10月5日(金)
いま家に戻ったところである。仕事場でこのブログを書いてから家に戻ろうかと思っていたのだが、当然、自分の机にもどり伝言メモなどを確認しなくてはならないわけなので、もう誰もいない仕事場の奥のわたしの机にむかって歩いていく途中、足元ちょっと先をなにか黒いものが横ぎっていく…ウン、なんだ?…とおもったら、ひやあ~、ご、ごきぶりが!……。敵もわたしの姿を見つけるやいなや、一目散に逃げっていった。このブログを読んでるかもしれない、ふらんす堂のスタッフの誰かさん、どこにごきぶりが逃げていったかはいわないでおくわね。ウフフ、あなたがいつもいる場所かもよー。なんてね。
先ほどまで新橋の第一ホテルで深見けん二先生におめにかかっていた。九州・熊本で「阿蘇」という俳誌を主宰しておられる岩岡中正氏もご一緒であった。岩岡氏は「ホトトギス」同人。俳人としてのキャリアは40年になるという。熊本大学の教授でもあり、政治思想史を専門とされている方である。『ロマン主義から石牟礼道子へ』という著書を最近刊行されたばかりである。岩岡氏はもともと、イギリスロマン派の詩人たちの政治思想、社会思想の研究者で『詩の政治学』という著書もある。詩人・石牟礼道子をひとりの思想家として位置づけたのが氏で、石牟礼道子はコールリッジやワーズワースの近代批判につながる思想家として位置づけられるという。かつての全共闘世代のもっている情熱的な語り口がなつかしくおもわず私はその話にひきこまれる。石牟礼道子、森崎和江、谷川雁、かつて学生時代にふれた詩人たちの名前も出てきてなつかしい…。先鋭的な思想と「ホトトギス」の花鳥諷詠がどう切り結ぶのですか?とわたしがたずねると、「反近代」ということにおいて「ホトトギス」は新しいのです。という答えが返ってきた。なるほど……。深見先生はそういうお話を終止静かに深くうなづきながら聞いておられ、このお二人が年齢差はあっても俳人として深い信頼関係でむすばれていることをわたしは実感したのであった。
写真は両神の朝霧にぬれる岩肌。