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11月18日(月) 旧暦10月18日
上野・不忍池の冬紅葉。 昨日と今日の温度差って、 まったくもって どうよ。 風邪をひかないように気をつけなくっちゃ。 昨日の朝日新聞の「風信」に、岩田奎著『田中裕明の百句』が紹介されていた。 「はじめに」で裕明を「令和俳句の通奏低音、共通のコードといえる存在」と解説。「みづうみのみなとのなつのみじかけれ」 この『田中裕明の百句」、電子書籍の配信がはじまった。 Kindleは準備中。。 新刊紹介をしたい。 四六判ソフトカバー装帯有り 158頁 三句三首組 著者の田中佑季明(たなか・ゆきあき)さんの初めての句歌集である。田中佑季明さんは、1947年東京生まれ、作家・詩人・随筆家・写真家である。日本文藝家協会、日本ペンクラブ、日本現代詩人会、などなどの会員。著書は18冊におよぶ。初の句歌集『四季・絆』を上梓された。母は、作家の田中志津(1917-2024)、姉は詩人の田中佐知(1944-2004)。文芸のご一家である。田中佑季明さんは、文筆のみでなく写真家として全国的に写真展などを開催され活躍されている。今回の句歌集は、タイトル「四季・絆」からもわかるように、四季の巡りのなかに自身の人生と家族の風景を詠み込んだものが中心である。 この度、『四季・絆』をふらんす堂より上梓した。拙い作品ではあるが、我が人生の断片を切り取った句歌集となった。 俳句では、折々の四季・季節の移ろいの機微を詠む。 短歌では、かつて浅草に姉と出掛けた三社祭を詠む。また、母・田中志津(現在百七歳)及び亡き父・田中一朗(六十四歳没)亡き姉・田中佐知(五十九歳没)の追憶の想いを歌に詠んだ。現在、八十一歳の兄・田中昭生の短歌も詠んでみた。 「あとがき」より。 担当は文己さん。 俳句 箸止めて亡き姉偲ぶ三が日 土用鰻浜名湖畔の老舗店 名月や湯の岳照らすうつくしま 初雪やそろりと猫の足庭に 短歌 たらちねの母の姿に涙して百七歳の命与えん タイランド微笑みの国姉に似て涅槃仏像優雅な姿 死去後でも生きる魂幻か心に宿る姉の面影 箸止めて亡き姉偲ぶ三が日 「新年」の句より。この亡き姉は詩人・田中佐知。詩人として活躍されたが、59才にて死去。思潮社より「現代詩文庫 田中佐知詩集』『田中佐知全詩集』などが刊行されている。佑季明さんは、作家であるお母さまと詩人であるお姉さまを敬愛しつつ、ご自身もひとりの表現者として今日まで来られた方である。新年をむかえて、その食卓の膳についたとき、あらためてお姉さまのことが思い出されたのである。日頃忙しい日常においては、日々のことで過ぎ去る毎日であるが、お正月のゆったりとした時間こそ死者は生者の胸に蘇るのかもしれない。晴れやかであるべき祝の膳にここにいてもおかしくないはずの家族を死者として甦らせるのである。それも又家族ゆえの絆があるからこそなのだ。 水中花泡沫の華吾に似る この句は夏の句よりわたしが選ばせていただいたもの。芸術一家に生まれ、ご自身も果敢に表現活動をされている田中佑季明さんである。満たされた多忙な日々のある日、目の前の水中花にふっと目がとまった。透きとおるコップのなかでひっそりと咲いている水中花。そこについている泡に目がといく。花の色が泡にも映ってきれいである。そんな一瞬の泡=泡沫が、華のように彩りを浮かせてすぐに消えた。そのはかなさの華がまるで自身の華やぎの一瞬のように思えたのか。「泡沫の華」の語彙が空虚は響きをもたらす。 秋の風万葉の歌運びけり 作者が自選に選んでいる一句であり、わたしも立ち止まった一句である。この「秋風」、なにかただの秋風ではなくて、万葉集が編まれた時代から吹きつのってくるようなおおらかな風のように思えてくる。万葉人が心豊かに景色を味わい情感を交わしたその時代の秋風。そんな時代を彷彿とさせるような気持ちのよい秋風である。「万葉のうた」という言葉の響きが、ゆったりとしていて心地よく、そこに新涼の風が吹き寄せている。すべてが澄み切っている。万葉の歌を選ぶのはやはり「秋風」がいちばん相応しい。人間の頭がクリアとなり、感覚も研ぎ済まされる季節に吹く風はなんたって心地よい。 たらちねの母の姿に涙して百七歳の命与えん 作者のお母さまは、作家の田中志津氏。佑季明さんが尊敬してやまぬ107才のお母さまであったが、この11月の3日に107歳の生涯を閉じられたのだった。福島民報にはお顔の写真入りで訃報記事が掲載された。「新潟県小千谷出身。2007年から次男で作家の田中佑季明さんのいわき市の自宅に同居。東日本大震災発生後、東京に5年間避難した後、いわき市に戻り、最晩年まで精力的に執筆活動を続けた。」とあり、なかなかあっぱれな方であった。田中佑季明さんから代表作である著書『佐渡金山』などをいただいている。この一首は、107歳で亡くなられた母への追悼歌である。佑季明さんの本句歌集のなかでも「母を詠む」項で母についてはたっぷり詠まれいる。認知症となられたお母さまを介護する歌なども収録されている。〈限りある人生なれど我が道を作家魂息吹咲かせて〉〈時計読め耳も聞こえる百七よお経唱えされど認知かな〉 詩人佐知母の助言が影落とす生きる指標の原点を見る 「姉を詠む」の項より。お姉さまの佐知さんもまた、お母さまの作家魂に学んだお一人だったのだ。きっと大きな影響をうけられたのだろう。〈恋愛は成就はせずにされど生き詩の誕生は死の葬列か〉〈感性と情念燃えて創作に命の息吹高く舞い上げ〉〈晩年に私を生んでありがとう母に告白病の床で〉壮絶なお姉さまの人生だった。「父を詠む」の項で、お父さまが会社経営に失敗をされそれ以後、家庭は崩壊する。〈恐怖連れ夜がまた来る花吹雪怒号と悲鳴家庭崩壊〉〈嵐吹く酒に乱れて二十年家族巻き込み怒濤の夜更け〉「兄を詠む」のお兄さまは、企業人であられたようだ。〈テーブルに英字新聞拾い読み世界情勢分析の日々〉 これらの短歌が、記念碑的な作品となって昇華されたならば、本望である。だが、まだまだ到達点には至らず程遠い。過渡期であり更なる努力精進が求められていることは、自覚している。 私は今年喜寿を迎え、人生の時の流れの速さ、儚さに驚嘆している。我が人生の航跡を残したいと言う思いから、特に退職後、小説・詩集・随筆・シナリオ・短歌・俳句・絵画・コラージュ作品・写真などに果敢に挑戦してきた。決して満足のゆくものではないが、実績を積み上げてきた自負がある。これからも、スピードは遅くなるであろうが、心に宿る魂を熱く燃焼させて行きたい。 「あとがき」の言葉である。 装釘は君嶋真理子さん。 田中佑季明が初の句歌集に挑む。 四季の移ろいと、家族の絆を詠む。 そこには、田中佑季明の自画像が炙り出される。 (帯より) ご上梓の後の所感をいただいた。 (1)本が出来上がってお手元に届いたときのお気持ちはいかがでしたか? 装丁及び帯と俳句・短歌を読み、本を刊行したんだと言う実感を得た。まさに自分の子供を生み落とした実感だ。これで本の刊行は19冊を数えるが、毎回新たな感動が生れる。 (2)今回、初の句歌集に籠めたお気持ちがあればお聞かせ下さい 当初、「句歌集」を纏め上げる気持ちはなかった。東京経済大学の「葵俳壇」に、先輩の強い勧めで入会し、数年間、毎月俳句を7句ずつ投稿するうちに、拙い俳句ながら今の等身大の俳句とは何か?を問い詰めた時、恐れ多くも句集を刊行してみようという炎がめらめらと燃え上がってきた。怖いもの知らずで、どうせなら俳句だけでなく短歌も一緒に書いてみようと思った。俳句は四季の移ろいを、短歌は家族への想いを纏め上げた。父・母・兄・姉を詠む。こういう機会がないと、家族をテーマにした短歌など読むことがない。良い機会を得たと思う。この「句歌集」は我が人生の航跡でもある。 (3)句歌集を上梓されて、今後の創作への思いなどございましたらお聞かせ下さい。 今後の創作への思いは、小説だ。ここ数年「新・現代詩文庫」を初め詩集・随筆に力を注いできた。来年は、短編を含む小説に挑戦したい。以前から戯曲にも興味を抱いている。果たして書き上げることが出来るか未知数ではあるが、時間を掛けて考えてみたい。その他は、例年恒例の東京・いわき市への展示会への参加である。油絵・コラージュ作品を中心に創作する予定である。 田中志津氏が亡くなられたのは、この本の制作中であった。本の出来上がりを心待ちにしておられたのだった。 担当に文己さんに田中佑季明さんよりメールをいただいた。 告別式(家族葬)に本が届きました。 母に見せることが出来ず、残念でした。 しかしゲラは見ているのと、11月に私が句歌集を刊行すると言うと驚いていた表情が忘れられません。 親と長く同居していると、辛いですね。 遺骨やパジャマ・洋服など見ると思いだしてしまいます。 90歳からいわきに来て、東日本大震災で5年間東京に避難したり、母の人生も 流転に満ちたものでした。結婚生活で20年にわたる夫の酒乱生活に耐え、よく頑張ってきました。 著書は18冊。口述筆記もありますが、眼光鋭く原稿用紙に向かう姿勢は真剣そのものでした。 母の本を全部読んだと言ってくれる方もいます。 嬉しいですね。 お母さま(志津さん)を囲んで。田中佑季明さん(左)とお兄さまの田中昭生さん。 2016年5月撮影。 田中佑季明さま。 初めての句歌集のご上梓、おめでとうございます。 田中志津さまに手にとってもらえなかったこと、とても残念です。 ご家族への思いのあふれた一冊となりました。 さらなるご健吟をお祈りもうしあげております。 この道でああ良きかなと立ち止まり考えながら歩きはじめる 田中佑季明
by fragie777
| 2024-11-18 19:19
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