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10月30日(木)
ウィリアム・テルらしき風体をした案山子。 これは昨年みたもの。 谷保の郷土民家のまえにひろがる田圃を見張っていた…。 民家の縁側からのぞむこの田畑はすばらしい眺めであるが、後継者がいないためこの田圃ももうすぐマンション宅地となってしまうということだ。 国立・谷保にはすばらしい里山がある、が、国立市民はあんがいそれを知らず、いまそれが失われつつあることも知らない。 新刊句集が一冊。岡本朝子さんの句集『茫々』だ。俳誌「諷詠」(後藤比奈夫主宰)の同人である。いまは岡山に住んでおられるが、京都に長らくおすまいだったということだ。 「茫々」を広辞苑でひくと、いろんな意味がある。わたしがまっさきに思うのは、髪の毛が「茫々」としての「茫々」であるけれど、それは3番目の意味、「ひろくはるかなるさま」というのが、いっとうさいしょだ。つぎに「とりとめのなきさま」「はっきりしないさま」とある。おどろいたのは、波の音」の「茫々」もあるっていうこと。まあ、けっこう長いこと生きてきて、「茫々」に「波の音」の意味があるなんて知らなかったな…。(知ってらした?) しかしである。これはちょっとばかし、古典の教養というものがないといけない。つまり「平家物語」の「岸打つ浪も茫々たり」からの由来であるらしい。「ひろくはるかなさま」というのも、「平家物語」。……高校生のときに「古典」の時間にぐっすり寝込んでしまったあのときがきっと、「平家物語」だったんだろうなあ…、惜しいことをした。「茫々たる往時」のことではございますが…。 さて、この句集『茫々』には、後藤比奈夫氏が、美しい字で序句を寄せておられて、「茫々は涼しき言葉句も人も」と書かれている。いっぺんで「茫々」に涼しい風がとおりぬけた。この言葉にも、この句集にも…。 初夢でお逢ひしましたとも言へず 片蔭に入りて暫く世に出でず 風の色まとひて白し秋遍路 紅葉燃え鬼女になりたいときもある 茫々としてどぶろくの酔にあり 箱入り、題簽貼りの贅沢な造本。秋色をきわめてどこか涼しげな出来上がりを著者の岡本さんはとても喜んでくださった。 わたくしと判る香水ならつける これは、ドキッとした句。香水のつけ方はむずかしいってつくづく思う昨今、香水とは成熟した男女にこそ似合うと思うのだが、こう言い切れるっていうことは、やっぱり岡本さんは「京女」でいらっしゃる……。
by fragie777
| 2008-10-30 20:10
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