4月27日(金)
今日はなんといったらいいのだろう、わたしには目に映るすべてのものが輝き、まさに風光るまぶしい朝のはじまりとなった。歩いて出社。いまは春じおんが空き地をうめつくすように咲いていて、綿菓子をまぶしたように白が眼に飛び込んでくる。花がいっしゅん飛び立ったかと思ったらそれは白蝶であった。
実は今日はあさからちょっとわたしは緊張をしているのである。と、いうのは詩人の稲川方人氏が来社されるのである。氏が詩の指導をされている伊藤悠子さんという方が初めての詩集を出されるということで、そのお方とご一緒に来社され、まずは「話しを」ということになったのである。稲川氏は小社で刊行された星野守さんの詩集『火は森を狂わせるか』をかつて高く評価してくださり、いろんなところで紹介していただいたこともあり、これまでお目にかかったことはないがわたしにはとおく輝く詩人のお一人であった。詩の綜合誌「現代詩手帖」では、そのお姿を拝見し、書かれたものや発言を拝見するのみであったが、日ごろ親しい詩人の杉本徹さんや手塚敦史さんが「稲川方人さん」とその名を口にするときにその言葉に並々ならぬ畏敬の念があることをいつもわたしは感じていたのであった。約束の午後2時にピンポーンとチャイムが鳴った。いらっしゃった! 玄関に背の高い稲川さんが立ってらした。その横には知的で落ちついた女性詩人の伊藤悠子さんが…。そうして稲川さんは白のスニーカーをはいてらした。スニーカーがよく似合う青年の風貌をやどした詩人……。そんなイメージだ…。1時間ほどいろいろと詩集の製作のことについてお話しをしてお帰りになられたのであるが、玄関でスニーカーをはいて顔をあげた稲川さんがこっちを向いてぎょっとびっくりされた。というのは、ふらんす堂はお客さまがお帰りになるときにスタッフ一同でお見送りをするのである。奥で仕事をしていた女性スタッフが見事に一列にならんでいっせいに頭をさげた様子はそれこそ、料亭の玄関でお客さまをおおくりするためにせいぞろいした中居さんのごとき様子だったんだと思う。たしかにちょっと迫力あったかも…、さしずめわたしはその料亭の女将ってことかしらん…。お二人がお帰りになったあと、さっそくスタッフの誰かが嬉しそうに「山岡さん、みんなで料亭みたいに法被つくってそれ着てお見送りしましょうよ」ですって…。アハハハ、いいわねえ、って、まったくわたしをはじめみんな、すぐに調子にのるんだから…。
夕方、伊藤悠子さんよりお電話をいただき、「お願いします」って言われたときは正直(やったね)ととても嬉しかった…。原稿をみせていただき是非刊行させていただきたいって、強く願っていたのでした…。