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5月14日(日) 旧暦3月25日
朝から雨降り。 で、 愛猫・日向子の許しを得て、見たかった映画を見に行ったのだった。 久しぶりの新宿。 駅前広場より見上げた空。 こんなにどんよりしていても、 やはり好きな街である。 見た映画は、フランス映画の「パリタクシー」。 少し前に新聞評をみて、観てみたいと思ったのだ。 結末がちょっとやりすぎって思ったけれど、なかなかいい映画だった。 人に媚びないフランス映画としては、結構サービス精神に富んていた。 92歳の老女と中年のタクシー運転手との間で交わされる会話が中心に物語はすすんでいく。 パリの街並みがいろいろと映し出されるのも懐かしくあの空気感が甦ってくるようでそれも良かった。 一緒に見た人間は、 「いかにもフランス映画らしい」って言う。 「どうして?」って聞くと、 「女性の老いを美しく描いているから……」と。 ああ、 そうかも。。。 会話も気が利いているし、老いをどう描くか、邦画だったらもう少し暗い出来上がりとなるかもしれない。 なかなかすさまじいエピソードが織り込まれているのだが、後味は悪くない。 運転をしながら家族からの電話にこたえるタクシー運転手のセリフがいい。 「美人? うん、92歳の美しい女性だ」 わたしもさらに年老いていずれば死んでいく。 そしてわたしはいまなお母とよばれる存在でもある。 家族ってなんだろう。 ふっとそんなことも思った。 このブログを家で書き始めたとき、歌人の加藤治郎さんの著書『家族のうた』(ふらんす堂)が本棚にあったので手にとってみた。 いろんな家族のありようが詠まれているが、たとえば母を詠んだ歌、そんなのをつらつら見ていたら、 次の短歌に出会った。 ああ母はとつぜん消えてゆきたれど一生なんて青虫にもある 渡辺松男 こんな風に逝きし母を詠むっていいな。この歌の世界は今日見た老女にも通じるものがある。息子は先に死んでしまっているが。 この短歌、悲しいけど清々しい。 加藤治郎さんの解説は以下のとおり。 母の死を歌う。これほど大らかな挽歌は、かつてなかった。「消えて」に注目したい。母は素粒子となって飛散してゆくかのようだ。下句に驚くのだが、ここに到るまでの悲しみの深さは計り知れない。青虫は、宇宙の数限りない生命の一つである。そして、宇宙の中で生命は等価なのである。そう思うとき、不思議と安らぎさえ覚えるのだ。挽歌というカテゴリーを超えてゆく生命讃歌なのである。(『泡宇宙の蛙』平成十一年刊行) 映画館はかなりの人で、お客の年齢層も幅があった。
by fragie777
| 2023-05-14 19:20
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