9月19日(水)

写真はやっと出来上がった見本の一冊『桂信子全句集』。監修者の宇多喜代子氏と柿衞文庫の今井美紀氏のもとに本日届けることができた。菊判函装のたいそう重い本となった。生前の桂先生が好まれたモダーンなしつらえの本となったのではないかと思う。最後の句集『草影』とエッセイ集『草よ風よ』を刊行させていただいたことによって、桂先生の好まれるものを知ることができたのは幸いであった。ただし、とても残念なことがひとつ。それは、本を刊行させていただくと、桂先生はいつもふらんす堂の営業活動を盛んにしてくださり、毎日のように大阪紀伊国屋書店の梅田店に行かれ、ふらんす堂の本の売行をFAXで報告して下さったのである。それもかなり詳しく…。これこれの本が平積みになっていたとか、ご自身の本が昨日はこれだけだったけれど、今日は何冊減ってこれだけになったとか、ふらんす堂の本を前の方の目立つところに並べてくださったとか、もうこちらが苦笑してしまうくらい熱心でフットワークが素晴しかったのだ。全句集のなかで、ある俳人の方が桂先生の健脚ぶりに驚いている文章があるが、お歳をとられてもその健脚は衰えなかったのだと思う。こんなに熱心に営業活動をしてくださった著者の方はなかなかいない。わたしは、その先生からの営業報告(?)のFAXがとても楽しみだったのだ。この全句集を待ち望まれていた先生に営業活動をしていただけないのはなんともさびしく残念である。先生の営業活動ぬきで今回は頑張らねばならないのだ。天上からしっかりね、ってきっと励まして下さっていると思う。この度の全句集でぜひ見てもらいたいのが、著者の写真である。眼光するどく鷲のような眼差しでわたしたちを射すくめる…。宇多喜代子氏が選んだこの写真が素晴しいのだ。美しいとかそういう安手の論評をゆるさない物書きの面構えである。この写真を見るだけでも全句集を開く価値があるというものだ。いまわたしの傍らにあって静かな光のなかに置かれている一書。わたしはなんとも感慨ふかい思いに充たされている。
今日もまた忙しい一日となった。「天為」同人の河村うら子さんの句集『らんづえんど』が出来上がってくる。「らんづえんど」とは「英国の最南端の岬の名」であると「あとがき」にある。「地の果といふ名の岬黄水仙」により主宰の有馬朗人氏がつけられたという。午前中はこの代送でスタッフたちは大忙し。3時に俳人の井越芳子さんが来社。装幀の最終的うちあわせをするためにご足労を願ったのだ。そうして5時半には、俳誌「握手」の同人朝吹英和氏がエッセイ集のことで来社。いつお目にかかってもすずやかな紳士である。
今日のお昼もわたしはおにぎり一個と野菜ジュースのみ。食べ終わって席をたってほかのスタッフのそばを通ると、渡辺がおいしそうなハンバーガーを食べている。「あら、おいしそうね。それどこの?」(仙川にはマックやケンタッキーやミスタードーナッツがある)と聞けば、「フレッシュネスバーガーのです」と答える。ああ、あそこね、「ここのポテトが食べたくて、買ったんです」と渡辺。見ればほんとにおいしそうなポテト。「ひとつちょうだい」って言って無心して貰っちゃった。ポテトひとかけらをスタッフに無心する経営者ってどうよ、って思いながら、それでも美味しくいただきました!