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12月7日(木) 大雪(たいせつ) 旧暦10月24日
ご近所に咲いていた山茶花。 「すみませ~ん。遅れてしまって!」 と言いながら、わたしはいきおいよく歯医者さんのドアーをあけた。 歯の定期検診の日なのである。 「あらー、yamaokaさん! 予約は今日でなくて、明日の10時ですよ」 笑われた。 またか。。。。 これで何度目となるだろう。 ほんとに学習能力のないyamaokaである。 気をとりなおして、新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装帯あり 204ページ 二句組。 著者の箕輪カオルさんは、昭和21年(1946)岩手県一戸町生まれ、現在は千葉・我孫子市在住。平成13年(2001)「鴫」入会、平成15年(2003)「鴫」同人、平成25年(2013)鴫新人賞受賞、平成27年(2015)鴫賞受賞。俳人協会会員。本句集は平成13年(2001)年から令和4年(2019)までの作品を収録した第1句集であり、「鴫」の高橋道子名誉代表が序文を寄せている。 序文を抜粋して紹介したい。 樹木や花を詠むとき、カオルさんの、さりげないようで緻密な言葉選びの力が存分に発揮される。 樅の名に太郎と次郎あたたかし やぶがらし花咲きてよりいたはらる いちどきのむらさき淋し花菖蒲 散るときは花底たたむ木槿かな 新しき今を重ねて落椿 逃げやすき夕日とどめて烏瓜 人知れず屁糞葛の花ざかり 日のおよぶ花にあらねど延齢草 さらりとした句柄、まるで話しかけるようなこれらの句には、対象へのひと通りでない慈しみと敬意が感じられる。こうして詠まれた木や花たちはきっと喜んでいるに違いないし、読者もまたしみじみと心癒されるのだ。 本句集の担当はPさん。 大きこゑ大き筍もて現るる 芋虫の重たき音に落ちにけり あやまる気さらさらなくてソーダ水 鳳仙花しづかにこぼれゆく記憶 ゆりの木に大き涼しさありにけり 芋虫の重たき音に落ちにけり この句、まず何かが落ちた音に気づいたのではないか。足元あたりにポトリと落ちて地面を響かせた。みるとなんと芋虫である。まだ毛虫にならない以前のつるっとした肌触りのヤツである。その音のもつ重量感に驚いたのである。で、「重たき音」が生まれたのだ。シンプルな一句であるけれど、芋虫の存在感はたっぷりとあって、地をとどろかせたのだ。地面の固さも見えてくる。毛虫となったらこうはいかない。ふわりと地上をなめるように落ちるのだ、きっと。 あやまる気さらさらなくてソーダ水 「ソーダ水」って、人の気持ちをたくして詠みやすい季語なんだろうか。〈ソーダ水言訳ばかりきかされぬ 楸邨〉とか。好意的というよりややとんがっている気持だ。掲句もそう。ソーダ水を介して向き合っている人間とはたぶん緊張関係にある。本来なら誤るべき状態におかれている作者なのだ。しかし、強気である。ソーダ水の透きとおった威勢のいい青、そして炭酸水ののど元を通過する刺激、ソーダ水は圧倒的に作者の味方とおもえてくる。で、一気にストローでこうぐいっと飲んで、さらりと話を切り替えたいところ。このソーダ水のきりりとした爽やかさが相手のこだわりを解消してくれるだろうって、この作者の強気、うまくいったのだろうか。。「さらさらなくて」の措辞が「ソーダ水」と響きあっている。 まづ栞紐整ふる初日記 本句集の二番目におかれた一句。なんかいいなあ。新しい年をはじめるにあたって買っておいた日記を開いたのである。そしておもむろに書き出すのではなくて、日記の栞紐を整えたのである。日記も簡単なノート風のものではなくて、ハードカバーのしっかりした丸背の栞紐がついているものだ。作者が日記をかくことをいかに大切なものとしているか、この一句からみえてくる。つまりは日常を丁寧に生きている作者像ともなる。この細やかな仕草が粛々とした気配を呼び起こし、あたらしい年に向き合う作者の心ばえがみえてくるのだ。栞紐も喜んでいることだろう。 かたまりて荷物のやうな小白鳥 この一句、序文にもとられていないし作者の自選句にもない。わたしがひとりおもしろいと思って選んでみた一句である。つまりは、この「荷物のやう」という比喩がいいのかわるいのか、ということになるんだろうけど、しかも白鳥というまあ、白くてそれなりに人が思い入れをする鳥である。それをぶっきらぼうに「荷物」と詠んだところにインパクトがあった。なんとも素っ気ない言いざまであるが、白鳥がかたまって動かないでいるときって、そう、荷物がごろごろ?って思ってもいいかもしれない。つまり、小白鳥と荷物との比喩の距離である。ちょっと思いつかないような、その距離は遠いと言ってもよい、だからおもしろいのかも。 タクシーは椿へ走る島走る スピード感にみちたこれもおもしろい一句だ。前書きはないのだが、椿の花でゆうめいな大島を観光されたときの一句ではないかとわたしはおもった。観光の句として島への挨拶句としてもかなり変わっている句だ。下五の「島走る」は、島が走るのではなくて島をタクシーが走っているのであるが、島も走っているような斬新な感覚があってわたしは好き。椿の咲き満ちた島、その島へのかっこいい挨拶句であるとおもった。椿をこころから讃仰している。 校正のみおさんは、〈春寒の気休めに持ち歩く飴〉「必ず食べるわけではないけれど持っているとちょっと安心する感じ、分かります。」と。 「旅人の木」に会ふ旅の温室に 句集名はこの一句からとりました。千葉市花の美術館での吟行句です。 句集名とするにあたり、もう一度この木を確かめたくなりました。あいにく、千葉市花の美術館は臨時休業中でしたので、筑波実験植物園を訪ねました。丁度、居合わせた園の方に話を聞くことができました。 「旅人の木は、日本の芭蕉とは違って、ゴクラクチョウに似た白い花を咲かせる。どうして旅人の木と呼ばれるかというと、一つは、東西に扇形に広げる木で旅人がそれで方向を判断した。もう一つは、葉柄に溜まった雨水を飲んで喉の渇きを癒した。」等々、詳しく話してくれました。その上、収穫した貴重な種子を見せてもらいました。コバルトブルーの宝石のように美しい色です。 吟行という旅先で、旅人の木に出会った偶然に一句を得ることができました。句を作るのはいっときでも、そこに至るまでの時間は楽しくもあり、大切にしたいことです。(略) 俳句を詠むことで、自分の気持ちと向き合い、それが元気の助けにもなってきました。これからも句友のみなさんの力を借りながら、俳句に親しんでいきたいと思います。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 本句集の装釘は君嶋真理子さん。 すっきりした出来上がりとなった。 見返しのグリーンが華やかである。 表紙。 扉。 花布は、金。 栞紐は薄グリーン。 山の日を大きくのせて朴の花 俳句は自然、とりわけ日本の四季と深くかかわる文芸である。カオル俳句はそのかかわりを今後もまず大切に、ますます句境を深めてくださることと信じている。(高橋道子/序) 上梓後のご感想をいただいた。 金色でありながら、色合いが統一されていて上品に仕上がったと思いました。 箕輪カオルさま。 ほんとうに品良く仕上がったとおもいます。 見返しの緑が本を美しく引き締めていますね。 ご上梓おめでとうございます。 しろがねの雲より日差し枇杷の花 好きな一句である。 いま、枇杷の花のさかりだ。
by fragie777
| 2023-12-07 18:50
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