10月25日(水)
朝、空を見ると灰色にかすかにきれいな青がところどころに見える。ああ、天気になるかもしれないな…って思い自転車での出勤を決める。今日のカッコウは、黒のタートルネックの上着に黒のひだスカート(なんと20年前のもの)に今年はやりの黒の太めのベルトをルーズにしめ、黒の長靴下と靴、あまりにも黒づくめであることに気づき、ああ、そうだ今日は午後よりお客さまがあるんだということに思い至る。きれいな色のいろんな石をあしらったイスラエル製のピアスをつけることにした。からだを動かすたびにピアスが優しく揺れる。さあ、これで少しやわらなか感じになったでしょ。
仕事場への途中、よく見かける猫の親子に遭遇する。日が差しはじめた草叢の空き地でどうやら日向ぼっこをしている様子。もっと近づいて写真を撮りたかったのだが、お母さん猫が「何よ!」っていう感じでこちらを睨みつけているので、これ以上は無理。子猫たちもこの間みかけたよりも大分大きくなっている様子でひと安心。
今日のお客さまは、句集の見本が出来上がったばかりの方なのであるが、その見本の黒い帯ができあがってみると、なんというかご自身をなんとなく不安に落ち着かなくさせるようで、恐縮なさりながら、時間と経費がかかってもお直ししたい、という方なのである。改めて帯の用紙を相談すべく、来社されるのである。70代の女性の方なのであるが、この黒い帯を決めたときもご来社いただき、あれこれと検討しながら、やはりこのルミナカラーの黒に銀刷りが一番きれい、ということで決定したのだった。そうしてまず一冊を著者へ送る。そこで悩まれた。こういう心の逡巡は、こちらがどんなに黒がカッコイイと思ってもゴリ押ししてはいけない。ご当人が一番気持ちの落ち着くものを振出しに戻って探していくしかないのである。しかし、ご本人のいうままになって、あまりすっとんきょうなものやダサイものになってしまうのは版元としてイヤである。そこでご来社いただいての相談となったのである。私としては(この黒がモダンで若々しくていいですよ!)とこころの中で叫んでいるのであるが、それはぐっとこらえ、ほかのものをあれこれとおし当ててみることに。なんでも合うという装幀ではないので、大変難しい。渋くなりすぎず、そうかといってええっ!というような派手も駄目、あくまで品格をそこねないもの、というものを捜す。そんなこんなで30分ほどあれこれと迷ったあげく、どうにかこれならっていうものが見つかった。著者の方もホッとした様子。
今回あらためて黒がこれほどまでに人間のこころを支配する色なのかを知る。かつて読んだ本に、それまで決して女性達が身につけなかった黒のドレスが現れることによってヨーロッパのモードの流れは変わった、と書かれていて驚いたことがあった。
ウーン、黒ね…。黒って聞くと、わたしはゴージャスという言葉が思い浮かぶ。わたしは好きな色だな。だけど頼り切って甘えてはいけない色に思える。
と言いながら、わたしの今日の格好、どんなもんでしょう? 黒づくめよ!