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5月30日(火) 旧暦4月11日
緑がもっとも美しい季節。 さまざまな緑をみせる。 そんな5月も終わろうとしている。 東京は梅雨入りをしたようである。 新刊紹介をしたい。 A5判ハードカバー装帯有り 128頁 著者の月岡一治(つきおか・かずはる)さんは、1946年新潟県上越市生まれ。日本現代詩人会会員。詩誌「アリゼ」同人。詩集は七冊をすでに上梓しておられる。本詩集には、「アリゼ」主宰の以倉紘平氏が帯文を寄せている。紹介したい。 新潟の海近い家の夜空。庭でご夫婦が仲よく満月を見ていると、二階のバルコニーから長男の声が降って来る。どうしたと聞くと、親父たちの声がしたからさと答えが返って来る。長男家族は二階に住んでいるのである。なんと仲睦まじい素敵な日常生活だろう。 本詩集は、我が家族に捧げるというサブタイトルをつけるのがふさわしい。 いや実は、我が妻に捧げるという方がもっと、もっとふさわしい。 美しい虹のような詩集の誕生に心から拍手を送りたい。 「家族への賛歌」と帯の背にある。 本詩集は30編の詩篇からなる。どの詩も家族が登場する。詩集名となった「虹」の詩を紹介したい。 虹 おばあちゃん 大きな虹が出ているよ 雨が上がった空に 大きな虹がかかっていると 小学校から帰ったばかりの孫たち 出てみると 家の前の歩道で 妻と三人の孫が 目のまえの虹に見とれていた 六十六歳 十歳 七歳 四歳 四つの背中 この七色の 空のやさしさをおぼえていられるかな? と いうように 虹は 空のなかへと きえていった 僕は きみたちが家庭を持った とおい日の おだやかな休日の庭をおもっている きみたちが 庭木にシャワーで水撒きをしている 目のまえに ちいさな虹が やさしくうまれる 横には 何歳の子どもがいるのかな? 奥さんの声が 聞こえる きみたち 思いだしてくれないか 昔 おじいちゃん おばあちゃんと眺めた 大きな虹 空が 深くやさしかったこと わたしたちが まだ げんきだったこと こんな風に家族への語りかけで詩はつづられる。一篇一篇がこれからを生きる家族ひとりひとりに手渡されるように。 「虹」と名付けられた詩集。そこには著者の切なる祈りがこめられている。 ゆえに、作者の月岡一治さんは、装丁にこだわられた。 もう一篇詩を紹介したい。 どうしたの? 可哀そうだけど言わなくちゃいけない あんた最近 言うことがおかしいよ 話しかけても 返事が的外れだし 一度専門の医師に相談してみようかねえ 妻は私の目をじっと見て ずっと言わなかったけれど 私 あなたにおんなじことをかんじていたの 話しかけても 聞こえていないこともふえていて ある日 私は不思議におもってきいた おまえ どうして目になみだをためているの? あなたがわたしのなまえまでわすれているから そんな日が ずっとずっときませんように わたしの目になみだが あふれることもありませんように 本詩集は家族とともに生きることの喜びにあふれたものが多いが、このような詩もある。 夫婦ともに老いていくことの残酷さと悲しみ。老いを容赦なく見つめる目もある。 毎日の暮らしの中で、自分のなかに湧く折々の気持ちを書きとめてきました。それを詩と呼ぶことにし、幾つかを集め、このたび新たに一冊の詩集にいたしました。 どの詩も、私たち家族の暮らしをうたったものです。読み返しますと、写真はないけれど、ここにも家族のアルバムがあるのでした。幸せな時間があたえられてきたことに、亡き父母と、目に見えないやさしい大きな力に感謝します。 私は今年、喜寿の年を迎えます。名を呼びあって生活してきた家族とともに喜び、寿ぎたいと思います。高齢になると抱く避けられない感慨が私にもありますが、それはそれ。もうすこし、家族そろって穏やかな日々に恵まれますようにと、心から願っています。 「あとがき」を紹介した。 詩によって「家族のアルバム」を綴ったのである。それもまた素敵なことである。 本詩集の装丁は、君嶋真理子さん。 月岡さんのご要望を見事にデザイン化した。 表紙は白のクロス。 「虹」のタイトルを型押し。 扉。 角背。 すっきりと堂々とした一冊となった。 上梓後のお気持ちを月岡一治さんにうかがってみた。 (1)本が出来上がってお手元に届いたときのお気持ちはいかがでしたか? 美しい装丁の詩集に仕上がってくれて、よかったです。 優れた装丁は、詩の一編一編にそっと寄り添ってくれるから。 (2)最新詩集に籠めた思いをお聞かせ下さい。 詩集を出すたびにそれまでの自分の人生を振り返ります。 両親、妻、こどもたち、孫たち。 家族になって出会って生きていくって、すばらしいことなんだなあ。 このたびの第七詩集が、悔いのない(最後の)幸せに満ちた振り返りになるでしょう。 本詩集の担当はPさん。 以倉紘平先生も「斬新な表紙に感動しました」と仰って下さったそうです。 家族賛歌の詩集でどの御作品にも温もりで溢れています。 いろんな鳥が遊びに来るお庭と窓が羨ましいです。 と、Pさん。 喜寿となられた月岡一治さま。 奥さまとともに、さらにさらにお健やかな日々でありますように お祈りもうしあげております。
by fragie777
| 2023-05-30 19:37
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