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2月12日(木) 旧暦12月25日
水温む。 神代植物園にて。 先日の雪も、ほとんどとけてしまってもう跡形もない。 わたしの経験からすると、東京は二月がいちばん寒く、雪が降る度にあたたかくなっていくはずなのだが。 これから先、まだ雪はふるだろうか。 新刊紹介をしたい。 評論と俳句と短歌を収録した詩文集である。 著者の熊瀬川貴晶(くませがわ・たかあき)さんは、1972年宮崎県生まれ。俳誌「阿蘇」に所属する俳人である。日本伝統俳句協会会員。評論集『永遠の星座ー文芸の経つ学的基礎』を2018年に上梓されている。 本書は、三部構成となっている。Ⅰは評論(則天去私と花鳥諷詠、近代批判と共同性の回復─ 岩岡中正を読む)Ⅱは書評(人間存在の故郷を探す試み─『マカオの日本人』を読む、『大峯あきら全句集』を読む)Ⅲ(俳句 八十句 短歌 八首)。 本書の「Ⅰ評論」「Ⅱ書評」は、これまで著者が俳誌「阿蘇」に連載してきたものである。俳誌「阿蘇」では、岩岡中正先生の俳句作品や評論、その思想や文学、言葉の真摯な姿勢に学ぶことが数多くあった。 「あとがき」の書き出しである。本著に収められている評論、書評は、俳誌「阿蘇」で連載をしてこられたものである。 そして、俳句80句と短歌8首が収録されているのだが、これは「あとがき」によると 本書の「Ⅲ作品」は、著者自身が宮崎日日新聞等に発表してきたものを制作順に並べたものである。俳句と短歌の作品数を合わせて八十八にしたのは、星座の数が八十八ということに寄せている。俳誌「阿蘇」で学んできたことが少しでも詩作に繫がっていると嬉しい。 まず、評論の部分を一部紹介をしておきたい。 帯に、「子規の写生」「漱石の則天去私」「虚子の花鳥諷詠」とあるように、「則天去私と花鳥諷詠」と題した評論では、子規、漱石、虚子の同時代を生き、それぞれ関わりの深かった三人を中心に論考はすすめられてゆく。互いに影響をしあいながら、その文学的境地をいかに切り開いていったか、筆者である熊瀬川さんによってつまびらかにされていく。この章の一部分を紹介しておきたい。 虚子は、俳誌「ホトトギス」を通して、栄えゆくもの衰えゆくもの、ただありの儘にじっと眺めてゆくのである。表現の新しさを競う、見せ場を作るのではなく、ありふれた日常に敬意を払う、そんな作品世界に到達したのである。漱石の「則天去私」からバトンを受け継いだ虚子の「花鳥諷詠」は、近代という時代からはこぼれ落ちそうな、ひそやかな願いや祈り、素朴な信心を守り育て、そうした思索と詩作の営みを縫い込んだ大いなる物語(場所)となったのだ。 評論のもう一つは、「近代批判と共同性の回復」と題して、俳人であり政治思想の研究者でもある岩岡中正論である。岩岡中正さんの著書すべてにふれながら、岩岡中正の全体像に迫っていく。 われわれは東洋と西洋の本質的な思考様式の違いを乗り越え、決して優劣を競うのではなく、それぞれが対等の立場で対称性の世界を描き出すこと、そして平和に暮らしていくことが求められているのではないか。それは例えば、岩岡が会長を務める日本伝統俳句協会が推進する、調和と寛容を基調とした「地球俳句」という理念である。虚子の「花鳥諷詠」の弁証法的発展であると思う。虚子が東洋的なものを論理化しようとして開拓した原野の諸領域を粘り強く充塡し、現代における共同性の回復をめざす岩岡の内には、肥後川尻、庄蔵のハートが存在しているかのようだ。 Ⅱ章の書評でとりあげている書籍は二冊。「人間存在の故郷を探す試み-『マカオの日本人』を読む」と「『大峯晶全句集』を読む」。ここはタイトルの紹介にとどめておきたい。 Ⅲの俳句、短歌の作品は、いくつかを紹介したい。 銀木犀古地図の坂をのぼりけり 銀木犀のたたずまいと古地図のによって喚起された坂が響き合っている。金木犀より「銀木犀」の響きの方は重たく色合いも落ちついている。そしてのぼってゆく坂も古地図にあった坂として脳裏に古地図を思いうかべながらがらのぼってゆく。晴れやかな心持ちというより、静かでいくぶん沈潜した思いでゆっくりと坂を登っていく人間がみえてくる。 探梅のひとりは海を見てゐたり 気持ちのよい晴れ晴れとした一句である。海をみはるかすところに梅園があるのだろうか。梅のさきそめし枝などをさがしている一行のなかに、手びさしをして遠くにみえる海をみている人間がいる。空は晴れわたり日差しはあたたかく、彼方には青い海がみえる。もうあと少しで梅がほころびはじめるだろう。探梅のにぎわいも感じさせる一句だ。〈紅梅の影の大きく暮れにけり〉という句がつづき、こちらも好きな句である。 西行の歩きし跡をポルシエゆく八百年などあつといふ間さ 西行とポルシェのとりあわせがおもしろい。西行は1190年に没しているのですでに没後800年以上が経っていることになる。「あつといふ間さ」に納得してしまう。美しいボディとスピードを誇るポルシェ。その車が過ぎ去ったあとに、作者はふたたび西行の後ろ姿を幻視しているのではないだろうか。 岩岡先生の評論『虚子と現代』では、虚子の花鳥諷詠論におけるコスモロジー(宇宙観・世界観)を学び、評論『ロマン主義から石牟礼道子ヘ』では、学術的な政治思想研究を基盤としつつ、詩人・石牟礼道子へと貫く思想的連続性、ダイナミズムについて論じられている。近代批判とともに共同性回復への根源的な希求が描かれる。 岩岡先生の研究は、虚子の花鳥諷詠論や、石牟礼道子・渡辺京二という熊本に根ざした近代の葛藤を超えたところにある思想を、詩人・ワーズワスなどのイギリス・ロマン主義という思想史上の本流へ位置づける試みであったといえるだろう。それは岩岡先生の俳句作品にも顕れている。虚子のいう「自然(花鳥)と共にある人生、四時の運行(季題)と共にある人生、ゆとりのある人生、せつぱ詰らぬ人生、悠々たる人生」である。生活と不可分の生き方を含む文学、日常への敬意という実践を通して初めて可能となる文学である。綽綽として余裕あり、生き方としての花鳥諷詠である。師・深見けん二の作品世界を髣髴とさせる。 ふたたび「あとがき」を紹介した。 本書の装幀は、前著に引き続いて君嶋真理子さん。 上梓後のお気持ちをうかがった。 〇出来上がったご本を手にとったときの印象はいかがでした?。 ふらんす堂の皆様に大変お世話になりました。原稿の編集・校正・デザインから印刷・製本まで、山岡さまをはじめスタッフの皆様には、いろいろと同時に処理をしていただき、難儀なことだったと思います。校正のダブルチェックにもプロの眼(そこに愛)を感じました。装幀の君嶋さまには、前著『永遠の星座』に引き続き、テーマに沿ったデザインに仕上げていただきました。本棚に前著と並べて楽しんでいるところです。兄弟・姉妹のようです。 〇本著にこめた思いは? 前著『永遠の星座』では、新聞や雑誌で、岩岡中正先生や酒井佐忠先生に取り上げていただきました。それからのご縁で、岩岡先生の俳誌「阿蘇」で評論を書くチャンスを与えていただき、今回の『漱石の涅槃』出版へと?がりました。「阿蘇」連載中は、コロナ禍でもありましたが、岩岡先生から励ましのお電話やお手紙をいただき、いろいろとアドバイスを受けながら、毎月書き進めていったのを覚えています。熊本スピリットに感謝です。 〇今後のヴィジョン 大峯あきら先生についての論考を書き進めたいと思っています。お金を貯め、西田幾多郎全集や西谷啓治著作集を買って、ゆっくり読み込んでみたいという思いがあります。 本書の「則天去私と花鳥諷詠」の章で、夏目漱石の漢詩が紹介されているのだが、その漱石の漢詩のあとにつぎのような文章を記している。 この漱石の漢詩に、私は一人の夭折の俳人を重ねる。その俳人の名は、田中裕明。享年四十五。平成十六年(二〇〇四年)十二月三十日に亡くなったが、今もその作品は多くの俳人を魅了し続けている。 と記し、『夜の客人』より5句を紹介しておられる。 ここでは、この記述のみにとどめるが、興味のある方は是非に本書にふれてほしい。 今日は、午後に目下育児休暇中のふらんす堂スタッフの文己さんが、夫君と赤子二名(!)をつれて、やって来た。 ふらんす堂における赤子デビューである。 私たちスタッフは勢揃いして楽しみにしていたのである。 個人情報のこともあるので、あまり詳しくは紹介できないが、 赤子は男子と女子の双子。 10月に生まれたので、まだ首もすわっていない。 しかし、めちゃくちゃ可愛い。 元気にそだっている様子。 「まだなにがなんだかわからぬままに日々が過ぎていきます」と文己さん、 夫君も育児休暇を取って自動車の免許もとって、子育てに邁進している様子。 男子ベイビー。 先にうまれたのでお兄ちゃんということ。 妹であるとのことだが、お兄ちゃんより太っていて貫禄がある!? ふたりとも素敵な名前があるのだけど、これはナイショ。 「また来ますね!」と言って、文己さんたちは帰っていった。 今度来るときは、おおきくなってるだろうなあ。
by fragie777
| 2026-02-12 19:09
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Comments(7)
おはようございます。
文己さま、おめでとうございます🌸 ずっとブログでお名前を見て(読んで?)いたので自分の孫が誕生したかのように嬉しいです。 双子ちゃん、大変なこともたくさんあるでしょうがお身体に気をつけてご家族でたくさん幸せに🥰 皆さまもどうぞご自愛下さいませ🍊
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村山半信さま
コメントをありがとうございます。 子育ては本当に大変だとおもいますが、文己さんはがんばっています。 いま村山さまのエッセイ集をおすすめしていることも文己さんにお伝えしました。 コメントいただいたこともお伝えしますね。 (yamaoka)
文己さん、双子のお子さんの誕生、おめでとうございます~!
昨年は、僕の句集上梓の件で色々とお世話になったことを思い出しました。句集のタイトルが自分ではなかなか決まらず悩んでいたところ、文己さんから『ポケットの底』は如何ですか?と提案していただき、おぉ~、それがいい!とすぐに決まった次第です。 おかげさまで、『ポケットの底』というタイトルがとてもいいですね!と、多くの方から言っていただきました。文己さんに、どうぞよろしくお伝えください。 双子の赤ちゃんが、すくすくと元気に育つようにお祈りしております(^^)
皆さま、温かなコメントをありがとうございます。双子育児は想像以上に大変ですが、最近たくさん笑うようになった子たちに毎日癒されています。
金子さん、昨年は大変お世話になりました。素敵な句集に、ゲラを何度も読み返したことを思い出します。また句集を担当できる日を楽しみにしています!今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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