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12月11日(月) 旧暦10月29日
国立の矢川緑地にいた翡翠(♂) やっぱりわたしの好きな目をしている。 今朝はえらい寝坊をした。 いつもより1時間ちかく遅く起きた。 朝食をとりながら見るテレビの時間帯がずれていて、「爪のお手入れ」の番組をしばらくみることになった。 最近、「爪と手のお手いれをもっとするように」と3種類のハンドクリームをプレゼントして貰ったのであるが、それすらも上手く使えてない。 さらに、「爪のお手入れ」だけでも余りにも奥が深いことを知って、この道はとても無理と断念することにしたのだった。 新刊紹介をしたい。 46判ソフトカバー装帯あり 188ページ 二句組 著者の桐山太志(きりやま・ふとし)さんは、1978年兵庫県姫路市うまれ。現在は奈良市在住。2013年「鷹」入会、小川軽舟に師事、2017年「鷹」新人賞受賞、2022年「鷹」俳句賞受賞。「鷹」同人、俳人協会会員。本句集は、2013年から2023年初夏まの10年間の作品を収録した第1句集であり、序文を小川軽舟主宰が寄せている。句集名については、「大和三山の耳成山の古代名からとった。天香久山や畝傍山と比べると一番地味な山だが、大和国中にぽっかり浮かび立つ山姿は明媚で、故郷ならねども郷愁を覚える山である。」と「あとがき」にある。 軽舟主宰の序文を抜粋して紹介したい。 歴史に培われた俳句の固有の力を疑うことなく、それを遺憾なく発揮させることに全力で取り組む。桐山さんの創作姿勢は山本健吉の論に後押しされてのものだと思う。俳句の詩型を信じることによって、時に作者の器量を超えた大きなものが作品に宿る。そんな成果を私は次の三句に見る。 はらはらと水ふり落とし滝聳ゆ 軍鶏老いて金秋の声絞りけり 真つさらな朝ゆきわたる雪野かな いずれも桐山さんの作品ではあるけれど、桐山さんの存在を超えた彼方からやって来たものだと思えるのだ。 本句集が出来上がってきて手に取ったとき、(なんと力強い気にみちた句集だろうか)って思った。装幀のイメージもあるのかもしれないが、ある気迫がつたわってくるような句集である。桐山太志さんが句集をとおして表現したいもののなにかがすでに伝わって来るような一冊だと思ったのだった。 本句集の担当はPさん。 晴天に残すものなし黒揚羽 目つむれば明るき闇や花疲 枯園に火傷の痕を見せられき 湯上がりの裸足の旅の熱りかな 鵜篝に城山の闇高くあり 木の実降る地べたに知恵を分くるごと 洛北の村濃に暮るる春田かな 着くごとに虫の駅なり小浜線 八月のひかり鉄鎖の匂ひあり 枯園に火傷の痕を見せられき 作者も自選にいれている一句である。この一句を読んだときちょっとハッとし、なんだこれはって一瞬思った。しかし、よく詠めば景としては、枯園の何かを燃やした焼け跡を詠んだ一句なのである、が、「火傷」や「見せられき」という言葉によってその焼け跡がへんになまなましく立ち上がってくるのだ。しかも「見せられき」という叙法で見てはいけないものをあえて見てしまったような気分にさせられるのだ。見せつけてきた主体は「枯園」である。枯園にある珍しくもない景を用語の選び方と着想の面白さで新鮮な一句にしたてたのである。「焼け跡」を「火傷」とはねえ。。。たしかに枯園は熱かったと思うし、それを訴えたかったんだと思う。枯園の気持もわからないでもないな。。。 着くごとに虫の駅なり小浜線 「小浜線」は、「小浜線は、福井県敦賀市にある敦賀駅から京都府舞鶴市にある東舞鶴駅までのおよそ84kmを結ぶ、嶺南地域唯一の鉄道です。」とあり、24駅あるうちの半分の駅が無人駅であるらしい。わたしも乗ったことが2,3回あるがのどかな電車だった。掲句はだからよくわかる。駅のプラットホームにはすぐに山が迫ってくるようなところもあって、秋の夜にはそれは虫の闇が覆いつくしているのではないかって思う。「着くごとに虫の駅なり」という措辞がシンプルでありながら状況を巧くいいとめて説得力がある。小浜線という鉄道がどのような線路であるか、これで一発でわかる。乗っている作者の気持ちのゆったり感まで伝わってくる。小浜線への親しみをこめた挨拶句でもある。 寒鯉を分けて寒鯉すすみけり これはわたしの好きな一句である。作者も自選にあげている。この句集の冒頭におかれている。とてもシンプルな表現であり、「寒鯉」が「分けて」「すすむ」ということだけを詠んでいるのだけれど、寒鯉の重さや緩慢な動きやぬらりとした膚などが読み手に伝わってくる一句だ。寒鯉が寒鯉をわけるというそこが要のような気がする。分けるほうも分けられる方も寒鯉の存在感がハンパないのである。分けて進むこどによる水の動きやたがいのくっつくようでくっかないような関係の存在感、寒鯉であるゆえにすばしこい動きからはほどとおく互いに重さを伴った緩慢さ。この一句のおもしろさは一重にこの寒鯉同士の関係性にあると思う。シンプルに詠んでいるのだけれど寒鯉の存在感はたっぷりである。 八月のひかり鉄鎖の匂ひあり Pさんが好きな句としてあげているが、わたしも印をつけた一句だ。ただ、なんというか、これって「ひかり」が「匂う」ということなので、どう鑑賞したらいいのかむずかしい、だけど惹かれる一句なのだ。現実的な物としては「鉄鎖」であるが、この一句では、「鉄鎖」があるのではなくあるのはその「匂い」なのだ。あくまで作者が直観的に感じたことを一句にしたのだとまずはおもった。だけどそれが独りよがりになっていないのは、この「八月」と「鉄鎖」の間柄である。八月は死者のことを思う重くれた月でもある。かつてあった戦争を思い起こし死者をとむらい人間の心が暗さへと傾斜していくようなそんな月でもある。その八月の日ざしの光を見たときに作者が観念的に鉄鎖の匂いを思い起こしたのか、あるいは何かの鉄の鎖に八月の光が当たったときにふっとその匂いが作者の鼻先をかすめていった、そのことを詠んだのか。いろいろと考えられるけれど、そうであったとしても、この一句は、八月にこめた作者の思いが立ち上がってくる一句だ。鑑賞するのがむずかしいけれどどうしても立ち止まってしまう一句だ。「八月のひかり」がいい、視覚から嗅覚へと八月がより現実の手応えとなっていく。 真つさらな朝ゆきわたる雪野かな これはわたしの好きな一句であり、軽舟主宰も序文でふれ、作者も自選している。気持のいい一句だ。朝の雪野の風景を詠んでいるのだ。雪はやんで朝日がきらきらと雪野いちめんにかがやいている。純白な穢れない朝の雪景色だ。この句の素敵さは、「真つさらな朝ゆきわたる」である。「朝がゆきわたる」という措辞が抜群だ。晴れ晴れと立つ作者の気持ちもみえてくる。「ア」行の音が一句を開放的にしており広さも感じさせる。読み手もまた朝の雪原に解放されていく、そんな気持になる一句である。 ほかに、 敗戦忌仰向けに寝て腹鳴れり 有史より先史明るき木の実かな 海光にざらつくトマトもぎにけり 奈良に移り住んで、誰から勧められたわけでもなく俳句を始めた。歴史と風土に触発されたと言えば恰好もつくが、特に創作への意欲が高かったわけではなく、興味の向くままにたどり着いた場所が俳句だったというべきだろう。今となっては奈良の俳人として見られると少し面映ゆい。 十年後に句集を出すとは想像もしなかったことである。この間、句会を通じて個性的な人々との出会いが多くあり、私の身のまわりの環境も内面も大きく変わった。 内面で最も変わったと思うのが時間に対する感じ方だ。それまでの時間は直線的に進み、その有限性に追われながら消費していた。目に見える形で円環的に現れる季語を意識するようになると、月日が過ぎるのが楽しくなり、年月がとても長くなった。この感覚は俳句で得た奇貨だと思っている。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 本句集の装釘は、泉本亜依さん。 「長い付き合いの泉本亜依さんにデザインしてもらった装丁はとても嬉しく、感慨深いものがある」とあとがきに書かれているように、桐山さんにとって親しい方である。 また、桐山さんの良き理解者でもあるのだろう。 作品とよく響きあったブックデザインとなった。 金箔の用い方が新鮮でインパクトがある。 山焼の匂ふ華厳の闇深し 山焼の句にはとりわけ感服した。「華厳の闇」にこの世の一切の真理を蔵して修行者を迎える厳かさがある。奈良仏教を代表する華厳宗の総本山が東大寺。ならば山焼は若草山か。張り詰めた闇にも山焼の匂いがこの世のなつかしさを添える。(小川軽舟/序) 桐山太志さんより、上梓後のお気持ちをうかがった。 (1)本が出来上がってお手元に届いたときのお気持ちはいかがでしたか? 軽い気持ちで始めた俳句が句集を出すまでになったと思うと感慨深く、それが手にあるのは不思議な気持ちもありました。 (2)初めての句集に籠めたお気持ちがあればお聞かせ下さい 10年の集大成なので時系列に並べ、作風の変化も含めて味わってもらおうと思いました。 (3)句集を上梓されて、今後の句作への思いなどございましたらお聞かせ下さい。 第一句集とは印象が違うと言われるような俳句作りに挑戦していきたいです。 昨年の12月に上梓の句集『まなこ』の著者の椎名果歩さんはお連れ合いである。 「独身貴族を謳歌しながら俳句に打ち込むと見えた桐山さんは、いつの間にか鷹新人会仲間の椎名果歩さんを見初めて生涯の伴侶とした。椎名さんは結婚とともに東京から奈良に居を移した。奈良の風光は二人で見ることによって新鮮さを増したことだろう。」と軽舟主宰は序文に書いておられる。 桐山太志さま ご上梓おめでとうございます。 「耳梨」という句集名が新鮮でした。 椎名果歩さまとお二人でさらにご健吟にはげまれますように。 昃りて匂ふ寒さや切通 桐山太志 ひょっとして桐山さん、嗅覚がとても鋭いのでは。。。。
by fragie777
| 2023-12-11 21:11
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