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5月19日(金)
姨捨の棚田のかたわらに咲いていた蛍葛(ほたるかずら)。たいへんめずらしいものだそうである。咲き始めはピンクで、このような美しいブルーの花となるらしい。 豊かな水の国ですごした時間の記憶は、しだいにまぼろしになりつつあるが、ふっと目をつむれば、田蛙ののんびりとした鳴きごえや、山藤があらあらしく風に吹かれていたさまが、甦ってくる。 しかし、今朝のわたしは、それらの記憶のかけらを吹き飛ばすごとく自転車をこぐペダルにちからをいれた。 「さあ、これから忙しい一週間がはじまるぞ!」 丹田に力がはいる。 ヨシッ…。 今日の朝日新聞の「風信」には、歌人・坂原八津さんの歌集歌集『はて』が紹介されている。「読み手を虚空に放り出す奇妙な言語感覚」とは、面白い表現だ。 「やわらかな記憶のなかの色をして入り口に咲くしろいたんぽぽ」 そう、黄色のたんぽぽではなくて、「白いたんぽぽ」が象徴するような歌の風景かもしれない…、とふっと思う。 同時に、ふらんす堂のホームページで「家族のうた」の連載をしてくださっている加藤治郎さんの歌集『雨の日の回顧展』(短歌研究社)も紹介されている。幻想的第七歌集として。 「静かな場所」(田中裕明研究と作品)第三号がとどく。 「『花間一壺』時代の田中裕明」という特集が組まれ、「昼寝の国の人」に寄稿された若い俳人の方たちが原稿を寄せているのが、嬉しい。 この「静かな場所」が、一年ごとに刊行されることによって、田中裕明にかんする資料がいよいよ充実したものになっていくはずだ。 「静かな場所」のメンバーの方たちの志が力づよくまっすぐとどく一冊である。 もう一冊。 友人でフランス文学者の高遠弘美(たかとお・ひろみ)さんから、マルセル・プルーストの文庫本を送っていただいた。彼のミクシーのブログで拝見していたのであるが、ああ、とうとう刊行になったのかと、感慨ふかい。 この度の『消え去ったアルベルチーヌ』(光文社古典新訳文庫)は、プルーストの『失われた時を求めて』の第六篇にあたり、プルーストが生前最後の修正をほどこした最終稿であり、その遺志がもっとも生かされているものである、と帯にかかれている。その最終版を、高遠さんが初訳したものである、と。 高遠弘美さんのエッセイ『乳いろの花の庭から』をふらんす堂で刊行させていただいているが、そのエッセイのなかでも、プルーストについての言及には、多くの紙数をついやしている高遠さんであればこそ、この度のこの翻訳へかけた情熱とその労力はなみなみならぬものだったと思う。彼の流麗な日本語の文体を十分生かしたこの『消え去ったアルベルチーヌ』が名訳であることは間違いない。 それにしても、この文庫本の装幀は文庫本の例をみず、すっきりとしていて垢抜けていて、わたしは気に入った。
by fragie777
| 2008-05-19 20:03
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Comments(2)
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高遠弘美
at 2008-05-20 11:26
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ご紹介忝なく存じます。拙訳を通じて、諸先達の「全訳」に赴いて頂ければ幸ひです。
これも山岡さんをはじめ、皆さまの温かいご支援の賜物です。
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fragie777 at 2008-05-20 19:31
筑摩書房だったか、中央公論新社だったか、プルーストの全集がすこし前に刊行されましたね。 一冊購入したきりで、そのままになってます。いただいたご本をまず拝読して、そちらも手にとってみたいとは思っておりますが…。
『乳色の花の庭から』を昨日ふたたび手にとり、本当にいいご本を刊行させていただいたんだなあ、と思った次第です。 (yamaoka)
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