9月12日(水)
なかなか景気のいい雨の音で一日がはじまる。今日はみんなびしょぬれになって出社。腰をいためたスタッフの加藤も頑張って顔を見せてくれた。腰はいたくてもその影響はほかの身体にはまったく及ぼしてないらしく、相変わらずの能弁である。と、こう書くときっと、明日の朝、「ひどいですよ!」って言われちゃうんだあろうなあ。
写真はわたしの机の上に置かれた桂信子全句集の刷り取り。「刷り取り」とは印刷しあがったものの一部をこんなふうな形にして印刷屋さんが送ってくれるものである。製本過程に入る前にこの刷り取りで刷りあがりの具合や大きなミスがないかどうか、丁合いがまちがってないかどうかを確認するのである。すごい嵩でしょう!
写真のように16頁をひと折としてそれぞれの折の背に「一折」「二折」と番号をつける。その背丁にあわせて製本屋さんは製本していくわけである。出版社にでもつとめていなければなかなかこういう製作過程のものは目にすることがないかもしれない。つうじょうはこの背丁が十四、十五折というものが多いのであるが、なんと『桂信子全句集』にいたっては五十三折もあるのだからすごい。この刷り取りを手にしただけでもなかなか感慨ふかいものがある。やっとここまでこぎつけた……。
刷り取りの第一頁である。わたしにはこの頁が、はじめて産着をきせられた赤ん坊の笑顔のごとく初々しく晴れやかに輝いてみえるのだ。(写真はちょっとピンボケがくやしい。北見俊一氏のごとく美しい写真にしたいものである)この第一頁から桂信子の作品世界が始まっていく。プロローグのときめき…。さあ、潮は満ちつつある…。あと少しで美しい意匠をまとってこの全句集が出来上がってくる。栞も校了。帯もどうにかレイアウトをしてあとは印刷のみ。22日の柿衞文庫の宇多喜代子氏の講演にはどうにか間に合いそうである。晴れやかな気持でわたしもその講演を聴きたいと思っている。
今日は新しくはじまった「燦シリーズ2」の第一回配本、田口紅子さんの句集『木筆』とシリーズ「serie de la fleur」の日下野由季さんの句集『祈りの天』が出来上がってくる。『木筆』には「鷹」主宰の小川軽舟さんが、『祈りの天』には、片山由美子さんがそれぞれ栞を寄せてくださった。どちらも美しい仕上がりになったのではないかと思う。
「詩のテラス」の北爪満喜さんの家の猫たちの物語りがとてもおもしろい。北爪さんにひきとられた三匹の野良猫たち、シロ、クロ、ミケ、この名前のシンプルさも最高ね!