ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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細部にものがたりをやどしつつ。。ひかり秘めたる。。

11月2日(木)  旧暦9月19日



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雨に濡れた野菊。


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すでに雨は上がっていたが、この日の野菊はぐっしょりと濡れていた。





「ふらんす堂通信178号」がそろそろお手元にとどくころであると思うが、発送でとんでもないミスがおこってしまった。
以下は、発送部(?)よりのお詫びです。


●ふらんす堂通信178号を御寄贈している皆様へお知らせ

名簿を製作する段階で「御寄贈」の方の御住所と御宛名が一部ずれてしまい、御宛名が違う方の「ふらんす堂通信」が投函されてしまう事例が発生しております。
通常は御宛名が違うと投函されずに戻って参りますが、戻らずに投函されてしまうことがあるようです。
ご迷惑、ご心配をおかけして申し訳ございません。
何卒よろしくお願い申し上げます。


「友の会」の皆さまは大丈夫のようです。
今朝は問い合わせの電話を何件かいただき、あわててしまった私たちである。





新刊紹介をしたい。


川原真理子句集『ひかり秘めたる』



細部にものがたりをやどしつつ。。ひかり秘めたる。。_f0071480_16414977.jpg
四六判ハードカバー装透明紙掛け 194頁 二句組

著者の川原真理子(かわはら・まりこ)さんは、1958年(昭和33)東京生まれ、東京都・豊島区在住。2010年(平成22)の夏に初めての句会に参加。秋に「銀化」(中原道夫主宰)に入会、2014年(平成26)「銀化」同人。現在、「銀化」同人、俳人協会会員。本句集は第1句集であり、中原道夫主宰が序文をよせている。13ページにおよぶ序文より、抜粋して紹介したい。

作者の確かなものの把握、観察眼がまた優れていると思われる句をいくつか掲げる。

 くれなゐをはつかに抱けり蒸鰈
 懸大根晴れ晴れと村塗り直す
 冬凪や伊根の舟屋に灯の二列
 絵硝子に日矢は染められ弥撒始

蒸鰈の句は見事、福井は小浜の朝市辺りに並んだものを活写したか。〈くれなゐ〉と〈はつかに〉の和語にのせて見事に再現、食べ物の句は旨そうにと言う鉄則通りに仕上げている。ああ、若狭の蒸鰈一枚焙って、銚子一本付けてくれないかと、所望したくなる。若狭繋がりで丹後半島にでも行ったか[伊根の舟屋]そして[弥撒始]の二句などはこの句集に間違って紛れ込んで来たような、真っ当な写生句である。が、ほほほ、このくらいのところは一応出来ますのよ、と澄ましているところなのかも知れない。

 身の内に奔馬一頭春疾風

この一句を見ても、彼女の俳句に対する並々ならぬ情熱が、解ろうというもの。奔放不羈に生きて来た人を今更縛り付けようなど、どだい無理な話なのだ。

中原道夫主宰は、言葉をつくして川原真理子さんの俳句について語っておられるが、ここではわずかな抜粋にとどめる。

句集名の「ひかり秘めたる」は、〈渦の中ひかり秘めたる蝸牛〉による。

本句集の担当は、文己さん。

 籘椅子にささくれひとつ昼の月
 ただならぬ髪型であり小鳥来る
 風邪引いて上司が魚に見えにけり
 沈み込む指の熱さや苔の花
 日向ぼこ猫の枕となりにけり
 厄災の始まりとなる福袋
 私のトーテムは猫初茜

「句集制作中に、飛び出してきた黒猫ちゃんに躓き転んで、 骨折されてしまった川原さんを思いました…。
最近やっと松葉杖を卒業されたそうです。」と、文己さん。
骨折されたと伺っていただ、よもや、黒猫に躓かれたとは。。。。

 
 ただならぬ髪型であり小鳥来る

句集全体にそこはかとないユーモアがただよっている句集である。この髪型いったいどんなだったのだろう。寝起きのままのすさまじい髪型?いやそれだったら当たり前か、もうすこし気をいれてあえて前衛的にこしらえてみた「ただならぬ」髪型とわたしは考えたい。それが鳥の巣のようであるなんてしたら、つまらない洒落となるからわたしの好みではない。もっとこう神々しいまでの、空に挑戦するかのような髪型、やって来た小鳥も思わずたじろぎつつ拝してしまうような髪型か。ああ、そんな髪型だったら、わたしもいつかしてみたい。しかし、やってみたところで短髪なので、鳥の巣になるのがせめてというところである。この一句「であり」に作者の心の落ちつきと自信があって、そこがいい。どんな髪型をしていたって小鳥は来てくれる。それも嬉しい。

 風邪引いて上司が魚に見えにけり

文己さん、おもしろい一句を選んだな。わたしは読んでいて気づかなかったけれど、こういう句もあったのかと。川原真理子さんは、茶目っ気のある方で、つねに自身をとりまく現実からすこし距離をおいて、虚実の間(あわい)をおもしろく見ておられる方なのではと。この一句なども、実はほんとうに風邪をひいて頭が朦朧とし鼻水になやまされつつある自身が捉えた上司の姿が、一瞬魚にみえたのかもしれない。しかし、つねに現実に心身をすべてを明け渡すことなく5ミリほどの距離をおいてみている作者だからこそ、捉えた一句なのではと。
「人」が、でなくて「上司」という具体性がおもしろい。

 柚子かぼす区別のつかぬ君が好き

「この句集、ページを捲ってまず気が付くのが[恋]の気配。」と中原さんが序文に書いているように、この句集には大人の女性の恋愛感情や恋愛模様が多く詠まれている。〈惜しむべし春とをとこの愚かさを〉という一句は、中原道夫選20句のうちの一つである。たくさんある恋句のなかで、あえて好きな一句を選ぶとしたら、掲句かな。この「君」は文脈上たぶん男性であろう。柚子とかぼすの区別ってつけられます?わたしはどうにかつけられる。かぼすとすだちは今年学んだ。(今更って言わないで…)まあ、この男性そういうことに恬淡とした人なんだろう。いいんじゃないですか。きっと川原さんはその区別がちゃんとつけられる方なんだろう。だからこそ、つけられない人を愛おしいって思うのだろう。という考えは月並み?ふたりともわからなくて、どっちがどっちなんて言って笑い合っている関係も全然わるくない。柚子とかぼすの区別を話題にするというのは、やはりそれなりに生きて来た人のこだわりかもしれない。

 背信を嗅ぐ汕頭(スワトウ)のハンカチに

これも恋愛にまつわる一句である。「背信を嗅ぐ」の上五の措辞が劇的ななにかを感じさせる。ここから悲劇的な物語がはじまりそうである。「ハンカチ」が季語であるが、ただのハンカチではない。「汕頭(スワトウ)」のハンカチである。知っている人は、わかると思うがハンカチの一級品、刺繍が凝っていてすばらしくこの上なく上品なハンカチである。マダムと呼ばれるようなご婦人が似合いそうな、そんなハンカチだ。デパートで手にしたことがあるが、こういうのは似合う人間とおよそ似合わない人間がいて、わたしは後者であると踏み、しかもべらぼうな値段であるので即、諦めた。しかし、素敵であることは間違いない。そんなスワトウのハンカチを使う夫人(値段から言って若い女性ではないと)に、背信の匂いがするなんて、ああゾクゾクする。三島由紀夫の小説に出て来そうな女性である。やや昭和の匂いもしないでもないか。「ハンカチ」の季語から、恋愛劇を巧みに想起させる一句だ。

 絵硝子に日矢は染められ弥撒始

これはわたしの好きな一句である、カトリック教会における礼拝堂の様子を、美しく立ち上がらせた一句である。中原道夫主宰も序文にとりあげて「真っ当な写生句」と評している。ステンドグラスをとおして日が礼拝堂に差し込んでいる。弥撒始めとあるから、まだかたい朝の光なのだろう。その日ざしを「日矢」と叙し、ステンドグラスを通してまっすぐに差し込んでくる様子をとらえた。しかもステンドグラスの色をまとってまさに恩寵の光でもあるかのよう。しかし、この一句そのような感情移入はなさず、見えたものを直裁に詠んでいるゆえに、景はクリアである。そして「弥撒始」という言葉がやさしい響きをともなって上五中七を受け止めている。


校正スタッフの幸香さんは、「〈山羊の角握る手のひら汗ばみぬ〉に特に惹かれました。」と。


おなじく校正スタッフの市原みおさんは、「〈学校を退めて来たよと赤蜻蛉〉の句に惹かれました。「赤蜻蛉」が秋の明るさと淋しさを両方感じさせて、好きです。」と。
 

「俳句を始めたきっかけは?」と聞かれれば、「仕事です」と答えている。
その昔、ラジオ番組を作っていた。無趣味な中高年のために、新しい趣味への敷居を下げる、初心者のための番組を作ることになった。オペラ、洋酒、ジャズ、落語等に加え、当時の上司の趣味で俳句もリストに加わった。
いざ、俳句の放送回が近づいて来た。書籍はあれこれ読んだものの、今一俳句の楽しさのイメージがつかめない。件の上司に句会を経験したいと訴えたところ「それでは自分が参加している句会に連れて行ってやろう」と言う。
これが「銀化」と、中原道夫主宰との出会いであった。(略)
この句集に収めた句は、主宰の選を経て結社誌に掲載された十年間の句から、さらに絞り込んでまとめたものだ。最初に出た句会が「銀化」でなかったら、この本は生まれなかった。

「あとがき」を抜粋して紹介した。



本句集の装釘は、中原道夫さん。
装画は、黒井健さん。

スマートに美しく仕上がったが、大変凝った一冊である。



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カバーに透明紙がかけられている。
透明紙には黒インクで印刷がされている。


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透明紙をはずすと、


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さらにカバーをはずすと、


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表紙。
文字は黒メタル箔。


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見返しにはあざやかな色。


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扉。


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花布は、うすクリーム。
栞紐は、グレー。

本句集には、最後に「俳句の国のアリス」という章がある。
10ページの連作形式になっている。


その頁は、ちょっと特別である。


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各頁二句ならんだ俳句の頭の部分は、


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こんな風な説明が末尾にある。

連作「俳句の国のアリス」に寄せて

結社誌「銀化」の企画「同人テーマ詠」に寄稿。
前半はルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」、後半は「鏡の国のアリス」から想を得て、俳句の国に迷い込んだ自分自身を重ねた。
二十句の頭文字を順に拾うと、「俳句の国のアリス 銀化中原道夫賛」となる。

なんとも凝ったはからいである。

しかも、この句集、印刷の色は墨ではなくて、オリーブ色である。
それも中原さんのご希望だった。

スミ刷りよりも全体がやわらかく仕上がり、装画とよく響きあっている。



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ある種の才能のある人というのは、何処か過剰な処があるもの。この過剰さが、なりを潜めたとき、どういう立ち姿になるのか今は一寸想像がつかない。多いに悩み尽くして欲しいものだ。(中原道夫/序)




川原真理子さんに、ご上梓後のお気持ちをうかがった。

「あなたの本はいつできるの?」
母の一言から始動した句集作り。十年分の結社誌掲載句を振り返るのは、大変ながら面白い作業でした。
「俳句は景を切り取るもの」と言われますが、私の場合は感情や記憶を詠んだ句が多めです。俳句以前に仕事で短歌に親しんでいたせいでしょうか。俳句としては些か「過剰」なのかもしれません。
冥土の土産ができたので、後は余生を楽しむことにしましょうか。更に過剰になるか、削ぎ落とせるかは後の話に。
ペーパーレス時代に句集を出すにあたり、亡き母も大好きだった黒井健さんのイラストをお借りできたのは幸運でした。美しいビジュアルをお楽しみください。


川原さん、このご本をとても気に入られて、ポストカードも作られたのだった。


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素敵なオリジナルのポストカードである。



好きな句をもうひとつ。



 不用品ほど美しき夜店かな    川原真理子








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by fragie777 | 2023-11-02 19:18 | Comments(0)


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