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8月1日(金) 八朔 大雨時行(たいうどきどきふる) 旧暦6月8日
青田。 この青田風のなかにたっていたことが、もうずっとむかしのよう。 今日はかなり涼しい。 台風がちかづいている所為だろうか。 数日前に夕食をつくっているときにブレーカーが落ちた。 あわててiPhoneで暗闇をてらしながらブレーカーをあげたのだが、要領が40アンペアであることに気づいた。 引っ越しをしてはじめて確認したのだった。(なんと呑気なこと) パソコンで仕事をすることも多いので、停電はこまる。 ということで、容量をあげてもらうことにして、その工事が今日の午前中にはいったのだった。 しかし、基本料金があがるのは痛いな。。。。 新刊紹介をしたい。 四六判仮フランス装帯カバー掛け 210頁 二句組 対中いずみ(たいなか・いずみ)さんの第4句集である。対中いずみさんは前句集『水瓶』で第7回星野立子賞、第68回滋賀県文学文芸出版賞を受賞されている。1965年大阪市生まれ、2000年「ゆう」入会、田中裕明に師事 2005年第20回俳句研究賞受賞、2006年同人誌「静かな場所」創刊、「椋」「晨」を経て、2020年「秋草」入会。現在「静かな場所」代表、「秋草」会員、俳人協会幹事。 『蘆花』は、『冬菫』『巣箱』『水瓶』に続く第四句集です。二〇一八年春から二〇二五年春までの句を収めました。このたびも水辺の景を中心に編みました。 と「あとがき」ある。対中いずみさんは、琵琶湖のちかくにお住まいである。「水辺」とあるのはきっと「琵琶湖」のことである。あとがきにあるように対中さんの作品を読んでいるとつねにその背後に琵琶湖の水のきらめきと匂いを感じる。 みづうみに紺の戻りぬ冬木の芽 第一句目におかれた句。「冬木の芽」の季語に万物のちからづよい命のきざしを思う。芽吹きへとむかう木々の生命力をかんじたとき、湖もまたその本来の色をとりもどしたのだ。この句「紺」が力強くひびく。「青」でなく「紺」であることによって、湖の生きとし生けるものを統べるゆるがせない緊張感にみちた色であることをおもうのだ。 本句集には水を詠んだ句や水を感じさせる句が多い。〈鳰小暗き水を食みこぼす〉繊細な描写の一句。鳰は小さな水鳥でありその容姿もどちらかといえば暗い。その鳰の一瞬のさまを巧みに捉えた一句だ。「小暗き水」も「食みこぼす」も巧みな措辞であると思う。多くの人が気づかずにとおりすぎてしまう景をきざみこむように一句にしたとおもった。イ音が効果的である。 まんなかの子どもに鯊の釣れたらし 好きな一句である。前には〈鯊釣に夕風長くなりきたり〉の句があってこちらも好き。さりげなく詠まれたように見えるこの句も、時間を掛けてようく見た一句なのではないか。長くなってきたのは「夕風」ばかりでなく、そこに佇む作者にも長い時間がながれたのか。鯊釣りの子どもたちがいる。作者はそれを見ているが、子どもたちの邪魔にならないように至近距離にはいない。ある距離をおいてその様子をみているのだ。すると真ん中の子どもが騒ぎだした。どうやら釣れたらしい。ひらがな表記を中心にして、漢字を効果的に配し、鯊釣りをしている子どもたちの様子がよくみえてくる。「らし」としたところに作者が子どもたちの様子を距離をおきながらも楽しんでいるのが伝わって来る。 花曇り真水であらふ海のみづ これはちょっと不思議なへんな句って最初おもった。中7下5の「真水であらふ海のみづ」をじいっと見ると、つまりは水で水をあらっているのである。こういう句はいままで見たことがない。何をあらうかは省略されている。しかし、何かを洗っているのだ。海の水をまとったものを水道水かあるいは琵琶湖の水で洗い流しているのである。そう書くとつまらないが、ここには「真水」への信頼がある。「花曇り」のうすぼんやりと茫洋とした感じに対して、中7下5の「真水であらふ海のみづ」のことばの力強さとほとばしる水のつめたさがいきいきと迫ってくる一句。この前におかれた〈ねむる子の足見えてゐる桜かな〉も好きな句である。子どもの足も健康的にほんのりと桜色になっていそう。さくらの句では、後半におかれた〈花びらの吹き上げらるる潮かな〉の句も好きな一句である。 読む人のまはり冷んやりしてをりぬ なんと言ったらいいのだろうか、立ち止まってしまった一句である。散文的な叙法であるが、すーっと心にはいってきて、すとんと落ち着く。「冷ややか」が季題である。「読む人」とあるが、これは読書をする人とは限らない。最初わたしは、静かに読書をする人を思い描いたが、それでもいいし、あるいは、新聞を読んでいる人、あるいは道にたって見上げるようにして広告塔を見ている人、またはiPhoneを覗き込んで何かを読んでいる人でもいい。つまり、なにかを「読む人」である。この省略が上手いとおもった。省略することによって自由に想像させる。その読む人は秋のさわやかな「冷気」につつまれているのである。それを「まはりひんやりして」と叙したことろも巧み。かぎりなくさりげないのであるが、かぎりなく細心に読まれている一句。「り」の音が冷気をさそう。ほかに「まはり」を詠んだ句で、〈あをぎりのまはりかはほり飛びあへり〉という句もあって、ひらがな表記をいかした一句である。ほかにひらがな表記のみの〈ゆふぐれのありとしもなきゆきぼたる〉という一句がある。上五中七のこの措辞、ふーむ、なんともやるなあ。である。 その辺を軍手で拭ひ桃の花 「その辺を」が、とても上手いと思う。しかも軍手が登場する。だから、「その辺」は整理整頓されたところじゃなくて、乱雑にして汚れている「その辺」なのである。土の匂いもしてきそうだ。そんな軍手をはめた働く手がみえてくる。そこに咲いているの色鮮やかな桃の花。桃の花って梅ほどに上品でなく、桜ほどに気取っていない。庶民的な花である。軍手ではたらく人によくあっている。この一句、「その辺を軍手で拭ひ」のことばのはこびが、何とも心にくい達者な一句となっている。 校正スタッフの幸香さんは、「〈それぞれの星に涼しき星空が〉に特に惹かれました」 ほかにも好きな句はたくさんあったけれど、そのうちのいくつかを紹介しておきたい。 雪粒のひつかかりゐる氷柱かな 夏雲のわれら恙なくさびしく 人にはぐれて吾亦紅に出会つて ずつとこの勉強机ほととぎす 永き日の紙の中へとしまはるる その人がわたしのやうで墓を洗ふ 琵琶湖は大きな澄んだ真水です。蘆はその水質浄化を担っています。春先、蘆の芽を尋ねて湖岸を巡ります。靴先が濡れるほど渚に踏み入り、小さな芽を見つけると「ああ、今年も会えた」と嬉しくなります。蘆の成長ははやく、すぐに瑞々しい青蘆になり、やがて仲秋には穂がぱらりと開きます。蘆の花です。よく見ると、一本一本の穂は緑に銀が混じったような色で、日を返してきらきらしています。ところどころに赤い穂が混じっています。これもやがて枯れ、枯れても折れず、蕭条とした冬景色となります。 「あとがき」を抜粋して紹介。 「蘆花」という句集名をつけられた由縁がよくわかる。 本句集の装釘は君嶋真理子さん。 白を基調にした対中さんにふさわしい清澄な一冊となった。 帯カバーをとると、白の本となる。 見返しも白。 扉。 栞紐も白。 蘆は小さな芽のときと花ひらくときに、ほんの少し赤い色を見せてくれます。蘆という植物はどうやらその髄に赤を秘めているようです。詩情とはそのようなものかもしれません。(あとがきより) 本句集上梓後の所感をいただいた。 〇句集を手にしたときの思い。 感無量です。第一句集『冬菫』上木後、5年毎に句集を出そう、そして生涯に4冊の句集を出そう、と思っていました。実際は5年毎には無理でしたが、ともかく4冊目を出せたことにほっとしています。とはいえ順風満帆だったわけではなく、『水瓶』後、ややモチベーションが落ちた時期がありました。今回、内容はともかく、4冊目の句集を出せるまでに意欲が戻ったのは、「秋草」の山口昭男主宰、「秋草」の仲間たちのおかげなのです。そのことに先ず感謝の思いが湧きました。 同人誌「静かな場所」のメンバーや、「ゆう」終刊後お世話になってきた竹中宏さん、岸本尚毅さん、びわこ吟行や超結社句会を共にして下さっている方々へも。 そして、涼しげな装丁に仕上げて下さった君嶋真理子さんに感謝申し上げます。 〇句集にこめた思い いただいた感想の中では、『水瓶』より透明感が増したと言って下さる方と、『水瓶』より幅が拡がったと言って下さる方とに分かれるようです。自分ではよくわかりません。ともかく、今、私にできる精一杯でした。 〇今後のヴィジョン 具体的にはまだ何も考えていませんが、たぶん、次がある、と思っています。4冊目の上木で打ち上げパーティのような気分になるかと思いましたが、そうでもなくて…。当面は、この暑さの中を生存し続けることが目標です。 対中いずみさん 春の鹿吾を見るときとほく見る 対中いずみ 対中いずみさんが、代表をつとめる「静かな場所」である。 №32号。 師・田中裕明を顕彰すべく創刊された冊子である。 メンバーに満田晴日さん、森賀まりさん、藤本夕衣さん。 いつも「田中裕明賞」を応援していただいている。 この号には、招待作品として、第15回田中裕明賞を受賞された浅川芳直さん、南十二国さんの作品が掲載されている。 巻末には、お二人が田中裕明の一句を鑑賞している。 又、岩田奎さんが、特別寄稿として「『田中裕明の百句』余話」」を寄稿している。 メンバーの方の作品と、この回では、森賀まりさんの「関西俳句講座」講演より」として「『俳句に内在する明るさ」に考えたこと」が掲載されている。 「裕明没後20年。記憶は薄れてゆくが、『ゆう』の句会で裕明先生を真ん中に刀根夫さんと明澄さんが良隣に坐っておられる姿などふと甦る。」は対中さんの「編集後記」 海山に酒を垂らさむ裕明忌 対中いずみ
by fragie777
| 2025-08-01 20:04
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