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8月7日(水) 立秋 旧暦7月4日
マーラ。 癒やされる。 ずうっと見ていたい……。 昨夕、生パスタを買おうとクィーンズ伊勢丹に立ち寄った。 しかし、いつもあるところにない。 わたしは生パスタを求めてクィーンズ伊勢丹をあっちこっちとさまようことになってしまった。 随分さがしたのだけれど、ない。 食品をそろえているスタッフの男性に声をかけた。 「ボクは担当じゃないんですけど、聞いてきます」と言って担当スタッフさんをさがしに行ってくれた。 彼もあっちこっちとさまよったあげく、担当スタッフさんをみつけて連れてきてくれた。 結果、おもいもかけないところの片隅にわが生パスタはひそんでいたのだった。 生パスタは3分半から4分ゆでるだけでいいのである。しかも結構保存がきく。 ということで、夕食は予定どおりトマトソースベースの揚茄子パスタとなったのだった。 新刊紹介したい。 四六判ソフトカバー装帯有り 232頁 二句組 著者の坂田晃一(さかた・こういち)さんは、1956年香川県生まれ、現在は東京・小平市在住。俳誌「藍生」(黒田杏子主宰)、俳誌「未来図」(鍵和田秞子主宰)、俳誌「磁石」(依田善朗主宰)を経て、2022年「麦」(対馬康子会長)入会。現在は「麦」同人、現代俳句協会会員、俳人協会会員。本句集は第1句集で、対馬康子会長が序文を寄せている。 対馬康子会長は、 坂田晃一さんはすでに二十五年余りの句歴があり、第一句集『耳輪鳴る』が世に出ることは、私にとってもたいへん嬉しいことです。 晃一さんは、鍵和田秞子主宰のご逝去にともない二〇二〇年に終刊となるまで「未来図」にて薫陶を受けられました。その後、「未来図」後継誌の「磁石」を経て「麦」に入会。胸に秘めた俳句への情熱や、高い学識、社会人経験の豊かさは人一倍のものがあります。充実した作品発表により、「麦」では異例の早さで同人に推挙され、今や「麦」が誇る代表作家の一人です。 と、序文を書き始め、俳句を引用しながら丁寧に鑑賞をしておられる。ここでは句集名となった「耳輪鳴る」の句についての一文を引用させてもらう。 耳輪鳴る海亀海へ帰るとき 海亀が夜の砂浜に産卵して静かに海に帰って行く。真夜中の波音を背に涙して卵を産む海亀。そのしんとした神聖な時間を私も徳島日和佐の海岸に見に行ったことがあります。晃一さんは古事記を中心とした古代史、美術鑑賞に詳しく、タイトルとなったこの句も古事記の山佐知毘古・海佐知毘古の故事を現代俳句によみがえらせています。神の証の耳輪の音がシャランと響いたその瞬間、日本人の遥かな時空とふるさと四国の海の景が一つにつながり晃一俳句の原郷となっていく。 本句集の担当は、文己さん。 人も水梅雨の近江の窓に寄る 驟雨来る今年神輿の出ぬ町に あぢさゐも鳳凰堂も水に浮く 枯野人遥かにわれも枯野人 洗ひたる皿みな濡れて仏生会 猫に聞く妻の居場所や蜃気楼 文己さんが好きな六句のうち「水」にかかわる句が4句もあることに気づいた。これは文己さんが「水」の句が好きなのか、あるいは坂田晃一さんご自身が、おのずと「水」に惹かれていく体質(?)であるのか、このことを意識して本句集を読んでいくのも面白いのかもしれない。〈人も水梅雨の近江の窓に寄る〉の句については対馬会長も序文でふれている。「人体は水。造化に操られるように流れてゆきます。梅雨の近江ということばが詩的空間を形成します。」と。 あぢさゐも鳳凰堂も水に浮く これも水である。「鳳凰堂」は宇治の平等院鳳凰堂のこと。美しい寺院であるが、まるごと水にその姿を映し出しているので有名である。どの季節でも美しいだろうが、掲句は「あぢさゐ」が咲く鳳凰堂である。「あぢさゐ」は水を呼ぶ花である。鳳凰が翼をひろげたように水にそいつつ両極へのびてゆく朱塗りの鳳凰堂。そこに点じられた紫陽花。それを俯瞰する目。まるで紫陽花も鳳凰堂も同じサイズで水に浮いているかのようだ。それが面白い。そして紫陽花も鳳凰堂も水に統べられている。 枯野人遥かにわれも枯野人 序文でもふれられ、作者も自選にあげている一句だ。多くのことを語っていないのだけれど、ひろい空間がみえ、深い眼差しを感じる一句だ。対馬会長は、「祈りのような決意を滲ませた作品」の一句としてこの句をあげている。「枯野人」とは、省略された俳句固有の表現であるかもしれない。「枯野」は単に枯れた野原にあらず、中世以降の歌人たちが荒涼とした野原にも「わび」「さび」に通じる美意識を見出したようにそこには脈々と俳諧連歌の情趣が息づいている。そのことを思いつつこの句を読むと、この一句、枯野に立つ人間を遠くみつつ自身も枯野人の一員となっているという空間的な距離を詠んだもののみならず、自身が枯野に立ちながら、かつて枯野にたたずんだ歌人たちを幻視している、そんな一句とも読み取れる。「遥かに」の措辞は深い時空を宿しているのだ。 猫に聞く妻の居場所や蜃気楼 本句集には「妻」を詠んだ句がときどきある。〈妻のもの畳んで小さし一葉忌〉〈妻の瞳の中に白鳥万羽ゐる〉〈妻をらぬ夜はなほ青く冷蔵庫〉〈蟷螂の顎の尖りを妻も持つ〉〈呼吸する残像妻に似し水母〉妻の句をあげてみたのだが、わたしが面白いとおもったのは、ここで詠まれている「妻」がどれも日常的な匂いをもっていないということなのだ。生活をともにする妻であるのだけれど、詠まれている妻は、「妻」という役割から離れてもっと切実な存在としての「妻」、そんな風に読んでとても好感をもったのだけれど、どうだろう。そう、こんな風にもいえるかもしれない。「妻」という人へのある畏敬。 剝がしてはまた貼る付箋獺祭忌 これはわたしが面白いとおもった一句である。付箋はとても便利。この付箋に助けられる日々だ。今日もいったい何度付箋を貼ったり剥がしたりしただろう。この句「獺祭忌」がいいと思った。子規の時代に付箋があったら、子規はフル活用をしたであろうことは断言できる。編集作業には欠かせない付箋である。死に臨みつつも飽くことなく創作活動や弟子たちの指導にいそしんだ子規。「剝がしてはまた貼る付箋」という繰り返しの行為は断念をせずに何かをつくりあげていく、そういう思いのもとにくり返されるものだ。絶望の淵にたたされながらも、断念するということに遠いところにいた子規のありように通底しているように思えるのだ。 子の育ちきりし夕空こひのぼり 鯉のぼりを詠んだ一句である。子どもの成育をねがって空に泳がせる鯉のぼりである。しかし、掲句の「こひのぼり」は、ややさびしい鯉のぼりである。鯉のぼり事態が淋しいのではなく、それをみる目が淋しいのであるが。こんな風に詠まれた鯉のぼりはあまりない。もう鯉のぼりを立てる必要もない立派に成人した子どもである。結構なことなのだが、親の気持ちは複雑だ。その複雑な心情を夕空が助長する。句に配された「イ」の音が、心底に食いこむように響く。 校正スタッフのみおさんは、「〈晩秋の木の待つてゐる東口〉がとても好きです。一日の予定を終えてほっとしたとき、私もこんな木に待っていてもらいたいです。」 同じく校正スタッフの幸香さんは、「〈着ぐるみの口より仰ぐ流れ星〉に特に惹かれました。」 俳句を始めてもうかれこれ四半世紀になる。よく続けてこられたものである。そろそろこのあたりで区切りをつけて句集を出す頃合いかと思う。(略) 今回句集に編んだ句は、大半が「未来図」、「磁石」時代に作った句である。 しかし、二十五年あまりという月日は長く、その間に、鍵和田秞子、黒田杏子と相次いで師を失ってしまった。心残りは、ずっと私を見守ってくれていたであろうお二人の師に句集をお見せできなかったことである。 現在所属している「麦」の対馬康子会長とは、母校の高松高校の先輩、後輩というご縁で、高校の卒業生で始めた句会で毎月お世話になっていた。これももう一五〇回を超えて続いており、その間、対馬会長(句会では康子先生と呼ばせてもらっている。)にはご多忙の中ずっと選をいただいており、私をはじめ句会参加者には大きな励みになっている。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 本句集の装釘は君嶋真理子さん。 坂田晃一さんは、装釘にこだわりがあって、いろいろとご要望された。 そのご要望に応えての装釘となった。 全体を茶系で統一。 表紙。 扉。 誰か来る槍鶏頭の地平線 乾いた現代社会に立ち向かう救世主への期待のような一句です。 「麦」とともに歩みを深める、時空の旅人ともいうべき俳人坂田晃一さんの今後益々のご活躍を楽しみに筆を擱きます。(対馬康子/序) ご上梓後のお気持ちをうかがった。 (1)本が出来上がってお手元に届いたときのお気持ちはいかがでしたか? ふらんす堂さんには随分ご無理をお願いして色々便宜を図っていただきましたが、おかげさまで自分でも納得のいく句集ができました。 (2)初めての句集に籠めたお気持ちがあればお聞かせ下さい この句集を読んでいただくことにより、従来句会をともにさせていただいた方以外にも、少しでも多くの方に坂田晃一という俳人を知っていただければいいなと思います。 (3)句集を上梓されて、今後の句作への思いなどございましたらお聞かせ下さい。 句集を作ることにより、ある程度まとまった形で自分の作品を残すことができたという満足感はあります。しかし、今までの作品はどうしても句作の際、いわゆる俳句的な発想や表現技法に頼って詠んだものが多いので、今後は俳諧自由ということで、もう少し斬新な表現で俳句の新たな可能性を探ってゆけるような句を詠んでゆけたらな、と思います。 坂田晃一さん。 坂田晃一さま 第Ⅰ句集のご上梓おめでとうございます。 さらなるご健吟をお祈りもうしあげております。 桜蕊ふる銃眼といふ虚ろ 坂田晃一
by fragie777
| 2024-08-07 21:37
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