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4月16日(水) 旧暦3月19日
木香薔薇。 郵便局からの帰りに。 もう、薔薇の季節がはじまるということ、 季節のめぐりのはやさにあわてている。 もう少しゆっくりと日々を過ごしたいんですけど。。。 新刊紹介をしたい。 A5判変形仮フランス装カバーなし ラベル貼り 86ページ 詩人・手塚敦史さんの新詩集である。前詩集『球体と落ち葉』(書肆子午線)より8年ぶりの詩集の刊行である。 7冊目の詩集となるのだろうか。 詩集名「気化」。その意味は、「物質が液体から気体に変わる現象。蒸発と沸騰とがある。また昇華を含めるともある」と。 この詩集がとどいたと、詩人の小笠原鳥類さんが、さっそくメールで感想をくださった。 まずは紹介をしておきたい。 国語辞典や、古語辞典、仏和辞典など、たぶん勉強ではなくて、 辞典を見ていることの喜びがあるなあ、 と思っていると、 手塚敦史さんから新しい詩集『気化』が。 この本でも、 〈手塚敦史語〉が、 うれしい辞典のように、集められて、並んでいると思うのでした。 いつでも、何を書いても、この人の言葉。 収録されている詩編は長いものがおおいので、ここでは、短い詩をまずは紹介してみよう。 雨と遅れ 赤錆びた金属フックに 指でもって 籠めた 古風な るりの嘆息が 茎のようにほそく 閉じようと こよりとなって 触目ひずませ 反りかえった昏冥の葉と ブールドネージュという菓子を 口へほうり入れた 対話者の 傷だらけになったレンジのそばで 疲弊しきった または くずし出された膝へ と かゆい目をこする (発話者は 幼年の ) 所作とかがり いま唇に 雨と濡らす 遅れを感覚する 用いられている言葉は日常のなかにある言葉であるのだが、それらが詩の言葉となってこのように書かれ音のひびきとなって耳に達すると不思議な、ある独特の磁場がひろがっていく。 視覚としてもそうであるが、音としても。 言葉の展開のありようが、小笠原鳥類さんいうところの「手塚言語」なるものか。 「あれが、けむりのみえる前の つやのある写し 」靴下の片方が、とり忘れられ 残っている 詩集の冒頭におかれた詩行である。 手塚敦史さんのばあい、たった一行の詩であっても立ち上がってくるものにどくとくの気配がある。 「キーノートキノノ時、─」と題した詩編の、最後の詩行を紹介してみたい。 好きな詩編である。 ひびきというもの チ ること うたい ちる 巻き毛 て づ か 君、 て づ か さん、 あっ ちゃん、 あ つ し 君、 あー 君、 て づ かッ ち、 て づ か。… て づー、 あ つ し さん︑ (こんなにも、… キーノートキノノ時、小石ヲ置イテ―。 (草は あの乾いた音のほうだよ… ) いさめることのほかに ひらく ひいらぐ (ひとびととひととび(書き記すものとなれ 不一 詩編はすべて声に出して読むといい。 その音のひびきを反芻しつつ、視覚で書かれた文字をみる 一字開け、行開け、カッコ、句読点、句点、リーダー、すべてがあるべきふうにおかれている。 最後の「不一」には笑ってしまったが。 手塚敦史さんは、日常にある周辺のものを言葉でとらえかえしてそれを詩の言葉として配していくのであるが、その言葉が読まれるとその言葉が音とともにたちあがり空気に溶けていく、そんな感じがある。 溶けていくものは、子どもの声であったり、ひかりであったり、輪郭であったり、あるいはものとものとの関係性であったり、 そう、気化していく。 本句集の装釘は、手塚敦史さんによる自装である。 詩のことばと同様にきわめて繊細な感覚でなされたブックデザインである。 淡いピンク色の表紙。 マーブル模様のラベルが貼られ、 この「みずいろのマーブル模様」という言葉は詩編に登場する。 みずいろのマーブル模様のけむりは 一隅の空気へ混ざって 瞬きする時の 火への愛着のように︑立ちのぼっている 虫くいがすすみ ページを捲ることすら もはや︑ままならずに 「気化」という黒文字のタイトルは、あえてラベルにすこしかかるようにというのが希望された。 タイトルと名前はマットの黒の箔押し。 見返しは「くち葉いろ」 扉は漆黒の用紙で、青インクで印刷。 この「青」は鮮明になるように一度白で印刷し、その上に青を載せている。 この扉には、じつはニスで集合写真のひとたちの輪郭のみが刷られている。 ほとんどわからずに読者はとおりすぎていってしまうが、ページをひらいたとき、光の加減でかすかに浮き上がるのである。 それも手塚敦史さんのつよいご希望だった。 余白をいかした美しい文字の配分。 すべてが、手塚敦史という詩人の美意識によって構築されたものである。 もう一篇、比較的短いものを紹介したい。 帰郷 ノード/ここから見える景色が 景色のなかに見える ふうけいが/ある 左目を手のひらで蔽う はるさき はるの さきに /みずを書く/と 毎日のように//磊落になる 手許の︑えんぴつに 体液はあふれ︑壁近くの/リラを 揺すったら 透けた 群青の 「こう頭の動き だけで… 」 流れていく /ものも ざわめき 物音が/つんざく / ふう/いろ//けい// には ひずみ、 みずひき / と さきに ながめた けむりが、 暮らした/台所の タイルの艶を / 遠ざかり、はるの素地を 込めた なきがらの/かるさも / つぶぎれとなった/ 右路へ // 葉陰を/たたせ 顔にかかった /しぶきが/ 話し声の/けはいと / どれだけ / どれだけ / ひとつずつに // 息を/ 通わせ て きても│ ノード/リラの/みずばねや こめかみ / 視線と/伝える はるのさきいろも/閉じ 沈黙をまだ知らない しずけさ と 方角の / 山々も/肌膚へ ふれだした / ふう/いろ//けい//︙ いたるところへ 隠す//用水路の みずの ね は も︙ 「四十九日… 」 / ノード/口吻にも /こゆび から 引き伸ばされている 群青の 詩集を上梓された手塚敦史さんに、上梓後のお気持ちをうかがってみた。 〇出来上がりの詩集を受け取ったときの思い 第1詩集を受け取った時と同じようなドキドキがありました。それと同時に第1詩集から20年以上の月日が経っていることを思っていました。第7詩集。43歳。時間というものに驚かされる感覚がありました。山岡さん、ありがとうございました。ふらんす堂のスタッフのみなさま、また印刷屋さん、製本屋さんにも、大変お世話になりました。ありがとうございました。私の周りの方々にも感謝です。ありがとうございました。 〇この詩集にこめた思い 音声言語と文字言語、そのあいだの記号へこだわっていました。現代詩は文字言語である前提を自覚しながら、文字言語からひろがる言外への作用を注意しながら書いていました。 〇今後の詩人としてのヴィジョン 「ふらんす堂通信」の詩のコーナーのご依頼をいただきましたので、全力で取り組んでいきたいです。連載に「詩の舟」という素敵なタイトルを与えていただきましたので、それに見合うものを発表し続けられるようにしたいです。太陽の塔がある万博記念公園へ休日はよく行くのですが、太陽の塔と同じ顔をして必ず帰ってこられるよう、「なんだ、これは!」と誰かに言わしめたいのです。 そうなのです。 「ふらんす堂通信184号」より、詩の連載がはじまります。 詩人としてどんな展開をみせてくださるか楽しみです。 第1詩集『詩日記』の原稿を持参してはじめてふらんす堂にいらしたときは、まだ美大の大学生だった手塚敦史さん。 もうあれから20年が経っているとは。。 余談であるが、引用した詩のことばに 「て づ かッ ち」というのがあって、スタッフたちと笑ってしまった。 「手塚さん、よそでも「てづかっち」ってよばれているのかしら」って。 実はふらんす堂スタッフたちはそう呼んでるんです。 親しみをこめて。 仙川駅より今日の富士山をのぞむ。 真白き富士だった。
by fragie777
| 2025-04-16 19:39
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