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10月10日(金) 臥待月 旧暦8月19日
花かしら?きれいね。 と言ったら、 「洋種山牛蒡(ヨウシュヤマゴボウ)よ。」って友人がおしえてくれた。 これは花穂であるらしい。 まわりの花びらのようにみえるのは、萼(ガク)であるということ。 この花穂が、やがて黒紫の実となるのだ。 今日は、午後に用事があってでかけたついでに、美味しいドーナッツ屋さんでドーナッツを買って、スタッフにおごった。 チョコ風味のもの。 すてきな名前がついていたのだけど、食い気が先行してすっかり忘れてしまった。 ドーナッツをかかえて、仕事場にむかう途中、ふっと金木犀(キンモクセイ)の香りがした。 (ああ、金木犀。。。)とおもってあたりを見回しても、いろいろな木々があってちょっと見つけられない。 金木犀って、そう。 まず香りがやってきて、それから花木をさがす。 見つけられることもあれば、見つけられないことも。 金木犀が香るときって、きまってあたりの空気はひんやりとして澄んでいる。 新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装帯あり 222頁 2句組 著者の木村有宏(きむら・ありひろ)さんの第1句集『無伴奏』 (2017)につぐ第2句集である。木村有宏さんは、昭和27年(1952)埼玉県生まれ。昭和52年(1977)「鶴」入会、石塚友二に師事。昭和61年(1986)「鶴」同人。星野麥丘人に師事。現在、鈴木しげるに師事。「鶴」編集長。俳人協会幹事。本句集には、鈴木しげを主宰が帯文を寄せている。 帯文を紹介しておきたい。 寒卵溶きて発止と生きてをり 先師星野麥丘人亡きあとの「鶴」の編集長として一誌を支えてきた著者の句作懸命の第二句集である。四季の自然と生活をありのままに詠む自然体の平明な句風は氏の持味といえる。人生の深まりと共に滋味に富んだ境地を拓いていくことであろう。 句歴のながい俳人である。昭和52年に「鶴」に入会してよりの50年ちかい句歴となる。第1句集より12年を経ての第2句集の刊行となった。 担当はPさん。 手相見の灯のほのと春の宵 先生の今逝きしとふ若葉雨 冬晴や方位磁石を野に使ひ 葉生姜を囓る夫婦となつてをり 北風の唸るや米を研ぎをれば 立冬や菜園を来る猫車 銘仙の機音高きくわりんかな 寒林を貫く夕日とはなりぬ 先生の今逝きしとふ若葉雨 師・星野麥丘人を追悼した一句である。その前の一句が、〈病室の窓よりはうれん草の畝〉であり、「星野麥丘人先生転院」という前書きがある。「はうれん草」が春の季語であるから、転院されてまもなく星野麥丘人氏は亡くなられたのだろう。師が亡くなったという連絡が入った。そのことを胸のうちで反芻しつつ自身に言い聞かせているのだ。「とふ」の切れにその思いがみえてくる。死んでいく師に会うことがかなわなかった無念さもみえてくる「とふ」である。心は師への思いであふれ、はりさけそうだ。下5におかれた「若葉雨」がその気持ちを癒やして救ってくれる。一方、「若葉雨」の瑞々しさは、「今逝きしとふ」師がさきほどまでは生者の領域にいたということを思わしめるのである。 葉生姜を囓る夫婦となつてをり 選んだPさんにこの句を好きな理由をきいてみた。「楽しそうでいいご夫婦だなって思ったんです」ということ。なるほど! たしかに。季語は「葉生姜」。わたしは「囓る」が長年くらしてきたご夫婦の気心をゆるしたざっくばらんなありようがみえて、いいなと。「夫婦でありにけり」ではなくて、「夫婦となつてをり」で、夫婦という関係性のふかまりをも感じる。しかし、そう感じているのは夫である作者のみで、妻はあっけらかんと葉生姜を囓っているのかもしれない。なぜか、その方が夫婦の関係が健康的でいいかも。旦那はウエットで奥さんはドライ。わるくない。。この場面、美味しいお酒をのみながらのひとときなのかも。本句集には、「妻」を詠んだ句がたくさんある。〈三十年添ひたる妻と冬林檎〉〈転勤の決まりし妻へ菜飯かな〉〈煮凝や早出の妻を見送りて〉ほか、多くの妻の句が収録してある。紹介した数句でもわかるように、食べ物とともに詠まれた妻が圧倒的におおい。〈真つ先に妻がふらここ漕ぎにけり〉〈クリスマス妻いそいそと観劇へ〉という句もあって、なかなか自由人の妻であるらしい。おおいにけっこうです。 銘仙の機音高きくわりんかな この一句は、わが故郷・秩父を詠んだ一句である。「秩父」という前書がある。銘仙とは秩父銘仙のこと。戦後、一大ブームをまきおこした平織りの絹織物で、わたしの祖父はかつてこの銘仙の工場を経営しておりたくさんの人が働いていた。しかし、流行がすたれるのもはやく、まもなく目にすることがなくなったが、昨今ふたたびそのレトロ感が若者に好まれて着る人が出てきているようだ。秩父でもこの伝統技術をのこすべく、「秩父銘仙舘」などで実演などがされているようである。掲句は、その秩父を吟行したときに耳にした機音(はたおと)なのだろうか。わたしには懐かしい音である。「くわりんかな」という下5のひらがな表記とその響きに力がこもっていて、機音の高い響きと「かりん」の日差しにはえる照りが、銘仙の技術を継承していこうという秩父人の意地とプライドを語っているようである。秩父という土地への踏み込んだ挨拶句である。 今生の主夫として焼く秋刀魚かな この句はわたしが面白いとおもった一句である。「今生の」というややおおげさな上五におかしみがある。その「今生の」がかかる言葉が「主夫」であるというのも笑える。およそ「主婦」はそんなもの言いはしない。作者は大まじめなのかもしれない。「主夫」であることに、命をかけているかのよう。それは悪くない。ちょっと可笑しくて、そして好ましい。焼くさかなが「秋刀魚」であるというのもいい。石田波郷の系譜につらなる作者であるから、「秋刀魚」の値段を気にしていた波郷のことなども思い出しつつ、気合いをいれて秋刀魚焼きに取り組んでいるのだ。秋刀魚を焼いてあげる相手は、もちろん外で働いている妻である。この秋刀魚、うまく焼けたのかしら。気合いがはいりすぎて、焦げてしまったなんてことも。それもまた、「今生」ゆえのこと、いいではないですか。 シューマンにクララ鰆に白ワイン 作者の木村有宏さんが、自選15句に選ばれている一句である。木村さんは、クラシック好きである。〈朧夜のマーラーに時忘れけり〉〈浅春やバッハのチェロはヨーヨー・マ〉などの句もあって、クラシック音楽を好んで聴いておられることがわかる句が収録されている。掲句は、すこしひねりがあって飛躍がある。「シューマンにクララ」まあ、意味はわかる。「鰆に白ワイン」もまあ、わかる。その二つがどうして一句のなかで取り合わせられるのか、一瞬、へえーて思うのだけど、カタカナ書きによってすーと頭の中に入ってきてしまうことと、調子の良さがあって、受け入れられる気分となる。この句、春の一夕、シューマンを聴きながら、白ワインとともに鰆料理を食している、そんな景としておもいたいところだが、すると「クララ」はいらなくなる。いくらシューマンが熱愛した夫人であっても、ということだけど、しかし、それだけの景であったらちょっと楽しい春の一夕というだけで月並みな一句となってしまう。思うにこの一句、「シューマンにクララ」という措辞によって、その人間関係の尋常ならざること、あるいはひとすじなわではいかない人生の深淵をなども感じさせつつ、白ワインを味わいつつ鰆を食するというところだろうか。「クララ」という楔が打ち込まれている一句であるとも。 校正スタッフの幸香さんは、〈おばしまに夕日見てをり文化の日〉が「深い感慨が伝わってくるようです。」と。 第一句集『無伴奏』を上梓してから十二年目となる。 この間、平成二十五年五月に先師星野麥丘人先生が身罷られ、後を継がれた「鶴」第四代主宰鈴木しげを先生に師事し、今日に至っている。先生からは、句会において懇切丁寧なご講評を賜り、石田波郷以来の韻文精神の徹底と座の文芸としての俳句の楽しさなどを学ばせていただいている。 『瀑布』は私の第二句集になる。作品年代は平成二十四年から令和六年の十二年間で、全三八二句である。この間に発生したコロナ禍により、生活環境が大きく変わった。それまでは旅行先や公園での吟行句が多かったが、コロナ禍により遠出はせず、自宅から二時間程度の散歩コースを七つ設け、ほぼ毎日歩くようになった。道端で目にする草花や畑の作物、雑木林など至る所に句材があることを知った。そのことを句集で感じていただければ幸いである。 「あとがき」より、抜粋をして紹介をした。 装丁は、第1句集『無伴奏』と同じく君嶋真理子さん。 布クロス装に黒メタル箔。 表には型押し。 句集名は「夕暮の青み帯びたる瀑布かな」からつけた。滝の圧倒的な荘厳さや美しさに惹かれ、あこがれていたからである。 俳句は生活そのものであるという思いは今も変わらない。そこに今では俳句を詠む楽しさが加わった。今後も生活の一部として、楽しく俳句を詠んでまいりたいと思っている。(あとがき) ご感想をいただいた。 (1)本が出来上がってお手元に届いたときのお気持ちはいかがでしたか? イメージ通りの句集ができて嬉しかったです。 (2)第二句集に籠めたお気持ちがあればお聞かせ下さい 第一句集とはまた違った、少し落ち着いた句集になればと思いました。 (3)句集を上梓されて、今後の句作への思いなどございましたらお聞かせ下さい。 平明でありながら、胸にじんと沁みわたるような句を作りたいと思います。 木村有宏さん。 ことしの5月28日、ご来社のときに。 春の虹越えて彼方へ行き給ふ 木村有宏 「悼 大石悦子様」という前書のある一句である。 句集のおしまいの方におかれている。。。 嗚呼。。。
by fragie777
| 2025-10-10 19:56
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