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9月22日(月) 旧八朔 旧暦8月1日
曼珠沙華の季節である。 残暑もようやくおさまってここ数日は涼しい日がつづいている。 恐ろしい暑さの夏だった。 山本鬼之介著『長谷川かな女の百句』ができあがってくる。 百句鑑賞を「水明」主宰山本鬼之介氏が、巻末の解説を「水明」副主宰網野月を氏が執筆をされた一書である。 「ホトトギス」において女性俳句のさきがけとなった長谷川かな女である。数句の有名句をわたしたちは知っているが、いまではなかなかその作品を目にすることができない。 このシリーズにてかな女の百句を刊行したいと思っていたのでこの度の刊行はとてもうれしいこととなった。 俳誌「水明」は、長谷川かな女によって創刊され、今年で創刊九五周年をむかえる。 その記念行事の一環として、山本鬼之介主宰、網野月を副主宰が、この『長谷川かな女の百句』に取り組まれたのだった。 かな女の俳句を身近によめる一冊となったのだとあらためて思う。 本書より数句鑑賞とともに紹介したい。 綳帯とれば冬日に足のかたちかな 『龍膽』所収 大正九年 長谷川かな女の年譜には、この句の前年の大正八年に足首(『雨月抄』によれば左足)を捻挫したことが記されており、以後その箇所に綳帯が巻かれていたのであろう。怪我の原因は、米人の飛行士アート・スミスの宙返り飛行を観ようと慌てて自宅の庭つづきの畑に出て滑って転んだことによる。冬日の入る座敷で綳帯を外して自分の足と対面した時の感激が素直に詠まれている。掲句の翌年から事故の足がひどく痛み出し、大正一三年に、松葉を使って杉田久女邸の句会に出席するまでの三年間は全く外出しなかった。 蝶のやうに畳に居れば夕顔咲く 『雨月』所収 昭和八年 かな女が随筆の中で「疲れて畳の上に横たはつてゐる姿は、蝶々が翅をひろげて土の上に吸ひついてゐる姿と似てゐる。」と書いているが、とてもそのようには受け取れない。薄闇の中に咲く夕顔は美しくまた幽玄であるから、庭に咲く夕顔を背景に、居間の畳に座っている品のある中年女性を思い浮かべるのである。この女性像をかな女に結び付けて、かな女の自画像のような俳句であると言われることが多かったと聞いた。かな女と接する機会が少なかった筆者でも同様の思いである。 西鶴の女みな死ぬ夜の秋 『胡笛』所収 昭和二〇年~二一年 本句はかな女の名作の一つとされており、終戦直前詠まれたものだと思う。談林派俳諧師で、後に小説家・井原西鶴として男女の悲恋物語を書き続け、歌舞伎・浄瑠璃作家として活躍した。特に、『好色五人女』に登場するお夏・おせん・おさん・お七・おまんの五人の女の数奇薄命な生涯に同性の身として憐れみを感じ、この題材に不動の季語と思われる「夜の秋」を置いて詠んだものだと思う。何年も続いた戦争で、恋人や夫や兄弟などを喪った女性の悲しみも背景にあるのかも知れない。 死を急がず曼珠沙華見れども見れども 『牟良佐伎』所収 昭和四二年 さいたま市南区にある別所沼公園には、「曼珠沙華あつまり丘をうかせけり」の句碑があり、往時沼の近くの丘に群生した曼珠沙華を観て、顔をほころばせていたであろうかな女の姿を思い知ることができる。 長谷川かな女は俳壇的には「ホトトギス」出身の俳人である。明治の終わりころから「ホトトギス」に投句し、やがて夫君長谷川零余子とともに「ホトトギス」では中心的な存在となり、婦人一〇句集の廻覧を手掛け、また婦人俳句会の幹事を虚子などと務めた。 第一次大戦後の大正期、日本が女子教育の重要性を啓発し始めるころに呼応するように、かな女もまた社会へ目を向け、創造の世界を開拓することを心の中に萌芽させたのであろう。 一九二〇年に零余子が「枯野」を創刊するとかな女も主要同人として活躍するようになる。 零余子が急逝し、「枯野」が「ぬかご」に改題するが、やがてかな女は「水明」の創刊主宰として独立することとなる。 以後三九年の長きにわたり浦和の地で「水明」を育てつつ、かな女自身も創造世界を深めてゆくこととなった。戦前戦後の新興俳句運動やいわゆる戦後派とは一線を画し、また根源俳句論や社会性俳句論争とも距離を置きながら独自の俳句を深めつつ、一方で人との関わりはその範囲を超え各界の著名人とは広く交流している。 かな女の創造世界の特徴は、融通無碍と言って良いであろう。また俳句だけでなく俳句エッセイの世界を大きく前進させたことの俳壇への貢献もまた評価されてしかるべきである。 (解説・網野月を) 「水明」創刊九五周年とは、なんという歳月だろうか。 竜胆を畳に人の如く置く 長谷川かな女 カバーの装画は、長谷川かな女が好んだという「竜胆」を装画とした。 以下お知らせです。 第46回山之内貘賞を受賞された築秋雄さんのお祝いライブが予定されている。 ●2025年9月30日(火) 吉祥寺 曼荼羅 武蔵野市吉祥寺南1-5-2 B1 Tel.0422-48-5003 築秋雄presents『希望の翼』エピソード106 ~祝!!第46回山之口貘賞受賞記念ワンマン☆~ 出演:築秋雄/星衛(チェロ&篠笛) Special Guest:永井充男(ギター) 開場 18:30/開演19:00 チャージ 前売¥3000/当日¥3300+1ドリンクオーダー チケット予約:曼荼羅メール予約http//www.mandala-1.cnm/reservation or 各出演者へ。
※奄美出身のシンガーソングライター築秋雄が企画する炎のマンスリーツーマンイベント『希望の翼』シリーズ106回目は、緊急特別企画記念ワンマンを敢行。 この度の珍事、まさに青天の霹靂(へきれき)だった「第46回山之口貘賞」受賞を早々に記念して、その受賞詩集「漂流詩人の唄」(ふらんす堂)からじっくりたっぷりと。 サポートには3月の『希望の翼』イベント100回記念ライブでも大好評だった奇跡のギタリスト永井充男さんとチェロ&篠笛の名手星衛さんの参加が決定…!! パンデミックを越えて羽ばたき続ける“希望の翼”をぜひとも共に…!! ということで、築秋雄さん気合いがはいってます。 興味のある方は是非に! さて、 明日はいよいよ、 第一六回田中裕明賞授賞式とお祝いの会が開催される。 授賞式前に恒例の吟行会もある。 今日は朝から、その予行演習(?)をさせられた。 Pさんがほとんど文章化してくれたので、これで間違えたらもうyamaoka 終わりである。 見捨てられないためにも、 がんばろう。
by fragie777
| 2025-09-22 19:05
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Comments(2)
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
シナモンさま
ありがとうございます。 今年も無事にすみ、ほっとしております。 (yamaoka)
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