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10月30日(水) 旧暦9月28日
コスモス。 一緒に黄花コスモスも咲いていた。 今朝は歩いて仕事場へ。 わたしはイヤフォンを左の耳のみにさしこんだ。 「マタイ受難曲」の好きな第47曲(主よ憐れみたまえ)から聴くことに。(47から61までを最近とり憑かれたように聴いている) しばらく聴きながらあるく。 ふっと思ったのだ。 左の耳のみで聴く「第47曲」は、いつものようにそれほど胸に迫っては来ない。 へえー。。 これはわたしの左の耳のせいなのか。 ちょっと不思議で、面白い。。。 右耳のみで聴いたら、どうなるか。 全然ちがっていたら面白いな。。。 今日は、俳誌「いには」(村上喜代子主宰)の創刊20周年のお祝いの会が、ホテルニューオータニ幕張で行われ、スタッフの文己さんが伺う。 明日、この祝賀会については、文己さんのレポートを以て、ご紹介したいと思う。 新刊紹介をしたい。 A5判ハードカバー装帯有り 120頁 詩人・鷹森由香(たかもり・ゆか)さんの第2詩集である。鷹森由香さんは、日本現代詩人会会員、詩誌「アリゼ」同人。第32回国民文化祭なら2017年現代詩の祭典課題詩部門において「ランチュウ」で日本現代詩人会会長賞を受章されている。第一句集に『傍らのひと』(2019)がある。 本詩集に詩人の以倉紘平氏が帯文を寄せている。 孫娘のすみれちゃんに、詩集冒頭の数編を読む日が、かならず訪れるだろう。祖母が自分を深く愛してくれていたこと、祖母の御両親や遠いご先祖に連なる自分に、厳粛な何かを感じるだろう。本詩集のテーマは、家族であるが、同時に、「天に星」のような自在な傑作も含まれていて、飽きることがない。 以倉氏が本詩集のテーマは「家族」であると記されているように、家族を詠んだ詩篇が多い。 担当のPさんによると本詩集の構成は以下のようである。 Ⅰ→お孫さんのこと Ⅱ→幼少期とご両親のこと Ⅲ→古典からのインスピレーション Pさんが好きな詩二編を以下に紹介してみたい。 まず、Ⅱより。 永遠の風景 施設に入所した母の診察券をさがそうと 母の財布を開けた お札やスーパーの会員カードと一緒に出てきたのは 私と妹の住所・電話番号を書いたメモ 私の娘の古い名刺 それから紙の切れ端に書いた地図 父にユニクロという店に行ってみたいといわれ 走り書きで書いた地図だった まだ父がうちにいて ふたりが車で買い物に行っていた頃のものだから もうかれこれ十年以上は前のものなのに とてもきれいに大切にしまわれていた 私は心からがさつな自分を恥じた 私には通り過ぎていく 日常のひとこまに過ぎない出来事が 母にとっては 失くしたくない思い出だったのだろうか 銀杏の葉が色づくにつれ季節が進み 輝く黄金色の葉は やがて散り始める 家族の風景は 時がたち ひとは入れ替わりながらも続いていく けれど 父がいて母がいて 私と妹がいて あの温かな家族の団欒はやはり 永遠の風景だと思う Ⅲは古典からのインスピレーションによって書かれた詩である。 いくつかの詩の冒頭にはその古典の一節が置かれている。 また、巻末には「金の星・註)として、引用された古典の解釈が添えられている。 Pさんの好きな詩を紹介したい。 Welwitschia mirabilis ここはナミブ砂漠 アフリカ大陸の西南岸 赤茶けた砂丘が遥か千三百キロにわたって連なり 雨は一年に数日しか降らない 絶え間なく吹きつける海風は 地球最古の広大な砂漠を作り上げたと同時に 膨大な海霧を送り込む わたしはその霧を吸って生きている ウェルウィッチア・ミラビリスはわたしの学名である 生涯たった二枚の帯状の葉しかもたない 反対方向に伸びる一対の葉は 数年たつと葉先が擦り切れ 裂けてカラカラとのたうつが この二枚はもう生え替わることのないわたしの命の源である ぎらぎら灼熱の陽に焼かれ また明け方の強風に煽られ たえず地形のかわる砂山に長い根を張り 二千年生きてきた わたしの和名を教えようか 葉の形状を見て、二律背反 また 自家撞着などと当てようとする者もいるが 〈奇想天外〉がわたしの和名だ 大正時代の園芸家が名付けたそうだが 案外間延びしたところが気に入っている ちりちりと葉先が痛む 乾ききった過去生のどこか だれかと一度きりあったような そんな砂漠の夢 風吹き荒れるナミブの岸は骸骨海岸(スケルトンコースト)と呼ばれている 本詩集の装幀は君嶋真理子さん。 薄紫がテーマカラーの美しい一冊となった。 上梓後のお気持ちをうかがった。 (1)本が出来上がってお手元に届いたときのお気持ちはいかがでしたか? 私の思いを美しく繊細な装丁にこめて頂き、感激致しました。作品を想起させてくれる仕掛けを随所に潜ませて頂き、不思議に懐かしく思いました。 (2)今回の詩集に籠めたお気持ちがあればお聞かせ下さい 師事しております以倉紘平氏は詩作の要について『長い熟視、ひそやかな感動』と常々おっしゃっております。 拙いながら、実体を伴う言葉だけで、今在る私のささやかな人生の交々を纏めたつもりです。 お読みくださる方々に共感頂ければ幸いです。 (3)今後の詩作品への思いなどございましたらお聞かせ下さい。 ここ数年、不器用ながら、詩を書くことが自らを支えてくれると漸く実感できるようになりました。 わかりやすい平明な言葉で、言葉遊びにならない作品を細々と書き続けたいと思います。 鷹森由香さん。 もう一篇、詩を紹介したい。 Books 小学生だったころ 私の本棚は賑やかだった エルマーのぼうけん、かぎのない箱、ちいさいおうち ハイジ、小公女、ドリトル先生 ライオンと魔女、銀河鉄道の夜、そして星の王子さま 学校から帰ったら、ピアノのお稽古もそこそこに 夢中で繰り返し読みふけった そのころ四十代だった父が 勤め帰りに本屋に寄っては買ってくれた本たちだった 物語を読み終えるのが残念で ある日 尋ねたことがある パパ 終わらない本ってないの? すると夕食中だった父は向き直り なぜかしんとした口調で静かに答えた 終わらない本は人生だけなんだよ 小学生の私は幼くて意味が分からなかったが だから今 私はこうして詩を書いているのではないか ささやかな人生を父に読んでもらうために
by fragie777
| 2024-10-30 18:36
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