11月27日(月)
わたしは文房具好き。あなたはいかがだろうか? 仙川にも二軒ほど文房具屋さんがあって、わたしはそこへ立ちよってあれこれと文房具を選ぶのが楽しいのである。写真はボールペン。世の中にこんなに美しいボールペンが存在していたなんてちょっと驚きである。これは最近ある方からいただいたものなのであるが、きっとこれを下さった方も、文房具というものが好きなんだろうなあって思った。ボールペンもそれこそクロスとかモンブランとかブランドと呼ぶようなものがあり、そういうものを眺めたりすることは楽しいのであるが、このいただいたボールペンはそういうブランドのものとちょっと違う。包装もかんたんな紙包みで「たいしたものではありませんが」と言った言葉がそえられていて、あえてサラリとこちらに負担をかけないような粋な気遣いを感じる。なんだろうと思って開けてみると、なんとも美しいボールペン。世界中でわたしのためだけにある一本っていう思いにさせる手作り感があって、しかもこのマーブル模様がなんともすてき。大切にしたいと思う。
先日、句集『素心』という句集を刊行させていただいた稲葉喜子さんから丁寧な手紙をいただく。そこには一昨年亡くなられた平井照敏氏の「女性一人でふらんす堂といういい出版社を立ち上げられた方がいる」という言葉をずっとむかしに聞いてふらんす堂を知ったということが書かれていた。そうしてふらんす堂文庫をたくさん買って下さり、その後、桑原三郎氏がふらんす堂より二冊句集を刊行されたことにより、句集をつくるときはふらんす堂にしようと決めてくださったと書かれている。この手紙を拝見して私はつくづくと一冊の句集をつくらせていただくのにいたる人の思いというものを知る。長い時間のなかでご自身の分身でもある句集をこの出版社でと思ってくださる、そういう人の気持ちをしみじみと有難く思ったのである。「素敵な本にして下さって」と喜びの手紙なのであるが、わたしのほうこそ、そんな風にしてふらんす堂をずっと心にかけて下さったということが有難く、手紙をよみながら心が熱くなったのであった。そういう人の思いがふらんす堂を20年ささえてきたのだと思った。すでに亡くなってしまった平井照敏先生、牧羊社時代からずいぶんお世話になった方である。平井先生、亡くなられても先生のお気持ちはわたしのこころのなかにしっかりと残っています。そう、平井先生に申し上げたい。また、ふらんす堂から二冊も句集を刊行させていただき、稲葉喜子さんをご紹介くださった桑原三郎氏へもこころから御礼を申し上げたいと思う。