 
ぼんやりと水をみていたら、藪から黒猫が現れた。

手足に白のソックスをはいて、喉からお腹へかけて白い。

(あ、ヤマトだ!!)

昨年の2月13日に亡くなった愛猫ヤマトそっくりの猫なのだ。
死んでほぼ一年が経つ。。。

水を飲みにやってきた。

近づけない距離だ。



浅春の寺。_f0071480_17213338.jpg

「ヤマト!」って声に出して呼んでみた。

知らんぷり。

ヤマトではなかった。
ヤマトであるわけはないのだが、あまりにも似ている。


やがてまた藪の中へと姿を消したのだった。






浅春の寺。_f0071480_18175025.jpg


在りし日のヤマト、手前は日向子。








悲しいことがおこった。
わがデジカメが壊れてしまったのだ。
深大寺のトイレの床に落としてより、撮影できなくなってしまった。
部品がはずれ、テープでとめたのであるがだめ。
すでに元は取るくらいよく使ったカメラである。
しかし、カメラが壊れてしまうとこんなにさびしいのかしらって思うほどさびしい。。。

わたしの一部みたいだったかも。




















# by fragie777 | 2021-02-11 20:16 | Comments(0)

白長須鯨のように休日を過ごす?!

2月10日(水)   旧暦12月29日


車でインターFMを聴きながら出社。
スティーヴィー・ワンダー( Stevie Wonder)の代表作ともいえる「迷信」 (Superstition)の話題となった。
懐かしいわすれられない曲だ。
若き日にすさまじいほどの熱情をもってわたしにスティーヴィー・ワンダーとその音楽について語ってくれたジロー君をふっと思いだした。
彼はいまもどこかで歌っているのだろうか。。。。




白長須鯨のように休日を過ごす?!_f0071480_17302595.jpg


鴨たちが点在する仙川。




白長須鯨のように休日を過ごす?!_f0071480_17303693.jpg
オナガカモ


白長須鯨のように休日を過ごす?!_f0071480_17304022.jpg
マガモ。



白長須鯨のように休日を過ごす?!_f0071480_17304520.jpg

カルガモ。


皆それなりに仲良く暮らしている。

最近、立ち止まって川を覗き込んでいると鴨たちがかなりのスピードで集まってくる。
そしてこちらを見上げたりしているものもいる。

どうしてかな。。。

すこし歩いていくと前方に自転車をとめて、わたしと同じくらいの年齢の女性がさかんに餌を川の上から鴨たちに投げているのだ。
鴨たちは超スピードで集合し、大騒ぎをしながら餌にくらいついている。
ははん、
そうか、
わたしのことも餌をくれるおばさんって思ったらしい。
わたしはあなたたちに餌はあげないわ、悪しからずね。ってふたたび集まってきた鴨たちに告げる。


見ているとおじさまたちに集まる気配はない。
おもしろい、
何かを察知して鴨たちは餌をくれるかもしれない人間を識別しているのだ。
いい歳をしたおばさんであることか。。。。
わたしの希望としては、もうちょっと繊細に識別して欲しいのだけれど。。。。
って、yamaokaは何を言いたいのか。。。105.png






ケンタッキーフライドチキンってあるでしょ。
今日はどうしてもそれが食べたくなった。
で、
わたしの昼飯はこれ。
店が商店街通りあるいて五分ほどのところにある。


白長須鯨のように休日を過ごす?!_f0071480_17311328.jpg


白長須鯨のように休日を過ごす?!_f0071480_17311501.jpg

机の上にドサッと置き、じゃまなものをあっちにやりこっちにやりおもむろに広げてバランスボールにのってぷかぷかして食べるのね。
ちなみに買ったものは、ホットパイと称するホワイトシチューが入っているパイ生地でかこまれたもの、フライドチキンひとつ、コールスローの小、家から持ってきたトマトジュース。
お腹いっぱいになってしまった。
それなりに美味しかったけれど、味が濃い。だからあとで喉が渇いてしまった。
一年に一度くらいでいいな。。。。。






白長須鯨のように休日を過ごす?!_f0071480_18200585.jpg

そしてこれは今日のわたしの靴下。
ケンタッキーの模様にハモっているので、
あはっ。129.png







明日はお休み。
ちょっと嬉しい。。。。
予定なんてなんにもないけど。。
でもこの句のような休日っていいかも。






 白長須鯨のやうに寝返り打つて春      松林尚志














# by fragie777 | 2021-02-10 18:47 | Comments(0)

冊子「第11回田中裕明賞」をどうしても欲しいと。。。。

2月9日(火)  旧暦12月28日



冊子「第11回田中裕明賞」をどうしても欲しいと。。。。_f0071480_17461954.jpg

ヒドリガモのつがい。



冊子「第11回田中裕明賞」をどうしても欲しいと。。。。_f0071480_17463147.jpg


昨日このブログで書いたが、繁殖期をすぎた水鳥のオスの身体が一時的に雌と同じように地味なることを「エクリプス」と言うことを知った。

話はえらく飛ぶが、繁殖期(思春期or発情期)になると男子の身体が美しく変貌するなんてことがあったら、それは歓迎しなくもない。
が、その時期がおわると美しさが消えてしまうっていうのは、どうも、ね。。。





まもなく出来上がってくる「森田峠全句集」の箔押し見本が届いた。


冊子「第11回田中裕明賞」をどうしても欲しいと。。。。_f0071480_17480332.jpg

亡くなられてからすでに、今年で8年が経過している。
教師生活の長かった俳人である。
イメージのクロスは紺と最初思ったが、紺よりもあかるい花紺となった。
それは良かったと思っている。
黒メタル箔がよく映える。




冊子「第11回田中裕明賞」をどうしても欲しいと。。。。_f0071480_17480674.jpg

装画にもちいたキリンの絵のカラ押しもきれいにいった。

刷取の一部抜きも出来上がってきたので、「かつらぎ」主宰の森田純一郎氏へメールに添付して送る。

森田氏よりは「いよいよですね。出来上がりが楽しみです」とのお返事をいただく。


季語「麦踏」の句を調べていたら、森田峠の一句に出合う。

 麦踏むや海は日を呑み終はりたる     森田 峠

全句集を編んでいて、気づかなかった句だ。
ああ、こんな句もあったんだと、新鮮な気持ちになる。第1句集『避暑散歩』に収録されているものだ。



 
冊子「第11回田中裕明賞」をどうしても欲しいと。。。。_f0071480_18323207.jpg

これは「栞」の刷取り。

執筆者は、深見けん二、宇多喜代子、片山由美子、三村純也、岸本尚毅の各氏。
皆さん、それぞれいい栞文をくださった。
出来上がりを楽しみにされていることと思う。


本作りって、この段階くらいが一番気持ちが高ぶるときかもしれない。
もうあと少し、というところで大方の本の様子がみえてくる。
思ったとおりにいった、とか、ああ、ここをこうすれば良かったとか、、
原稿が入って一冊の本になるまで、幸せな時間が過ぎていくのだが。。。

(クタバルまで本をつくっていたい。……)










冊子「第11回田中裕明賞」をどうしても今日中に欲しいというお客さまの電話があった。
近くにいるので買いに来たいという。スタッフの緑さんが対応。
ふらんす堂では目下お客さまのご来社は、基本的にお断りをしているのだが、冊子はふらんす堂にすこしあるので、手渡すぐらいならということで来ていただくことにした。
ピンポーンってチャイムが鳴った。
なんと、
現れたのは、
安里琉太さん、だった。
「あら、まあ、安里さんだったの!」
「はい、どうしても必要だったので、それにぼく、いま一時的に仙川のすぐ側に住んでいるんです」という。
「俳人協会新人賞、ご受賞おめでとうございます! 素晴らしかったですね」
「ありがとうございます」と嬉しそうな安里さん。
今年度の田中裕明賞にも応募してくださっている。
句集は『式日』(左右社刊)
「田中裕明の句が大好きなんです。」と。
「どの句集がお好き」と尋ねると、
「『花間一壺』!」と即答。
「『花間一壺』が好きなんて珍しいかも」と言うと、
「『桜姫譚』も好きです」いよいよ珍しい。
わたしは句集『花間一壺』の編集担当をして、田中裕明という俳人に魅了されたということもあるので、『花間一壺』が好きと言われると嬉しい。
『花間一壺』の最初におかれた一句、
 杣人の長身たわむ露の月
から引き込まれたのだった。この句はあまり話題にされないのだが、わたしには衝撃の一句だった。
「島田牙城さんからいろいろと資料をもらっているんです、「水無瀬野」時代の裕明について書くようにって、書きたいと思います!」とちょっと強い表情をした安里さんだった。
「ああ、是非に読みたいですね。。。田中さんを好きっていう若い俳人の方、多いですね。すこし前にお会いしたあのう、「澤」におられて今「静かな場所」に連載をしているええと……」
「柳元佑太さんですね、そう彼も田中裕明が好きですね、それと生駒大祐さんも大好きですよ!」

本当はもっともっと話を伺いたかったのであるが、なにしろこの状況である。
玄関先での立ち話、安里さんはまもなく郷里の沖縄に帰られて教鞭をとられるという。

きっとそこでじっくりと俳句に向きあい、さらにさらに俳人として力をつけていかれることであろう。
俳句の未来をになう頼もしい青年だ。




冊子「第11回田中裕明賞」をどうしても欲しいと。。。。_f0071480_17480996.jpg
安里琉太さん。



玄関先での撮影である。
マスクをせめて外してもらえれば良かったって、
いまさらに思っている。






















# by fragie777 | 2021-02-09 19:33 | Comments(0)

祝 池田澄子さま。

2月8日(月) 黄鶯睍睆(うぐいすなく) 針供養  旧暦12月27日



祝 池田澄子さま。_f0071480_18055131.jpg
日向ぼっこをしている仙川の小鴨のメス。

小さくて可愛らしいが色は渋いよなあ。



祝 池田澄子さま。_f0071480_18084562.jpg
オスはこうよ。


鴛鴦など端的にそうであるが、どうして水鳥は雄がえらく華やかで雌は地味なんだろう。


で、ちょっと調べたところ、意外な事実が判明。
雄はいつも派手というわけではなく、繁殖期になると派手になるのですって。
真夏などは雄雌区別がつかず、秋から冬へかけて雄は変貌して派手になるのだそうである。
これも雌の愛を売るための変身である。
知ってました。
全然しらなかった。
鴛鴦もそうらしい。
あれほど雄雌がちがう鳥であるけれど、やはり繁殖期の出来事らしいのだ。
鴛鴦は繁殖期をすぎるとカップルを解消して、ふたたび新たなカップルをつくるらしい。
「種の繁栄には遺伝子の多様性が欠かせないことから、効果的な習性といえる。」とあった。
いつまでも仲良しの人間の夫婦を「おしどり夫婦」って言うけど、それは人間の幻想がつくりあげたもの。
すべては種の保存のためにカップルの取り替えが行われるということのようだ。
へえー、
そうなんだ。



そういうことからすると、人間のカップルってどうなんだろう。
人間世界に適応させるっていうわけにはいかないか。
いや、いや
これをつきつめてゆくと、市民生活を脅かす、いや破綻さえ起こすことになりそうだ。
忘れよう。。。。






現代俳句協会からお知らせをいただいた。

「第21回現代俳句大賞」が決定したということ。
これは、作品や句集ではなく、人に与えられる賞である。

池田澄子さんに決定。

ふらんす堂ともご縁が深い池田澄子さんにお電話をした。

「おめでとうございます!.素晴らしいですね」と申し上げたらとても喜んでくださった。
で、電話でお話しているうちに、さらにさらに驚いたこと、
池田さん、今年度の讀賣文学賞を受賞されていた!ということ。
昨年刊行された句集『此処』(朔出版刊)で。
「ええっ、知らなかった!!です。いつ発表でした?」
「2月1日よ」
「スタッフのひとりが讀賣新聞を取っているんだけど、気づいてないみたい、ひゃあーそれはおめでとうございます! 大きな賞をふたつもご受賞なんて、すばらしいですね。でも、おしえてくださらなくちゃ駄目じゃないですか」って抗議したら、
「わたし、殆どの人に話してないのよ、なんか恥ずかしくってさ」ですって。
「あらら、おめでたいことなんですから。ちゃんと言わなくっちゃ。。」
いやだが待てよ、池田さん、そんな風に言ってるけど、わたしだけ知らなくて、知っている方は多いのかも。。
こういうことに結構ぼんやりしているyamaokaなので、、、、

ともかくも、

池田澄子さま おめでとうございます!179.png179.png179.png179.png179.png

心よりお祝いを申し上げます。




祝 池田澄子さま。_f0071480_18442718.jpg




讀賣新聞をさがしたのだけど、処分してしまったあとだった。
作家の川上弘美氏の選考のことばがとても嬉しかったと池田澄子さん。


是非に読みたいと思うので、あとでおしえていただくつもり。







# by fragie777 | 2021-02-08 18:58 | Comments(0)

鶫に気に入られたのかも。。。。。

2月7日(日)  旧暦12月26日


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17351181.jpg

あまりにもあたたかななので自転車で井の頭公園に行く。


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17352289.jpg

たくさんの人出である。
井の頭動物園はお休み。(緊急事態宣言によるものだろう)


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17351788.jpg


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17352934.jpg


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17353558.jpg
貸しボートは大人気で、列をつくって並んでいた。

水生動物園もお休みなので、水鳥の姿はほとんどない。

わずかにいたのが、

鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17354477.jpg

かいつぶり。


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17354700.jpg

キンクロハジロ。


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17360567.jpg

オオバン。


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17355059.jpg

川鵜。


一羽ないしは二羽である。


井の頭公園の端には、神田川のはじまりがある、と津久井紀代さんが書かれていた。
いま製作中の「自句自解ベスト100」にである。
津久井さんは、吉祥寺にお住まいで、井の頭公園は散歩コースであるとか。


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17355793.jpg

その神田川のはじまりがここである。

ここがその源流であるのかと、眺めいる。



鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17360150.jpg
説明書きが立っている。

神田川は20代前半から30歳まで、その川沿いに住んでいたこともあって懐かしい川である。





たっぷり一時間ほどをブラブラして、早春の日差しを楽しんだのだった。


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17543000.jpg


鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17363005.jpg

木々は、まさに「ほうほうと紅き色あり」で、冬の緊張から解き放たれた感がある。



鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17363286.jpg

けぶれる木々を背にして、わたしは自転車にまたがったのだった。







帰りは仙川沿いを通って、わが水鳥たちを見ながらそのまま仕事場へ。


このところ本当によく鶫をみかける。
じつは、井の頭公園について自転車を降りて歩き始めたところ笹原から躍りでた鳥がいた。
びっくりして思わず立ち止まると、目の前に鶫がいてじっとしている。
わたしは慌ててカメラを取り出しかまえたところ、さっと姿を消してしまった。
なんとか一枚端っこに捉えたのが、これ。



鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_17593109.jpg
ぼけてしまっているけど、鶫よね。

そして、今日仙川沿いを自転車をおりて歩いていたら、やはり一羽が降り立った。
椋鳥もいたのだが、鶫もいた。
最近よく遭遇するので、鶫はすっかり判別できるようになった。
でも不思議。
必ずと言っていいくらい会うって、鶫に気に入られたのかな。。。



鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_18070986.jpg

これは仙川沿いにいた鶫。
そうよね、鶫よね。

10月ごろシベリアから群をなして飛んできて、群をといて単独行動をして、3月半ばには帰ってしまうんですって。
冬鳥なので冬は鳴かず「口をつぐんでいる」ことから「ツグミ」という名がついたということ。
帰ってしまうって思うとなんだかいっそう愛おしい。

鶫は秋の季語であるけれど、、


 鶫飛び雲脱げる山脱がぬ山      水原秋櫻子








鶫に気に入られたのかも。。。。。_f0071480_18234561.jpg

そしてやっぱりいたセミコちゃん。





NHKのBSで矢代亜紀のデビュー50周年記念の番組をやっていた。
八代亜紀は好きである。
俳人の平畑静塔さんが、矢代亜紀のことが好きで最後の句集はその名前をとって『矢素(やしろ)』と命名されたのは知る人ぞ知る話である。

矢代亜紀を見るたびにそのエピソードを思い出してしまう。







# by fragie777 | 2021-02-07 21:02 | Comments(0)

早春。

2月6日(土)  旧暦12月25日


早春。_f0071480_17213161.jpg

武者小路実篤公園の庭に咲いていた侘助。

半年ぶりに、いやもっとかもしれない、実篤邸にやってきた。


早春。_f0071480_17213627.jpg

あたたかな早春の一日である。



早春。_f0071480_17215081.jpg
ハンの大木。

実篤さんの庭は木々がすばらしい。
雑木林風になっていてたくさんの木々が植えられている。


早春。_f0071480_17215662.jpg

手前は椋の木。


早春。_f0071480_17221003.jpg

鯉の池。
鴨もいるときもある。


早春。_f0071480_17223391.jpg

竹林。


早春。_f0071480_17223588.jpg

コロナ対策で一方通行の表示がある。
一方通行に気づかず逆行で歩いていたyamaokaであったが、のちにあわてて軌道修正。




早春。_f0071480_17224222.jpg

眼前をふうっーと白猫が横切った。
身体が汚れていたから、きっと野良猫だろう。

追いかけたが、見失う。


早春。_f0071480_17240705.jpg

虹鱒の池。
水は澄んで虹色があざやかだ。


早春。_f0071480_17241381.jpg

虹鱒の池に映ったもの。


早春。_f0071480_17242424.jpg

手前は柿の木の大木。
こんなに大きくなるのかと見上げる。


早春。_f0071480_17243854.jpg

ヒヨドリがさわがしく、飛び交っていた。

ほかにもいろいろな鳥声がしていたが、姿をキャッチできず、残念。。。





 立春や腕より長きパンを買ふ        津川絵理子

 常臥しのわれにも来たり四方の春      森 澄雄

 春の水地球に出口なかりけり        津久井紀代

 マスクして愁ひは春のものならず      大木あまり

 
 



午後より仕事場にて、ゲラを読む。










早春。_f0071480_17370781.jpg


久しぶりにケーキ屋さんに寄って、ケーキを買う。
サバランはわたしのため、オペラ二つは人にあげるため。
写真はケーキ屋さんより仙川の通りを撮ったもの。








# by fragie777 | 2021-02-06 20:51 | Comments(0)

蟇で御座る、、、

2月5日(金)  旧暦12月24日


蟇で御座る、、、_f0071480_17003406.jpg

春の光をまとった青鷺。


蟇で御座る、、、_f0071480_17004135.jpg

木の枝にいた鶫。

飛んでいる鶫をみたのははじめて。


蟇で御座る、、、_f0071480_17004377.jpg

これも鶫である。

わたしの真上の枝に飛んできて止まった。
最近、鶫によく会う。


今日もセーターを後ろ前に着て、出社。
仕事をしている途中で気づいてあらあらと。
白熊のように見えるたっぷりしたセーターなので直すのも簡単。
スタッフのPさんと打ち合わせをしながら、右手をぬき、左手をぬき、セーターをぐるりと回して、ふたたび手を入れたというわけ。所要時間は、一分もかからなかった。Pさん気づいたかしら。。。




第11回田中裕明賞の冊子が出来上がってくる。


蟇で御座る、、、_f0071480_17032716.jpg

11回目から色を変えようと言うことで、ブルーからグリーンへ。今回は112頁。定価=500円+税

お待たせしてしまった。。

授賞式は3月14日を予定しているが、受賞者の生駒大祐さん、選考委員の佐藤郁良、関悦史、髙田正子、髙柳克弘の各氏のみで授賞式のみ。お祝いの会はおこなわず、記念吟行会もなし。しかし、インターネット句会を行う予定。受賞者、選考委員、応募者(希望者のかた)、著作権者の森賀まりさん、それぞれにお願いする予定である。また、応募者の方々には、受賞句集をはじめとして、田中裕明賞について、あるいは句集上梓にまつわること、などなど従来どおりお言葉をいただきたいと考えている。「田中裕明賞創設」の当初の目的のひとつである「句集について存分に語られ、評される場」でありたいと思いは常にあります。それらは電子書籍版「第13回田中裕明賞」に収録される予定です。






新刊紹介をしたい。


渡辺鮎太句集『蟇』(ひき)


蟇で御座る、、、_f0071480_17005280.jpg
四六判ハードカバー装 100頁 二句組 初句索引付き


渡辺鮎太(わたなべ・あゆた)さんの第3句集である。第1句集『鮎』(1991刊)、第2句集『十一月』(1998年刊)ともにふらんす堂より上梓されている。 渡辺鮎太さんは、1953年埼玉・川口市生まれ、現在は草加市在住。1980年「沖」入会、1985年「沖」同人、1987年「門」創刊に同人として参加。1998年、第2句集『十一月』にて「中新田俳句大賞」を受賞。昨年に久しぶりにお電話をいただき、この度の句集上梓となった。23年ぶりである。20代から俳句をはじめ、第1句集『鮎』に寄せた鈴木鷹夫氏の序文では「その類い稀な詩質を以て『門』の一隅を照らす恒星的存在」といわしめた俳人である。どうされているのだろうと折にふれて思っていたのだが、俳句はずっと続けられていたということをうかがって嬉しい思いがしたのだった。もとより巧い俳人である。今回の句集は句数を厳選しての第3句集となった。栞を摘里葦彦氏が寄せている。タイトルは「『人恋し』と詠う句」。抜粋して紹介したい。


(略)
『万葉集』の恋歌は歌垣的作法で作られていると聞くと、和歌というのも庶民的なもののように感じられる。
和歌から連歌の遊びが生まれ、連歌の発句が独立して「俳句」が生まれた。ということは、「俳句」も歌垣的習俗の末裔である。
三千年つづく習俗の末端に、この渡辺鮎太の句もある。
渡辺鮎太の『蟇』の句は「座」にも「結社」にも属していない孤詠だが、しかし、やはり「人恋し」と詠っているような気がする。
例えば─

 川越えてまた初蝶となりにゆく
 金銀はかく使ふべし春の海
 桃配山のふもとの白日傘
 長安のはるかに朱し蝸牛

─などの句からは「時間的・空間的な人恋しさ」を感じる。


実はこの句集は第3句集ではあるものの、こういう「あとがき」が付せられている。

本句集は一九九一年に出版した『鮎』と一九九八年に出版した『十一月』に続く第三句集である。第一句集、第二句集の一部に、その前後に作った句を加えたcompilation である。

ということは、まったくの新作のみではなく、第1、第2に収録してある作品も呼び起こし、そこに加えているということである。それはそれでひとつの試みである。とわたしは思う。
いま『蟇』を読んでいて、いいなと思った句のいくつかが、『鮎』に収録されていることを知った。
たとえば、

 春の川はるかに春の海に待たれ
 手を突いて沖を見てゐる薄衣
 妻と子の遠くなりたる立泳
 八月が減るクレヨンの青が減る

など。ふたたび句を時間の彼方から呼びもどし、人々の記憶のに焼き付けようとする試み。。

 萩の影映る障子を開けて萩
 ひと遠くして身ほとりの秋桜
 胸中の阿修羅と梅を観てゐたり
 うしろから春愁の眼を隠されし
 眠し眠し桜となつてゆくからだ
 蜂の仔を喰ふにんげんに生まれけり
 美しき毛虫焼かれてゆくうねり
 すぐ死ぬと皆に言はるる亀の子よ
 落鮎をきれいに食べて山の闇
 何の哀しさ一望の麦の秋
 田を植ゑて日本の風うすみどり
 鼬走りしこと美しく語りをり
 
担当の文己さんが好きな句である。 
「自転車の婦人の蕗に擲たれけり」は思わず笑ってしまいました。と文己さん。

 萩の影映る障子を開けて萩

この句は校正スタッフのみおさんも好きな句、わたしも〇をつけた句。目の前の事実を簡潔に詠んだ一句である。障子を開け放った途端、萩の花の色とその咲き乱れるさまが目に飛び込んでくる。さらに秋の空気のしんとした冷たさ、光のすきとおった加減、萩にはじまって萩におわる一句となっているがその間の時間のささやかな経過に読者は萩の咲く秋の情趣をたっぷりと味わうという仕組みである。さりげなく詠まれているがじつに巧みな一句だ。

 ひと遠くして身ほとりの秋桜

この一句も叙法がたくみだ。一句のなかにたっぷりとした空間がある。遠くに人がいて、自身は秋桜の傍らに立っている。あるいは読み方によっては、「ひと遠く」というのが、眼前に見える景であるということもあるが、心理的な遠さを示しているようで、秋桜への親しみがいっそう思われる。身ほとりで可憐に揺れる秋桜。人間よりもはるかに愛おしいもののように思えてくる。

 何の哀しさ一望の麦の秋

この一句もなんだか心くすぐられる一句である。「何の哀しさ」なんてずいぶんおセンチな措辞であるが、「一望の麦の秋」とあると、麦が熟し実りはじめた充実感がに満ちた景が目の前にひろがる。文句のつけようのない眼前の景である。新緑の季節、麦の美しい彩り、すべては神の摂理のもとに整っている。「何の哀しさ」という感情はいったん棚上げされるのであるが、その豊かな自然の景に立つ我にやがて言われもないような一抹の哀しみがわき上がってくるのだ。いまふっと思ったのだが、この景が、麦でなくて米だったらどうだろう。稲の秋とかね、ああ、やはり「麦の秋」のほうが断然心がくすぐられる、イエスの「一粒の麦」などの喩としての「麦」などを呼び起こすからかしら。「麦」はその本質において哀しみを宿す、なんてね。

 蛇泳ぎをり腰らしきところあり

この句はわたしの好きな句である。最近地元の仙川沿いを歩くようになって、蛇が泳ぐのを目にするようになった。大きなアオダイショウが泳ぐ姿は美しいと言ってもいいくらいだ。見事な泳ぎっぷりだ。速度もある。あっという間の出来事で、しかし、蛇が泳ぎ去ったあともその泳ぐ姿は頭のなかに焼き付けられていてなんども蘇る。しかし、凡庸なyamaokaであるので、それ以上の観察結果は望めない。この句を読んだとき、ふたたびわたしの蛇を映像として思いうかべた。そういえば、腰らしきものがあったような、その腰を華麗につかって泳いでいったような気がする。今度蛇にあったら腰をしかと確認しようと思った次第である。「蛇泳ぎをり」でいったん切って、「腰らしきところあり」でふたたび蛇の泳ぐ姿を想起させる、蛇の泳ぐ時間経過を思わせて巧みだ。

 をとつひの雪にきのふの雨の跡

この一句も目の前にみえているものをさりげなく詠んでいるのだが、上手い一句だとおもう。説明するまでもないのだが、一昨日雪がふった、そして昨日は雨、今日は晴れているのだろう、きっと。晴れていないまでも雪も雨も降ってはいない。そんな季節はすでに真冬ではないだろう。だから季題としては春の雪を詠んだものだ。それをこんな風に一句に詠みとめることが、やるなあって思ってしまう。しかも言葉に無理をさせていない。きわめて自然であり動詞もつかわずに端的に表現している。

 あまり思ふと叶つてしまふ星月夜

これは校正スタッフの幸香さんが好きな一句である。評がおもしろい。「願いがかなってしまう恐怖に身がすくむ感じがします。」ですって。笑ってしまった。が、怖い一句かもしれない。

こんな風に句集『蟇』は読み手を飽きさせない句集である。収録句数が厳選されていて数すくないというのもいいのかもあしれない。けっこう心が掴まれてしまう句が多かった。



本句集の装幀は、渡辺鮎太さんの希望を、君嶋真理子さんが具体化させたもの。
だから、鮎太さんの自装と言っていいかもしれない。
いろいろとこだわりがおありで、すみずみまで鮎太さんの意匠によるものだ。



蟇で御座る、、、_f0071480_17005452.jpg


蟇で御座る、、、_f0071480_17005727.jpg

蟇で御座る、、、_f0071480_17005877.jpg


蟇で御座る、、、_f0071480_17010173.jpg


蟇で御座る、、、_f0071480_17010298.jpg


蟇で御座る、、、_f0071480_17010495.jpg

蟇で御座る、、、_f0071480_17011260.jpg

クロスは金色。
金の箔押し。

蟇で御座る、、、_f0071480_17011446.jpg



蟇で御座る、、、_f0071480_17011674.jpg

蟇で御座る、、、_f0071480_17011953.jpg


用紙、クロス、すべて外回りに用いたものは光沢のあるものであるが、それが決して派手にならず落ち着きとある暗さ(?)を纏っている。
不思議である。
それが味わいとなって、いい本となったのではないだろうか。



蟇で御座る、、、_f0071480_17012107.jpg


蟇で御座る、、、_f0071480_17013045.jpg


蟇で御座る、、、_f0071480_17013544.jpg



  美しき毛虫焼かれてゆくうねり


詰まるところ、渡辺鮎太とは「人恋しさ」を五・七・五の古来からのリズムに載せて詠う、センチメンタリストといえよう。 (栞・摘里葦彦)


「センチメンタリスト」とは、まさに。。。



 蟇で御座る雨の夕べが好きで御座る


タイトルとなった一句。
きっとこの「蟇」は、渡辺鮎太さんの自画像であると、わたしは思っている。




目下、渡辺鮎太さんの評論集も鋭意作成中である。
タイトルは「蕉門の人々」

楽しみにしていただきたい。






# by fragie777 | 2021-02-05 19:52 | Comments(0)
<<< 前へ12345次へ >>>


ファン申請

※ メッセージを入力してください