2月12日(月)
昨夜は、俳人の高柳克弘さんにお会いして楽しいお酒を飲んだ。しかし、焼酎のロックというのは、わたしには甘い果実のようになめらかにのど元をとおりすぎてゆくのであるが、この清流の微笑みに惑わされていけない。「口当たりはいいけど、酔うから気をつけてね」と若い高柳さんに言いながら、わたし、すっかりよっぱらってしまいました。昨夜遅く帰ってこのブログを書こうとして(すごい根性でしょ)パソコンを立ち上げて、…………ZZZ…気がついたらお布団の中におりましたの…。
高柳さんは、いまふらんす堂のホームページで「芭蕉の一句」を連載してくださっている。さすが大学院で芭蕉を研究しておられるだけあって、今回のこの連載への取り組み方もハンパじゃない。文体も力強く、びしびしと脳髄を打たれるような凛々しいリズムが心地よい。昨夜うかがってびっくりしたことは、芭蕉の俳句って、残っている作品の数は、900何句であって1000句に及ばないんだそうである。蕪村が何千句、一茶が何万句、ということからして、「あら、そんなに少ないの!」って驚いてしまった。であるから、今回の連載で365句紹介したとすると、全作品の三分の一は紹介したことになる。ふーん、そんなに少なかったんだ……。また高柳さんは、2004年の歳晩に急逝した田中裕明さんの俳句を高く評価しておられる方だ。わたしにとって田中裕明さんのことを語りあうことのできる人に出会うのはとても嬉しい。高柳さんから田中裕明作品の丁寧な読みと深い理解をうかがうと、このすこぶる優秀にして聡明な高柳克弘という俳人の魂をとらえた田中さんの作品に「ブラボー」と言って乾杯したい気分だった。天上の田中さんに向かって「やったね!」とわたしが言ったの田中さん聞こえた? 「 『田中裕明全句集』はいつごろできあがりますか?楽しみに待っているんです」と高柳さん。「三月刊行を目指して頑張りたいです。」とわたしは背筋をのばして答えたのだった。
写真は出かけるときに玄関わきに咲いていた馬酔木の花。あまりにもささやかでうっかりすると咲いているのに気づかないくらい。