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6月19日(木)
![]() これも大家さんの庭に咲いていた額紫陽花。 九州、熊本の俳人岩岡中正さんの句集『春雪』が出来上がってくる。 俳誌「ホトトギス」(稲畑汀子主宰)同人で、自らも俳誌「阿蘇」を主宰されている。政治思想学が専門の大学の先生でもあり、その専門の分野での著書も多い。作家・石牟礼道子さんを深く尊敬しておられ、交流もあり、『石牟礼道子の世界』という編著書もある。その岩岡中正さんは、20歳より「ホトトギス」で俳句をまなび、句歴はまさに40年におよばんとしている。 このたび深見けん二氏のご紹介で、その第一句集をふらんす堂で刊行させていただいたのである。さすがに厳選されたこの句集は、読みごたえのある一冊となった。序句を稲畑汀子、序文を深見けん二というめぐまれた出発の第一句集である。 「まとまった句を読み通した読後感は、一口で云えば、すがすがしさである。真っ当にものに取り組まれる男らしさと、その裏にひそむ含羞の作者が見事に結実している。」という深見氏の序文の一節が、この句集の魅力を端的に語っている。 「春の海かく碧ければ殉教す」。若き日にキリスト教の信仰を持ったという岩岡さんは、その心深くに「島原の乱」の殉教者天草四郎への思いを秘める。 「ひそかなるものに花野と信仰と」「握手するやうに泉に手をひたす」「今生を滝と生まれて落つるかな」「一塊の火の山として露けしや」などなど、私自身もこころ魅かれる句が多い。 ところでこの句集、ふらんす堂のホームページの書影ではちょっとわかりにくいのであるが、一見、男性的なシンプルな装幀のように見えるのだが、実はカバーに、ひそやかに桜のはなびらが三枚ほど小さく型押し(箔をつかわずに型だけを押すもの)されているのだ。ようく目を凝らしてみないと分からないほどに…。この花びらが、岩岡さんのストイシズムにひそむ熱情(パッション)とよく響きあっている。はじめは五枚の花びらだったのだが、岩岡さんの要望によって三枚となった。その三枚も最後まで、しゅん巡されたのであるが、これがすなわち彼の含羞である。しかし、出来上がりは、深見氏も感嘆されたように、まさに岩岡さんそのものを語る仕上がりとなったのではないかと思う。 カバーと扉には、新製品の風合い豊かな用紙をデザイナーの君嶋さんがはじめて使ってみた。この用紙の素朴な味わいは、巷にでまわっているツルツルピカピカのコート紙では、けっして表現しえないものである。 紙そのものが物語を持っているのだ…。 この風合い、匂い、温もり、やわらかな色彩…。そしてかそけき音…。 句集の内容ともども、この造本の手ざわりもたのしんで欲しい一冊である。 さて、大変おくればせながら、毎日新聞で坪内稔典さんが、「季節のたより」というコラムを持っておられることを今日はじめて知る。これは、毎日、「俳句」を紹介するのかしらん。 今日は桂信子の俳句。「ゆるやかに着てひとと逢ふ螢の夜」。 桂信子の代表句である。「この人、肉体の存在感を豊かに詠んだ」とは坪内さんの言葉である。 この作品を読みたい方は、ふらんす堂刊行の『桂信子全句集』か、ポケットサイズのふらんす堂文庫桂信子自選句集『彩』で読むことができます。
by fragie777
| 2008-06-19 20:06
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