ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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ボク治りますかの文字消えず、、、

3月28日(火)  旧閏暦2月7日



花冷えの一日となった。

しかし、木々はまさに芽吹きの時だ。

わが家の狭い庭の木々も芽吹きはじめた。
芽吹きのいろってほんとうに綺麗だ。


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令法(りょうぶ)の木の芽吹き。



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こちらはえごの木。

雨にぬれていっそうかがやく。

数日でどんどん変わっていく。
ため息が出るような一瞬のいろ。
(夜の月明かりに見上げる芽吹きのいろもすてきだ)





朝、仕事をしているとなにやら、騒がしい。
みな、窓の外をながめている。

「なになに」って聞くと、どうやらふらんす堂のお向かいの餃子屋さんにテレビの取材が来ているらしい。

「お笑い芸人がいますよ」ってスタッフ。
ふらんす堂のスタッフはわたしをふくめてみないっぱしのミーハーなので、全員で窓辺からお向かいを覗き込む。


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こんな感じのひとだかり。

お笑い芸人さんて、誰だと思います?


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わかるかしら?

「トムブラウン」ですって。(ふたりが入っていくのわかります?)

スタッフの一人がツイッターでそのことをツイートすると、お笑い好きな友人たちから「いいなあー」という反応。

しかし、下りて見にいくスタッフもおらず、しばしお向かいを眺めていたのだった。






新刊紹介をしたい。


頓所友枝句集『秋へ書く手紙(あきへかくてがみ)』



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四六判ハードカバー装帯有り 210頁 2句組


著者の頓所友枝(とんしょ・ともえ)さんは、昭和24年(1949)東京・町田市生まれ。現在は葛飾区在住。平成4年(1992)高校のPTA句会に参加したことにより俳句をはじめ、平成5年(1993)NHK学園にて能村研三に師事。平成6年(1994)俳誌「沖」入会。能村登四郎、林翔、両師に師事。平成25年(2013)「珊瑚賞」受賞。現在「沖」同人、俳人協会幹事。本句集は、第一句集『冬の金魚』に次ぐ第二句集となる。帯文を能村研三主宰が寄せている。
帯文を紹介したい。

 来し方に返り点欲し黒海鼠
 子の逝くや捲る頁を冬にして
 初時雨ボク治りますかの文字消えず

交通事故に遭遇した息子さんは遷延性意識障がいとなり、長い闘病生活を送った後黄泉へ旅立たれた。来し方にあの日あの時が無かったらと返り点を求めた万感の叫びである。逆縁の悲しみを胸に秘めながらも、人間の温かみが滲み出るよう句作に励んでおられる。

帯文でも記されているように、著者の頓所友枝さんは長い10年以上の介護のはてにご子息を失われるという悲痛な経験を余儀なくされた方だ。本句集の二章「ボク治りますか」には、介護のはての別れとその後が中心的に詠まれている。ご子息を失ったというおおきな悲しみはやがて静かな悲しみとなってこの句集を貫いている。タイトルとなった「秋へ書く手紙」も、「ボク治りますか」と言い残して死んでいったご子息への手紙なのだろう、きっと。

本句集の担当は、文己さん。

 嘘ひとつ子につき通すクリスマス
 あたたかやベンチひとつが吾が陣地
 大寒が両の踵に来てをりぬ
 水鉄砲母の帰りを待つてをり
 冬晴や日本橋より歩き出す


 大寒が両の踵に来てをりぬ

この一句は、文己さんのみならず校正スタッフのみおさんも好きな一句としてあげている。「厳しい寒さの中で、痛いくらいに冷えている踵が思われます。」とみおさん。冬のもっとも厳しい寒さをいったいわたしたちはどこで感じるか。ひとそれぞれかもしれないが、たとえば鼻の先とか、指の先とか、耳朶とか、そのへんは想像の範囲である。ここで詠まれている「踵」はちょっと予想外だった。しかし、こう詠まれてみると、ひどく納得してしまう。鼻の先とか指の先とかは、言ってみれば大気の寒さである。「踵」は違う。大地の凍れる寒さが踵からじんじんと上ってきて、やがて、それが人体を制圧していく、そんな寒さだ。とくに身体の後ろ側が寒い、って感じません? 前だったら「おお寒い!」なんて言って、屈んだり前を抱きすくめたりできるけれど、人間の身体の後ろ側って無防備である。できることといったら踵にやってきた大寒を「寒い!寒い!」って飛び跳ねたりすることぐらいかしら。大寒に踵をつかまれたら、もう致命的かも。。。

 あたたかやベンチひとつが吾が陣地

ベンチがおかれている場所って、冬や春先などはよく日の当たるところが多い。そしてベンチのあるところって、決まって木々が植えられているので、夏の暑い季節には木蔭ができて涼しいのである。また秋の季節は美しい紅葉を堪能するなど、つまり、人間が安らうように置かれていると、ベンチ派(なにもしないでベンチにぼおーっとすることが好きな人間、つまりわたしのことであるが)は思うのである。この作者もまた、ベンチに坐ってその温もりを味わっているのだ。ただ、作者にとってベンチは日々の戦いのための心身をやしなうところでもあるのだ、単にぼおーっとするのみにあらず、これから荒波にのぞんでいくためのひとときの陣地なのである。だからこそ、ベンチひとつの暖かさが嬉しくありがたい。「吾が陣地」の措辞なればこその「あたたかさ」なのである。わたしがふっと思いをめぐらしたのは、ご子息の看病に疲れてふっとすわった病院の庭のベンチ、その温もりに心身をやすませ、ふたたびそこから看病へとむかう。そのための「陣地」であるのではないかと。

 煤逃げの十四・五人の映画館

これはわたしが好きな一句である。「煤逃げ」は年の瀬の季語である。「煤払い」を避けて外出することを言う。つまり、年末にしなくてはならない大掃除をさぼって、出かけてしまうのである、家中の者がそうする場合もあるだろうし、家族の冷たい視線を浴びながらトンヅラをしてしまうお父さんだったりもする。著者の頓所友枝さんも大掃除は放棄して、それでは何処へ行くかと考えて、そう遠くへもいけないので近場の映画館にやってきたのだろう。すると、映画館には、十四、五人の煤逃げの仲間がいたのである。この十四、五人がリアルだ。納得できる(?)数字だ。小さな映画館で、多くない座席にポツンポツンと坐って居る人間がみえてくる。事実だけを叙しているのだが、「煤逃げ」の季語が効いていて、十四、五人の人間の心境まで伝わってきそうである。子ども連れなどはぜったいにいなさそう。若者もおらず、多くは中年以降の人間か。。なんて思ってしまうのです。

 梅一輪枝先に声集まり来

この句も景色がよく見えてくる一句だ。「枝先に声集まり来」が巧みであると思う。「声が集まる」という句は見ないわけでばないけれど、一輪だけさいた梅の木は枝先がよく見える。その枝先の梅の花をみあげて人々が春の到来をよろこんでいるのだ。一輪さいている梅もよくみえ、そのまわりに人が集まってきている様子もみえる。なんと言っているかもおよそ想像がつく。咲き始めの梅の季節の様子がよく見える。「人」ではなく「声」と詠んだことで、梅一輪の輪郭も際やかになった。シンプルに叙して上手い一句だ。

校正スタッフの幸香さんは、「〈蟇歩めば気力生まれけり〉の力強さに惹かれました。」とのこと。蟇に「気力」っておもしろい一句だと思う。


本句集には著者の頓所友枝さんによるやや長めの「あとがき」がある。失われたご子息に関するものである。全文を読んでいただきたいが、ここでは一部を紹介するに止めることをお許しいただきたいと思う。

第一句集『冬の金魚』を上梓してより、十年の月日が経過しました。
この十年の間に母や義兄、今の地に嫁してからの友人を見送り、そして平成十七年に交通事故に遭遇した息子を、二十八年に黄泉に見送ることになりました。病院療養を四年、在宅療養を八年近く過ごしたことになります。
 
「遷延性意識障がい」のご子息の看病を通して、回復の可能性にかけつつそこで学ばれたことなど詳細に記されている。その戦いの日々のなかで、俳句をつくり続けてこられた頓所友枝さんである。

元号が令和となり四年の今年は息子の七回忌となります。
先日、上野の不忍池の蓮が赤く色付いているのが目に入り、なぜか息子はもう転生をして、幸福な家族に迎えられているのではないだろうかと思いました。それ以来幼い子を見る度に、息子の生まれ変わりかと思い、誰もかれもいとおしい思いになります。
 もう転生をせしか上野の蓮紅く   友枝
俳句という表現方法と巡り合って三十年、先師能村登四郎の句のように、俳句から人間の温かみが滲み出るような句を創りたいと願って続けてきましたが、まだまだ俳句は分からないことが沢山あります。医療関係者の方たちの諦めない精神に学び、もう少し俳句と向き合ってみようと思っています。



本句集の装釘は,君嶋真理子さん。

頓所さんの要望にお応えるかたちでの装丁となった。
タイトルにふさわしい色遣いの一冊である。


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花布は赤。


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スピンは、肌色。



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 初時雨ボク治りますかの文字消えず

 ブルーブラックインク秋へ書く手紙



著者の頓所友枝さんにご上梓後のお気持ちを伺ってみた。


「秋へ書く手紙」刊行後の雑感

今回の句集名となりました「秋へ書く手紙」は、「ブルーブラックインク秋へ書く手紙」の句から執りました。ブルーブラックインクを購入しその色を見たとき、なんて哀愁の籠った色なのだろうと思いました。青でもない、黒でもないその色に魅かれました。誰かに手紙を書きたいという衝動にかられました。
第一句集『冬の金魚』を上梓してより十年が経ちました。しかしこの先の十年はいささか不安がありますので、これが最後の機会と思い句集を纏めることに致しました。だいぶ前に息子のことを20句にまとめて作句しました際に、主宰から第二句集を勧めていただきましたのが、今になってしまいました。
多くの方から泣いてしまったという声を聴き、読後に重いものが残るのでは、と危惧しておりましたが、ある方が読後は爽やかだ、と言って頂き今胸を撫でおろしております。
今日頂いたお手紙に、あとがきの転生の句で、気持ちが軽くなったと書かれてありました。
皆さんを重い気分にしてしまうのではと、気になっておりましたが先日句会で春風の季語で私の句集を祝って頂きました。私がとても救われた思いがいたしました。
あと、皆さん装丁を褒めてくださいます。最初に素敵な句集と言ってくださいます。これもみな、ふらんす堂様のお力添えです。本当にありがとうございました。




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頓所友枝さん。




 遺されし者の祈りや冬の星



第二句集を上梓されたことによって、あたらしい歩みの日々となられますようにお祈りをもうしあげております。
また、介護の学びとご経験が、同じ苦しみをもつ人たちへの助けとなりますように。

ゆっくりとお話をする機会がありませんでしたが、いつかそのお話も伺いたく思っております。








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今朝の道ばたの白菫。







 

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by fragie777 | 2023-03-28 20:32 | Comments(0)


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