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11月8日(金) 山茶始開(つばきはじめてひらく) 旧暦10月8日
蕪を抜いているようだ。 仙川商店街に最近あたらしくできたパン屋さんがある。 銀行の相向かいにあって、銀行に寄ったついでに立ち寄ってソーセージパンをひとつ買ってみた。 お客さんの姿もおおい。 わたしは紙袋にはいったパンを自転車の籠にほうり込んだ。 ふらんす堂についたので自転車をとめて、パンを取ろうとおもったその時、パンは紙袋から飛び出して、なんと地上に落下してしまった。 あらららら…… すぐに拾い上げて、ちょっとはたいて紙袋にいれた。 俄然食べるつもり。 で、 食べた。 ふらんす堂にある電子レンジのトースト部門(?)にきり変えて焼いて食べたのである。 うまく焼けなくてちょっとパサパサしてしまったけれど、ソーセージはまあ、美味しかった。 新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装帯有り 220頁 二句組 作者の木村茜(きむら・あかね)さんは、昭和19年(1944)東京都江東区生まれで、江東区にお住まいである。平成7年(1995)「花筏」創刊入会、平成19年(2007)「萬緑」入会、平成25年(2013)「萬緑新人賞」受賞、平成27年「花筏」終刊、「四季風流の会」入会。平成29年「萬緑」終刊、「森の座」創刊入会。令和5年(2023)「森の座賞」受賞。俳人協会会員。本句集は第1句集で、「森の座」主宰の横澤放川さんが帯文を、おなじく「森の座」の北島大果さんが跋文をよせている。 母遠忌すべての桜ささげたし 自分も一度はこんな手放しの、それでいて稟性のとみに高い追慕の句をのこしてみたい。万人にそう思わせる一句ではないだろうか。(横澤放川) 北島大果さんの跋文より抜粋して紹介したい。タイトルは「いつくしみ深く」。 (略)普段我々に見せる外見は、下町の深川っ子であり、明るく親切で、てきぱきと物事を処理する有能な生活人である。 指図を受けるより先に、率先して事に当たり、何の苦もなく人の嫌がることに汗をかく性分である。言って見れば、下町の愛情をたっぷりと持って、義理、人情に厚い、慈しみ深い、姐御肌の人である。 これらの事が本人の中で、見事に統一されていると云えよう。 深川に住ひ定めて良夜かな この街が故郷となる燕の子 蟻穴を出づ下町は焦土の地 橋から橋見ゆる深川つがひ鴨 深川は焦土と化した地である。関東大震災と東京大空襲、共に阿鼻叫喚の巷と化した地なのである。その痕跡は今でもそこここに遺る。親の代から語り継がれている。夏祭りは浅草と同様に激しいものがあるのも頷ける。 因に氏は墨田区役所定年時、すみだ郷土文化資料館長であった。「原爆忌一羽の重き鶴千羽」を始め原爆忌の句のあるのは、当事者意識下に自ずと出来たもので、代表句の一つである。 本句集の担当は、文己さん。 好きな句は、 新緑や耳見ゆるほど髪を切り 爪切つて指の先から夏に入る 誕生石にしたし真赤なさくらんぼ 鯉の口春の空気を吸ひにくる 丁寧に割つて一人の寒卵 柿たわわ晴れ晴れと押す車椅子 普段着のふだんの顔に初日かな 新緑や耳見ゆるほど髪を切り 新緑のみずみずしい緑と、髪の毛からのぞく白い耳がまぶしい気持ちのよい一句だ。暑さにむかう季節となった。汗をかけば髪の毛が首筋にはりついて鬱陶しいこと。思い切って髪を切ることに。鏡の前で美容師さんに言う。「思い切って短くしてちょうだい」「はい、どのくらい切りましょうか」「そうね、耳が見えてしまうくらいでいいわよ」そんなやりとりがみえてくる。そうしてよきできあがりに満足して美容院をでる。ふと見上げた街路樹の緑が清々しい。風が耳元を通っていく。そんなときに生まれた一句かも。この句の素晴らしさは、「短く髪を切り」ではなく「耳見ゆるほど」の具体性である。読者はおのずと初々しく外気にさらされたやわらかな肉体の一部を想起するのである。人間の肉体がはなつ生気と新緑の緑の生気、万物は躍動する時へと向かっている。 爪切つて指の先から夏に入る この句も、作者の鋭敏な身体感覚を感じさせる一句だ。爪を切ってあらわにされた指の先。夏の外気にはじめて触れ敏感となっている指の先。季節の変化を身体のどこよりも鋭く感じとったのだろう。「夏に入る」という季語は立夏の傍題であるが、季節が「夏に入ったんだな」という感慨とともに受け身の認識で詠まれることが多いのであるが、この句は、そういう詠み方をしておらず、肉体の一部から「夏に入っていこう」というなんとも能動的な「夏に入る」である。面白い。しかも爪が切られたばかりの指の切っ先から夏に入るという、その身体感覚、清新である。夏になると作者は自身の身体を無茶苦茶軽くしたいという欲望があるのかもしれない。その感覚もわかるような気がする。 丁寧に割つて一人の寒卵 季語は「寒卵」であるが、寒中の卵は特に栄養豊富であるという。この句、心にひびいてくるのは、「一人の」という措辞である。寒卵をまえにして向き合っている人間、その卵を手にして割る。ぞんざいに割るのではなく、丁寧に割るのである。丁寧に割るという行為のその細部にひとりであることのしみじみとした時間が刻まれていく、そんな思いがどこかにある。丁寧に割るという行為に寂しさの濃密さがやどる。寒卵という割られる前の完璧な円形。それも一人であるわれを際立たせる。それを割ることによって、殻が壊れてしずかに流れ出す中身。そのひんやりとしたすきとおる中身もまた作者の寂寥を映すものであるのだろう、きっと。引かれる一句だ。 普段着のふだんの顔に初日かな 気取らない作者の人柄を表しているのだろうか。お正月だからといって晴れがましいことはなさらない。一人暮らしであるゆえの気ままさもある。普段着を着て、「ふだんの顔」をしてたっぷりと初日を受けている満ち足りた人間がみえてくる。「ふだんの顔」にクスって笑ってしまうけど、ふだんの顔っていったいどんな顔かしらって。わたしのふだんの顔ってどんなんだろう。これはきっと「普段着」を着ているゆえの顔なんだと思う。一張羅をきたらふだんの顔はちょっとできない。やはりすこし気取ってしまう、あるいはその一張羅にふさわしい顔を意識してしまう。粛々とした初日によって「ふだんの顔」もきっと更新されたのではないだろうか。なんせ、初日ですから。。 雪の夜は雪と語らふカステイラ 句集のおしまいのほうにおかれた一句。好きな一句である。しんしんと雪が降っている夜。そんな夜はあたたかなレモンティーを淹れて、カステラを食べましょう、雪が降る静かな時間を楽しみながら。そんな時間を過ごす作者がみえてくる一句だ。この句、下五の「カステイラ」がとてもいい。雪の白の冷たさに、カステラの甘くてあたたかな色、その柔らかさ。一欠片のカステラと物語をひめた雪の夜、人間はそれだけで幸せになれるのだ。「語らふカステイラ」の響きがなめらかに読者のこころに入り込んでくる。 校正スタッフのみおさん。「〈人の息吸ひてくづるる夕牡丹〉にとても惹かれました。牡丹の花びらの繊細さが伝わってきます。 この句集は私が俳句を始めた平成七年から、令和六年の現在に至る作品を、生涯一冊の集大成としてまとめたものです。 私が俳句を始めた原点は、平成七年七月に九十歳六ケ月で亡くなった父の跡を継ぎなさいと、勤務先の墨田区役所の先輩方の後押しがあり、豊崎素心氏(「萬緑」同人)、近藤酔舟氏(「狩」同人)を指導者に、女流俳句会「花筏」を立ち上げた事からになります。 「十年勉強すれば一人で句作ができるようになる」という指導者の言葉を信じ、五十歳からスタートした俳句の道です。(略) 令和六年の八月に、八十歳という人生の大きな節目を迎えます。今現在は比較的元気に過ごしておりますが、年齢それなりの老いを感じ、今まで元気に過ごしてこられた事に感謝しつつ、これから先に思いを馳せる事が多くなりました。(略) 私が過ごしてきた多くの時間に、沢山の方達との出会いや別れがありました。振りかえってみて、楽しい人生だったと言える多くの思い出があります。皆様には大変お世話になり、良い思い出を沢山作っていただきました。(略) 今後は時を大切に、一期一会の気持ちを以てお付き合いいただければ嬉しく思います。 「あとがき」を抜粋して紹介。 装釘は、君嶋真理子さん。 タイトルとなった句より、「桜」の装画をご希望された。 表紙のクロスは、白にちかい淡いピンク。 花びらを型惜しに。 扉。 俳句を始めて三十年。これから更に茜さんの『俳句』に期待したい。句集を読むことは、本人との出遇いである。この句集が木村茜さんとの良い出遇いであることを大岩のように信じている。(北島大果/跋) 上梓後のお気持ちをいただいた。 (1)本が出来上がってお手元に届いたときのお気持ちはいかがでしたか? 初めての自分の本を手にしたとき、仏壇にまず備え父母へ報告しました。 桜のデザインが上品で、私の願いを汲んでいただきとても嬉しく思いました。 (2)初めての句集に籠めたお気持ちがあればお聞かせ下さい 人生の一区切りとの想いで作りましたので、選句に当たっては自分の想いが強く出た句を選びました。 したがって自然詠よりも人事句、生活句が多くなりました。 (3)句集を上梓されて、今後の句作への思いなどございましたらお聞かせ下さい。 句作態度は急に変えられないと思いますので、これからも自分の身辺から句材を得て、類想の無い句作りを心がけていきたいと思っています。 「森の座」の先輩には98歳の現在も投句をされている方がいます。先輩方を見習い俳句を続けていくには、健康でなければならないと思っています。 木村茜さん。 昨年ギリシャ旅行をしたときに。 茎立や後期高齢から本気 木村 茜 木村茜さま この心意気すばらしいです。 この日は風がつよく大揺れのコスモス畑だった。
by fragie777
| 2024-11-08 19:30
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