9月13日(木)

写真はなんだかお分かりですか? はじめて蓋をひらいたときに、わたしは火の鳥の金色の羽根の鱗粉(そういものがあるとしたら…)かとも思い、あるいは深海にすむ名前も知らない古代の大魚の鱗を採集したものかとも思ったのである。丸いアルミの缶の底に紺のビロードが敷かれてあってそこにこれらが繊細につめたくふわっと密集しているのである。ひとつを手にとれば極めてうすく軽く、そしてやわらかくしないブロンズ色にひかる…。これはいったい何?……「BOOK DARTS」と蓋に書いてある…。 辞書でひけばDARTとは投げ矢のこと。たしかにその形態は、矢のさきのようでもありよく見ればペン先のようでもある。つまりその用途はと言えば、これはクラシカル・クリップとも呼ぶべき、つまりクリップなのである。クリップほどキャパシティは広くない、もっと気難しい様相をしていて、ほんの2,3枚をすっとスマートにはさんで優雅に落ちついている。クリップが、現代人の叡知をそこに結集したかのようにシンプルにして機能的で、わたしたちにきわめて頼もしい存在であるとすれば、こちらは欧米の羽根ペンをつかう紳士たちに愛されたその歴史のままにその意匠をまとってありつづける存在のようにも思える。ある尊敬する俳人のかたから贈っていただいたものである。今日さっそくこの金の鱗たちは使われて封書とともにお二人の方のもとにいきつつある。わたしはもうなんべんも蓋をあけて手に取りその音を楽しんだり、輝きを喜んだりしているのだ。
と、そうは言うものの今日もふらんす堂はすさまじい忙しさの一日だったのである。