ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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引き金引く指先は、、、、

10月17日(火)  旧暦9月3日


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家のちかくの畑に咲いていた朝顔。


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今日は、俳人・篠原梵の忌日である。

目下、百句シリーズでは岡田一実さん執筆による「篠原梵の百句」をすすめている。
篠原梵という俳人に是非に取り組んでみたいという岡田一実さんの熱心な嬉しいお申し出があったのだ。
すでに原稿は揃っていて目下ゲラ準備の状態である。



 星と星のあひだ深しや木犀にほふ    篠原 梵




今日はそれほど寒くないかと、コートを着ずに玄関をでてあわてて引き返してGジャンをはおった。
やはり風がつめたいのである。
夜はもっと寒くなるだろう。





新刊紹介をしたい。


左官屋宇兵衛句集『イタリー銃(いたりーじゅう)』


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四六判ハードカバー装帯あり 190頁 三句組

著者の左官屋宇兵衛(さかんや・うへえ)さんは、昭和25年(1950)神戸市生まれ、現在は千葉市在住。平成21年(2009)「澤」俳句会入会、小澤實に師事。平成29年(2017)年「澤潺潺集受賞」、現在「澤」同人、俳人協会会員。本句集は第1句集であり、小澤實主宰が序文を寄せている。

タイトルの「イタリー銃」は、〈彫金入りイタリー銃を磨く春〉よりの命名で、著者は「千葉県猟友会」の会員であり、本句集を読むとわかるように狩猟は趣味の域を超えておられるようである。

小澤實主宰の序文は、その狩猟の現場を詠んだ句を鑑賞しており、なかなかすさまじい景について細心な鑑賞をほどこしている。
抜粋して紹介したい。

 鴨二羽を射貫きぬ五ミリ弾ひとつ

「五ミリ弾」というまことに小さな弾丸一つで、一羽ならず二羽までも射貫いてしまうとは。近くにいただろう二羽であるから、おそらく番であっただろう。それを同時に仕留めてしまうというあわれがある。そして、この句で着目すべきは「五ミリ弾」ということば、細部がしっかりとしているのだ。

 彫金入りイタリー銃を磨く春

表題句である。「彫金入り」とあるから、みごとな装飾のある高価な銃だろう。だからといって、単なる飾りではあるまい。春という季節、すでに猟期を終え
ている。多くの鳥獣を得させてくれた感謝と次の猟期でも同じような恵みをもたらしてくれることを願いつつ、銃を磨いているのだ。

 巨躯の鹿ウインチに牽く顎に鉤
 
仕留めた大きな鹿は、人の力では運べない。巻き上げ機を使って、移動させている。「顎に鉤」を打って、ロープで縛っているのだろう。この踏み込んだ描写が、あくまで具体的で、なんともいたましい。

なんとも狩猟の現場とはこういうものかと、目を瞠る感がある。このような句が多く収録されているということも本句集をきわめて個性的なものとしている。
この句集の担当スタッフはPさん。

「とても粋な方で、メールを返すと時事ネタを交えた冗談やユーモアを必ず添えて下さって、いつも楽しくやりとりしておりました。」とPさん。
Pさんの好きな句は、

 指先に皮脂戻り来し春の雪
 雨上がり花菜忽ち光り合ふ
 靴紐を編み上ぐ蛇は穴に入る
 人の幅車の幅と春雪掻く
 コッヘルに煮て野遊びのカレーなる
 野兎の耳は褒美ぞ犬にやる
 茄子採りぬ弓手に温き実を掴み


 野兎の耳は褒美ぞ犬にやる

この句も狩猟の現場のこと。小澤實主宰も序文でとりあげている。「犬が渡してくれた兎の身から、耳二つを即座に切り離し、猟の褒美として、犬に与えたというのだ。犬は食べることを許されて、即座にむさぼってしまうのだろう。」と。なんともいやはやである。小澤さんはさらに「非情な句だが、猟師と猟犬の密接な信頼関係を、兎の耳という「もの」を通して、みごとに描いた。」と鑑賞している。そして「猟の最後の最後がくっきりと描かれる」と。そうか、そのように鑑賞するのか。わたしたちの日頃の動物との関係とはかなり違う関係性が詠まれている。わたしも通常は動物の肉を食しているわけであるが、そんなことは棚にあげて、やはり狩猟という、動物を殺してそれ食すという現場のすさまじさにたじろいでしまう自分がいる。そういう意味では、ある意味新鮮におどろきつつ拝読したのだった。

 茄子採りぬ弓手に温き実を掴み

このような句もあってほっとする。左官屋宇兵衛さんは、畑仕事もされるようであり本句集には、食べることを楽しむ生活者としての豊かな暮らしぶりが詠まれている。この句「弓手(ゆんで)」がいい。「弓手」は、弓を持つ方の手、すなわち左手のこと。弓とあれば狩を連想し、やはり左官屋さんならではの一句であると思う。しかし、茄子をもぐ行為をきわめてやさしい表情で詠みとめた。「弓手」の語彙がもたらす音の効果でもあると思った。

 引き金引く指先のなき手套嵌め

これはわたしの好きな一句だ。そうか、引き金を引く指は先のない手袋で引くのか、この句で知った。この一句、小澤さんも序文でとりあげておられる。「引き金を引きやすい手套が選ばれ、それをつけて非情な射撃がなされるのだ。省略のみごとさと描写の確かさ、その描写は触覚を刺激するものでもある。」と。触覚を刺激するものと記されているが、たしかにこの句を読むと、わたし自身が銃の引き金に指を差し入れたときの、そのヒヤッとした感触を実感するかのごとくである。本句集には、狩猟の場のあらゆるディティールが描かれているといっても過言ではない。狩猟についての散文を読む以上に生々しい感覚を呼び起こされながらわたしたちは俳句によって狩猟体験(?!)をするのである。〈熊の糞径に渦巻く跨ぎ越す〉〈鴨の胸押さへ腸抜く鉄鉤に〉〈獲物熊身に塩振りぬ山に謝し〉などなど。

 渡航せり老母と鈴虫と預け

この句も好き。船の旅へいくのだろう。長旅になるのかもしれない。お母さまの世話をお願いするにあたって「鈴虫」も一緒にということである。お母さまの付き添いあるいは母を慰めるものとして鈴虫が選ばれたのか、それとも、鈴虫を飼っていてその世話もお願いすることになったのか分からないが、「鈴虫」というのが、作者の優しい心根をあらわしているようでいい。「鈴虫」の命のはかなさを大事にするように老母もまた大事にして欲しいという願いがこめられていたのか。船旅の途上にある作者の耳にもこの鈴虫の音色はときどき甦ってきたことであろう。そして老母のことも。母と作者の間によこたわる海原がかえってその思いを深める。

 アンダースローの蜜柑受けたりソファーにて

笑ってしまった一句。家族の誰かが蜜柑を放ってよこした。広い居間なのだろうか、見事なアンダースローで投げられた蜜柑をソファーでくつろいでいた人間(作者か)はしっかりと受け止めた。ほのぼのとした人間関係がつたわってくる一句だ。なによりも「アンダースロー」がいい。蜜柑がやさしく投げられて笑いながらそれを受け止める。そんななごやかな家族間の一風景とも。この句を読んでわたしは、かつてパリーグの「阪急ブレーブス」(古いね!わたしも)に安立というアンダースローの優秀な投手がいたことを思い出した。主戦投手として阪急をなんどもの優勝にみちびいた立役者だった。その投球フォームがすばらしくカッコよかったのだ。きっと左官屋さんは、ご存じだって思ってる。この句を読んで、わたしは即座に安立投手を思いだしたのだった。



私が澤俳句会に初参加したのは、二〇一〇年の澤創立十周年記念祝賀会であった。小澤主宰に温かく迎えて頂いた事を鮮明に覚えている。そして二〇二〇年、澤は創立二十周年を迎え、私は古希となった。此れを機に第一句集を発刊することとした。
二〇一五年に銃猟許可を得て、狩猟の句を作り始めたところ、主宰から今後のテーマとして取組んではどうか、とお勧めがあった。その時点から、他人が余り扱わない魅力的な句材が多いと気付き、両趣味の相乗を目指すようになった。
先史以来、我ら祖先は米作を始めるまで、狩猟・漁労・採集により生活や信仰を培ってきた。不肖の子孫である私も、祖先の魂を受け継ぎ、自然や獲物に感謝する場面を、俳句表現できたらと考えている。因みに祖先と言えば、私の俳号は家祖である兵庫県神戸の左官屋(職業)の屋号宇兵衛を頂いている。

「あとがき」を抜粋して紹介した。


本句集の装釘は山口デザイン事務所の山口信博さんと玉井一平さん。
シンプルでスマートな出来上がりであるが、意匠には工夫が凝らされている。


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白のイメージがまずある。


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タイトルは黒メタル押し、とこどころ開けられた猟銃で射抜かれたような○は、実は印刷ではなく、マルく穴が開けられている。


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わかるだろうか。


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こんな風に。


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背にも。


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表紙の赤が穴から、そして本の淵からみえる。
それが華やかさを引き立てる。


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カバーをめくれば、


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真っ赤な本が現れる。


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見返しは朱。


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扉。


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口絵の頁があって色紙が二点。

 彫金入りイタリー銃を磨く春
 鴨二羽を射貫きぬ五ミリ弾ひとつ

麗子夫人の筆によるものである。



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花布もし栞紐も赤。


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燃えるような赤を宿しつつ清潔な一冊となった。

 

 彫金入りイタリー銃を磨く春


しっかりとしたテーマを持った俳人は強いと思う。本書『イタリー銃』にも確たる芯がある。(小澤實/序)



わたしはタイトルの「イタリー銃」という命名がとても印象的だった。
あか抜けたひびきがあって、しかも俳号が左官屋宇兵衛なんてすべてが粋なおもむき。
しかも版元がふらんす堂なんて、、、
良い、ではありませんか。。



ご上梓の後のお気持ちうかがったところ、すべて俳句でお応えになられた左官屋さん。

(1)本が出来上がってお手元に届いたときのお気持ちはいかがでしたか?

 爽やかや白き第一句集生り

(2)初めての句集に籠めたお気持ちがあればお聞かせ下さい
 
 古希なれば記念碑欲つす稲の花

(3)句集を上梓されて、今後の句作への思いなどございましたらお聞かせ下さい。
 
 傘寿また一里塚なり花の道



左官屋宇兵衛さま

古稀でのご上梓おめでとうざいます。
そして、第二句集は、傘寿ですね。
句稿をおまちもうしあげております。


また、御誌「澤」が20周年をむかえられること、おめでとうございます。
小澤實主宰をはじめ「澤」の皆さまにこころよりお祝いを申し上げます。





 麦酒注ぐ泡三割の掟あり   左官屋宇兵衛



そのような掟があったとは知りませんでした。。。。






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by fragie777 | 2023-10-17 20:43 | Comments(0)


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