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7月17日(木) 鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)
![]() ことしの春先のことだった。 一冊の本と手紙を受け取った。 その書名は「美について考える」とあり著者は小田三月(おだ・みつき)とある。版元は審美社。この著者はほかに河出書房新社から『運慶』という小説を、審美社から『歴史の点景』という評論を出されている。 いただいた『美について考える』の帯には「戦争と死を美化した時代の体験にもとづく反美学的な思索」とある。パラパラとなかをめくれば、文学における美への考察からはじまり、つぎつぎとたちどまることばに出会う。ああ、スーザン・ソンダクが語られている‥‥。『ラディカルな意志のスタイル』を学生時代に読み、(しかし、その内容はほとんど忘れてしまった‥)そして、いま、わたしは彼女の著書『他者の苦痛へのまなざし』を読み進めているところだ。 添えてあった手紙に目をとおす。 しかし、その手紙の内容は、この小田氏のことではなかった。 奥さまの小田和子さんのことであった。 20数年間にわたって、短歌を作ってこられた和子夫人の歌集をふらんす堂で刊行して貰えないか、ということが、肉筆で丁寧につづられていたのだ。 そして御自身の著書を自己紹介がわりに同封されていたのだった。 なにゆえ、ふらんす堂をこころにかけてくださったのか‥‥ 奥さまとふたりで本屋さんに行って、ふらんす堂の本を手に取りその本作りに感動してくださった、ということだった。 これは嬉しかった。 小田氏はその経歴を拝見すると、著述業のまえにはずいぶん長い間編集の仕事をされている。大手出版社や大手新聞社で百科事典の編集・校正などの仕事をされ、大学で教鞭もとっておられた経験のあるかただ。いわば、わたしなどよりはるかに出版の時間を生きてきた方である。そういう方の目に、ふらんす堂の本が留まったということが何より嬉しかった。 そんなご縁があって、この度出来上がったのが、小田和子さんの歌集『風の四季』である。小田氏が奥さまのためにレイアウトから校正、そして栞の文章まで書かれ、担当の愛さんも、装丁の君嶋さんも、大先輩である小田氏の指示に従った。 そして出来上がったときに、「とても満足のいく本ができました!」と、御夫妻で喜んでくださったのだ。 以下はちょっと余計なことながら‥‥ 『美について』に次のような文章がある。 「ディジタル化・マニュアル化の社会はONとOFだけで進んでいく、ドラマのない双六のようなものだ。人類の文化をつくってきた、大地を耕し、手仕事で物を作る努力、そして失敗をしたらやりなおす経験の蓄積ーーそういうこととは縁がうすくなっている。 現代美術は『純粋化』の波に押されて生まれてきた。純粋化とは、ボードレールやマラルメの影響のもとに、詩や美術や音楽が、それぞれのジャンルの純粋美を追求して。夾雑物、たとえば社会的効用とかストーリー性を排除する創作態度である。彫刻の純粋化は、まずブランクシーンが代表したと言ってもよいだろう。彼が作った飛翔する鳥などは、とことんまで単純化された抽象的な形態である。しかし、実際にブランクシーンの仕事の跡をたどってみると、背後に人間的なストーリーがあって、単純なものではないことが分かる。」 として、このあとブランクシーンの話に及んでいくのであるが、作品とその作品が背後にもつストーリー(それは作家のもつストーリーと言い換えていい)、そしてその作品の前にたたずむ見る側のストーリー、それをどう考えて作品を読み解いていくか、これは単純に片付けられない大きな問題なんだと思う。 小田氏はこう結論づけておられるのだが‥‥。 「ストーリーの希薄なディジタル人間は、衰弱するのみである。」と。 さて、思いもかけずこのブログが長くなってしまった。 今日の船団HP「日刊この一句」』は、明隅礼子さんの句集『星槎』より。 さるすべり楽器の多き姉の家 小倉喜郎さんの鑑賞が細部をふまえ、心にくいリアリティがあって面白い。 そして今日の毎日新聞の坪内稔典さんの「季節のたより」は、昨日に引き続いて佐藤文香さんの俳句。昨日の句は、 夕立の一粒源氏物語 今日は、 橋に影青々とある日の盛り 「夕立」の句は文香さんが俳句甲子園で最優秀賞に輝いた句である。記念碑的句作品である。しかし、句集『海藻標本』には収録されていない。今日のは収録されている。収録されていないのは、文香さんの意志によるものだ。そしてそのことを池田さんは、「見事な根性」であり、「健気」と語る。確かに‥。 しかしミーハーなわたしは、作品が気の毒、なんて内心おもったりしたのだが、池田澄子さんの序文に、この句が引用され、そのストーリーが語られる。そしてそれは帯にも引用されている。 って、ことは、収録されていないけど、ちゃんとこの句集のなかで息をしている、そして、著者の思いをこえて、この作品を知らなかった人にも、この作品は届く‥‥、ほかの収録作品とおなじように、あるいはそれ以上に鮮明に。 この一句がどうどうと一人歩きをしているように思えるから不思議だ‥‥。
by fragie777
| 2008-07-17 20:33
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