2月7日(水)

ふらんす堂から歩いて30秒くらいのところに昨年暮れまで「サーティワン」というアイスクリーム屋さんがあった。みんなアイスクリーム好きなので、よく買いに行った。とくに若いスタッフはお昼ご飯のかわりにトリプルアイスなどといっぺんに3段に盛られたアイスクリームをおいしそうに舐めていた…。わたしなどとても信じられないけれど…。
そこの女主人のみどりさんはこの近辺では「猫博士」と呼ばれるほど、猫に詳しく猫好き。仙川商店街を走り回る野良猫をかたっぱしからつかまえて去勢や避妊手術をほどこしふたたび野良猫にもどし、餌をやって面倒を見るという筋がねいりの猫の味方だった。いつもサーティワンの窓ガラスには「貰ってください」という子猫の貼り紙がしてあった。しかし、このみどりさん少し前から身体をこわし仕事をつづけることがしんどくなり、お店をたたんで、ご夫婦で一人息子の家族が住んでいるイタリアのトリノに昨年の暮れに行ってしまわれた。息子のるい君は高校卒業とともにサッカー選手としての才能を買われ、いまでは地元のサッカーチームの選手として活躍していると聞いている。そこで結婚もし、子どもいる。みどりさんはイタリアに行くときにすでに末期ガンを病んでいて、歩行もままならなくなっていたということをあとから聞いた。野良猫たちのなかでもとく可愛がっていた黒猫の「ジジ」を連れていくことを熱望したが、現実的な問題の障害があり泣く泣くあきらめたのだった。彼女がイタリアに行ってからひと月すこしの時間が経った。つい先日のこと、みどりさんが亡くなったという知らせが届いた。そのあまりにも早い死にわたしは茫然とした。彼女が亡くなった日の夕方、しばらくぶりで姿を見せたジジが元の店の近くで激しく鳴いていたという。
わたしの友人はいまトリノに向かっている。猫博士のみどりさんにおわかれを言うために。