ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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甘夏の匂いのしたお母さんなんて、羨ましい。。

6月27日(火)  旧暦5月10日


甘夏の匂いのしたお母さんなんて、羨ましい。。_f0071480_17314910.jpg

家のちかくの早桃。

いい色をしてまことに美味そうであるが、大きさは李ほどである。

甘夏の匂いのしたお母さんなんて、羨ましい。。_f0071480_17315244.jpg

思わず手をのばして「ひとつ……」と思いそうになり、あわてて首を横に振る。


今日は鶯の声で目がさめた。
まことにいい声である。家のとなりの雑木林で鳴いている。
わが家のために鳴いてくれているほどの近さである。(と、こう思うのはyamaokaのいつもの能天気さだけど……)

ずっと鳴きつづけている。

今朝はモーツァルトのピアノ協奏曲№23をかけたのだが、ホロビッツのピアノにまけじと鳴いていた。
本当にそんな感じだったので、わたしは腹筋運動をしながら、笑ってしまった。
そんなに張り合わないでって。






新刊紹介をしたい。


玉井美智子句集『海ほほづき』(うみほおづき)


甘夏の匂いのしたお母さんなんて、羨ましい。。_f0071480_17320071.jpg

四六判ソフトカバー装帯有り 214頁 二句組


著者の玉井美智子(たまい・みちこ)さんは、昭和27年(1952)熊本県天草市生まれ、現在は愛知県瀬戸市にお住まいである。平成17年(2005)俳誌「伊吹嶺」入会、栗田やすし、梅田葵に師事。平成24年(2012)「伊吹嶺」15周年記念賞(俳句)受賞、同年「伊吹嶺」新人賞受賞、平成30年(2018)河原地英武(「伊吹嶺」現主宰)に師事。「伊吹嶺」同人。俳人協会会員。本句集は第1句集であり、序文を河原地英武主宰が寄せている。
河原地主宰は、本句集の魅力をさまざまな観点から言及しておられるが、ここではそのほんの一部となってしまうが、抜粋して紹介したい。

この句集の読者は、さまざまな顔をもつ美智子さんに出会うだろう。すなわち女学生としての、妻としての、母としての、祖母としての、そしてキャリア豊富な保育士としての美智子さんである。日常吟のなかに描かれる家族の姿はいずれも撥剌として明朗で、ときに微笑を誘う。なかんずく小さな子供たちのスケッチは生き生きとして慈愛に満ち、この作者の真骨頂を子供の描写に見出だす人がいたとしてもわたしは異を唱えない。
やや大雑把な括り方をすれば、多様な美智子さんの俳句世界を貫いているのは母性なのではあるまいか。その赴くところは人間にとどまらない。それはいろいろな虫を始めとするありとあらゆる生き物にも及ぶ。それだからこそ、彼らは美智子さんに慣れ親しみ、無防備な姿を見せても平気なのだろう。その意味では、この母性は地母神のそれに通ずる。

 コスモスの風の集まる聖母像
 新涼の入江に白きマリア仏
 一湾の霧の触れゆくマリア像

これらの句もまた天草での吟だが、殉教者たちをあわれみ慈しむマリアと、作者のイメージがだぶって見えるといえば、いささか感傷的な読みになってしまうだろうか。

玉井美智子さんは、天草のご出身と知り納得した。というのは、句集を拝読してあるいはカソリックの信者でおれるようにも思え、いやそうでないかなど、信仰を感じさせるともみえる句が上記のように散見したのである。天草の環境で育ったとしたら、マリア像も身近なものとしてあっただろう。

本句集の担当は文己さん。

 天草の島を眼下に墓洗ふ
 朝凪の青き島影出漁す
 船の揺れ残りしままに髪洗ふ
 故郷の障子開くれば春の海
 空いてゐる神より拝み初詣
 たらひ舟漕ぐ手に重き秋の潮
 甘夏は母の匂ひよ一つ買ふ

「海の近い暮らしや風景が浮かぶようでした。海なし県で育ったので、新鮮な気持ちで拝読しました。」と文己さん。
玉井美智子さんにとって、海はつねに身近なものとしてあったのだ。

 天草の島を眼下に墓洗ふ

気持のいい景だ。天草はたくさんの島からなるところだ。天草諸島とよばれる。この一句は、「天草の」という上五によって、まさに天草諸島を鳥瞰しているような景がひらける。青い海、遠くにみえる島々、その一つに家の墓がある。「眼下に」とあることから、やや高いところに墓はあるのだろう。「天草の島を眼下に」という上五から中七への措辞によって、読者の視線は一挙にスピード感をもって広やかな海の世界から足元の山肌へとしぼられていく。そして「墓洗ふ」という人間の営みに帰着する。玉井美智子さんの今は亡きご両親も眠る墓である。そして島に生きたご両親でである。様々な思いを胸にしながら天草のなつかしい海光を浴びて墓を洗っているのだ。

 甘夏は母の匂ひよ一つ買ふ

この句はわたしもいいなあと思った句である。母親の匂いが甘夏の匂いなんて、なんと清々しい匂いであることよ。わたしの母の匂いは違うな。この一句からも玉井美智子さんが、南国の島育ちであることがわかる、これまで天草を二度ほど旅行をしたことがあるが、柑橘系の果物を育てている家が多かったように思う。〈母見舞ふ蜜柑の花の香るとき〉という句も文中にあって、このときの蜜柑の匂いが著者の心にしみこみ、母への思いと切り離せなくなったのかもしれない。この句をわたしがいいなって思うのは、下五の「一つ買ふ」である。この具体的な行為を詠むことによって、作者の思いに息が吹き込まれたのだ。一つの甘夏がもたらす母のなんやかやをその腕のなかにしっかとうけとめ懐かしむ、いやそれだけではなく、甘夏の爽やかな匂いが作者に母に愛された倖せな思いをもたらしてくれるのだ。

 こほろぎや父の残せし農手帳

これはお父さまを詠んだ句である。この一句をとおして、ある父親像が立ち上がってくる。土に生きた父の武骨な手、実直に書き記してある農仕事のあれこれ、「こほろぎ」の季語がしみじみとした作者の思いをつたえる。あるいは、この季語によってひと仕事をおえて虫の音をひっそりと聞いている父の姿まで立ち上がってくる。この一句、父への思いなど何も語っておらず、ただ、眼前のものを叙しているに過ぎないのかもしれないが、惻々と父親への心情が読み手へと伝わってくる。まことにシンプルに詠んでいながら、奥行きの深い一句になっているのは、「こほろぎ」の季語によるものだと思った。

 はんざきの朽ち葉まみれに生け捕らる

「瀬戸 下半田川」という前書きがあるので、いま住んでおられるところでの一句だと思う。「はんざき」は山椒魚のこと。魚という字があてられているが、動物である。「半裂き」にしても生きているから「はんざき」という名があるそうで、何ともいやはやすごいものだ。形もグロテスクなようなユーモラスなような。そんなはんざきを生け捕りにした。その格闘のさまが、「朽ち葉まみれ」で推測される。まさに目にうかぶよう.生け捕った人間の興奮するさまも見えてくる一句である。リアルな描写と「生け捕らる」という終止形が読者もその場にいるような臨場感を呼び起こす。ほかに〈尺取のくの字のままに落ちてきし〉という一句もシンプルにして闊達な写生だ。〈鴉の子ちくわの穴をのぞきをり〉も好きだなあ。

 
 殉教の島の灯台冬すみれ

ふるさとの天草への挨拶句である。天草は殉教の島としてもよく知られている。「冬すみれ」という季語によって、著者が天草をどう思っているか見えてくる一句だ。灯台の高さ、冬すみれの小ささと可憐さ。厳しい弾圧のなかで流された血。そこで信仰を保ってきた人たち、かすかにひそやかに命脈をたもってきたのだ。〈殉教の島の白百合ひらく夜〉という一句もある。こちらは「白百合」の季語。さまざまな風雨にさらされながらも、汚されることなく毅然としてありつづける殉教の島、作者の心も浄化されていくようだ。


校正スタッフのみおさんは、「〈外は雪ひとりで向かふ手術室〉の句に惹かれました。不安の気持ちと、一方で覚悟を決めている様子と、両方伝わってくるようです。」と。


私は天草の島育ちですが、高校入学時より寄宿舎に入り島を離れました。故郷を離れ住む私に両親はやさしく、無償の愛を注いでくれました。どこにいても心強く、安心して暮らせたように思います。母は些細なことでもいつも褒めてくれる人でしたので、出来ることなら句集『海ほほづき』を見てもらいたい気持です。それから天草での吟行に付き合ってくれ、いつも心配りをしてくれた亡き妹美枝子にも感謝しています。最近は、父母居ればこそのふるさとの感を強くし、時折さびしさを覚えます。
句集を編んでみますと虫の句が多いのに我ながら驚きました。庭の小さな畑は虫の宝庫で、春は青紫蘇が芽をだすとそれを餌にするバッタが次々に生まれます。蝸牛は雨のたびに門を這い、カナヘビは逃げることを忘れ目の前で脱皮したり、木の枝で昼寝をしたりします。青虫は蛹のまま越冬し、雪の重さにも耐え、春には立派な揚羽蝶に。生物の逞しさには感心するばかりです。それでつい多くの虫たちが句材となってしまいますが、これからは様々な季語に挑戦していかなければと思っています。そして四季の美しさを感じつつ、ささやかな日常のなかに詩情を見出して俳句にしていけたらと望んでおります。

「あとがき」を一部となってしまったが、抜粋して紹介をした。


本句集の装釘は、君嶋真理子さん。


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ブルーが爽やかである。


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タイトルは金箔押し。

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表紙。

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見返し。


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 海ほほづき鳴らして母を待つ夕べ



昨年から美智子さんは、「伊吹嶺」の兼題欄の選者も務めている。実作者として、また指導者として、これからも益々活躍してほしい。(河原地英武/序)



句集上梓後の玉井美智子さんより所感をいただいた。


句集『海ほほづき』を手にして私の分身のようで愛おしく思います。
句集が届く日には友を迎える時のようにきれいに玄関を掃いて待ちました。
句集名にした「海ほほづき」ですが、知っている人はどれくらいおられるのでしょう。
子供の頃、流木などに付着して流れ着いた海ほおずきを持ち帰って、口の中で鳴らして遊びました。まず中の卵を取り出すため穴を開けるのですが、穴が大きいと鳴りませんので、鋏を入れる時に緊張したことを覚えています。最近は島の子でもほとんど知らないような気がします。
息子から「第二句集が出せるように元気で頑張れ」と励まされましたので、これからも無理せず俳句と共に歩んでいければと思っています。



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玉井美智子さん





玉井美智子さま、

わたしも「海ほほづき」って知りませんでした。
さきほど、インターネットで調べてその形態をしりました。
宮崎駿のアニメに出て来るようだって一瞬思いました。
ほおずきのように口のなかで鳴らせるのですね。
そうしてお母さまの帰りを待ったのですね。

第二句集刊行をめざして頑張ってください。
そしてまたご縁をいただけいますように。
良き息子さんですね、
よろしくお伝えくださいませ。






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今朝の山梔子の花。


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by fragie777 | 2023-06-27 20:05 | Comments(0)


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