ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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80歳ではじめた俳句、100歳を目前に句集刊行!

12月26日(火)  旧暦11月14日



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冬紅葉。




今日の毎日新聞の坪内稔典さんによる「季語刻々」は、桐山太志句集『耳梨』より。

 鯉濃や風突つかかる窓に雪   桐山太志


ゆったりと過ごす年末は、「今日の句のようなこいこくをたとえば琵琶湖畔へ食べに行ってもよい。」と坪内さん。
琵琶湖に近ければそれもいいですね。関東の人間であるとすれば、長野の諏訪湖畔あたりかなあ。かつて一度家族で食べにいったことがあったような。でもそれも遠い記憶。この句、「風突つかかる窓に雪」がとても寒そう。






新刊紹介をしたい。

園田美知子句集『心の花束(こころのはなたば)』


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四六判ソフトカバー装 132頁 二句組

著者の園田美知子(そのだ・みちこ)さんは、1924年(大正13)生まれ、今年99歳、来年は100歳をむかえられる方である。2005年の80歳のときに「馬醉木」の德田千鶴子主宰の教室に入門し、2012年「馬醉木」に投句をはじめたというお方である。現在は「馬醉木」会員。今回、これまでの俳句をご自身の記念のために小冊子の句集にまとめようとされたのだが、德田主宰のアドバイスもあってこのようなかたちの句集となった。ご本人の園田さまも、お嬢さまおふたりを伴ってご来社され句集の相談をされたのだった。序文を德田主宰が寄せている。タイトルは「魂ゆたかに」。抜粋して紹介したい。


美知子さんは、八十歳になられてから俳句を始められました。最初の頃は基本的な俳句のルールをご存知なかったかも知れませんが、今では共感を得る句を詠まれています。
お年がら、目も耳も遠くなられていますが、台風の日も休むことなく句会にいらっしゃるその気持と姿勢には、私も学ぶことがあります。
現在九十八歳の美知子さんを支えるのは、お子様達の協力。句会への送迎は勿論、句を詠めるように、様々助けていらっしゃいます。高齢者の生き難い現代、稀にみる幸せと思います。

 箱根路はさつと一刷毛うす紅葉
 幸せの色はなにいろ春近し
 初幟見上ぐる夫の目思ひ出づ

美知子さんが選ばれた三句です。
当初は亡き夫との思い出の句が多かったのですが、少しずつ句の幅が広がっていくのがわかります。景色や内面を見つめるようになりました。
三句目の「初幟」は、三人続いた女の子の次に生まれた男の子の誕生を喜ぶ姿です。
その四人に守られ、天上のご主人にも見守られ、美知子さんの今日があります。

この序文にも書かれているように、本句集の製作にあたっては二人のお嬢さまがなんどもふらんす堂へ足をお運びくださった。

本句集の担当は、文己さん。
好きな句は、、

 春彼岸夫の時計にいのち入れ
 いつしかにまどろむ肩にショールあり
 日めくりの薄くなりゆく寒さかな
 日向ぼこ猫にもうつす大欠伸
 三日月やゴンドラのごと星を漕ぐ

 
 春彼岸夫の時計にいのち入れ

来年白寿をむかえられる園田美知子さんであるが、ご主人はすでに亡くなっている。本句集ではおりにふれてその夫君のことを詠まれている。そのうちの一句である。春のお彼岸になって、夫が使っていた時計を取り出したのだ。その時計はすでに時を刻むことはしておらず時計としての機能は果たしていない。主なきいま時を刻むことも不要となったのである。妻の美知子さんはその時計のネジをまいてふたたび時刻をあわせ時を刻むことを開始させたのだ。眠っていた時計を目覚めさせたのであるが、園田美知子さんによっては、目覚めさせるという思い以上に、時計が動きだすことによって命をきざみだした、亡き夫がよみがえったかのように、そんな願いをもってネジを巻いたのではないか。切々とした夫恋の一句である。

 いつしかにまどろむ肩にショールあり

家族にいたわられながら日々を送っておられることがよく分かる一句である。そして「ショール」という冬の季語がたいへんさりげなく詠まれている。ふっと椅子にもたれて眠ってしまった。気づくと身体にショールがかけられている。(ああ。掛けてくれたんだ)って家族の顔を思い浮かべる。愛情にみちたショールである。こんな老後がおくれたら申し分ない。自身の老後を思うと、このようなことは期待してはいけない。と思うけど、もうすこし先の未来は、一家に一人(?)最先端ロボットがいて、そっと肩にショールをかけてくれるんじゃないかって思わないでもない。わたしの場合はまず無理よね。。。

 日めくりの薄くなりゆく寒さかな

この句は上手い一句だとおもった。寒さというものを、日めくりカレンダーによって詠んでいるのだ。冬の季節になればすでに日めくりカレンダーの枚数は多くない。一枚めくるごとに冬は深まり、そしてそれが尽きる頃には歳晩となる。物理的なことがらを詠んで中七で切って、「寒さかな」と寒さを体感させている。寒さがひとしおに思えてくる。

 散り敷きて白梅清く掃きのこし

これはわたしの好きな一句である。散り敷いた白梅を掃いてしまわないであえて掃きのこして、その様も楽しむそんな典雅な心持ちがいい。この一句「散り敷きて」と上五で何かが散りしいている様を読者に呼び起こし、それが「白梅」であるとつづけまず散り敷いた白梅をイメージさせるのだ。そして「清く」とその白梅が泥にもよごれておらず純白のままであることを示し、その散った白梅を愛でる気持を「掃きのこし」として詠んでいるのである。わたしがゴタゴタと説明するまでもなく、この一句は簡潔である。咲いている白梅ではなく散った白梅を無駄なく巧みに詠んだ一句だとおもった。

 白息の群れがやがやと塾帰り

この一句も描写が闊達である。子どもとかという言葉は省略し、しかし、子どもの生き生きとしたありようは見えてくる。どんな子どもたちでありいくつぐらいであるかということもよくわかる一句である。そして季語は「白息」、寒い季節でも勉強に一所懸命な子どもたちの集団。わたしたちもよく目にする風景だ。後半に置かれて一句であるが、俳句の骨法をよくふまえた一句だと思った。


間もなく白寿。我ながらいつの間にかと思う歳となりました。長いこと携わってきた車の運転、ゴルフ、水泳、書道、鎌倉彫、水彩画は緑内障のためにままならぬこととなった老境のある日、ふと巡り合ったもの。それが俳句の世界でありました。今さらとてもとてもと思いつつ四十ならぬ八十の手習いを始めることにいたしました。
十八年前、思い切って飛び込んだカルチャーセンターの俳句講座が幸運なことに德田千鶴子先生のお教室でした。よちよち歩きの老人をお導きいただくのはさぞお大変だったと存じます。十七文字の世界に挑戦して物の見方、考え方が変わった自分に驚きました。句を作る楽しさに生き甲斐を感じるようになりました。
この度、私の足跡になればと、おこがましくも句集を出させていただく事となりました。「馬醉木」への投句を始めて十年、掲載していただいた句から順番に抜粋いたしました。この歳になるまで続けられましたのは、心優しい大森句会の皆様のお陰でございます。目も耳もどんどん不自由になり多大なご迷惑をおかけしておりますのに句会に参加させていただき「馬醉木」に投句出来ております。「馬醉木」主宰の千鶴子先生におかれましては、日々ていねいなご指導をいただき、この度も序文に温かいお言葉を賜わりありがとうございました。素晴らしい先生方とお仲間に恵まれて本当に幸せと心から感謝いたしております。

「あとがき」を紹介した。
つくづくとすごいなあって思う。80歳で辞めるのではなくて、俳句を始められたのである。そして20年ちかくなって一冊の句集を上梓されたのである。
この心意気がすばらしい。

本句集の装釘は君嶋真理子さん。

ご本人の希望は「可愛らしいもの」ということ。


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ピンク色を基調に、ウイリアム・モリスの絵柄を使用。


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タイトルは金箔押し。


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表紙も同じように。


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見返し。


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扉。


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 どうぞ百歳を、いやもっと大丈夫。
 俳句、詠み続けて下さいね。
             (德田千鶴子/序)


上梓後のお気持ちについては、お嬢さまの尚子さまよりお言葉をいただいた。
それを紹介したい。

おかげさまで、タイトルと装丁デザイン・色をお褒めいただき、姉妹3人はほっとしております。
母は目が悪く自分で確認できないのですが、とても喜んでくれています。
句につきましては、徳田先生がおっしゃるとおり校正が丁寧で、仮名遣い、季節の微妙な順番もご指摘いただき助かりました。

母と私の気に入っている句をお知らせいたします。

母:この月を見てゐてほしき人想ふ

私:逢へるやうでで虫の向きかへてやり




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園田美知子さまと二人のお嬢さま。

ふらんす堂にご来社くださったときのもの。



園田美知子さま

驚きながら句集を拝読いたしました。
句会へも積極的にご参加されておられるということ。
すばらしいです。
句集のご上梓を機に、さらにさらにご健勝であられますように。
そしてお嬢さま方、いろいろとありがとうございました。178.png178.png178.png178.png178.png


 
 仕来たりのゆるみゆく世や黄水仙     園田美知子







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by fragie777 | 2023-12-26 18:44 | Comments(0)


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