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3月4日(土) 旧暦2月13日
今日は久しぶりに吉祥寺であそぶ。 相変わらず賑やかそしてカジュアル感が懐かしい街である。 途中で吉報がはいる。 この詩集は素晴らしい詩集であるので、本当に嬉しい。 詩人・河津聖恵の力量が遺憾なく発揮された詩集だとおもう。 江戸時代中期に生きた絵師・若冲へのオマージュをこめて書かれた連作詩30篇を収録したものである。 巻末にはそれぞれの詩作品に照応する作品解説が付され、それもまた若冲の絵の細部へと目を走らせ、若冲像とその作品の魅力があらたに読者の目の前に展開していく。 本集より一篇のみ紹介をしておきたい。 最初におかれた春の詩にしよう。 1 霏霏―芦雁図 霏霏ひひ)といううつくしい無音を とらえうるガラスの耳が 多くのひとから喪われつつあった時代 ひとひらふたひら 空が溶けるように 今また春の雪は降りだし この世の底から物憂く絵師は見上げる 見知らぬ鳥の影に襲われたかのように 煙管を落とし 片手をゆっくりかざしながら 雪片ははげしく耳をとおりすぎ ことばの彼方に無数の廃星が落ちてゆく ひとの力ではとどめえない冷たい落下に 絵師は優しく打ちのめされる 愛する者がはかなくなって間もない朝 この世を充たし始めた冷たい無力に 指先までゆだねてしまうと 庭の芦の葉が心のようにざわめき この世はふいにかたむいた 雁がひとの大きさで墜落し 風切羽を漆黒に燃やして真白き死をえらんだ 笑うように眠りかけて指先はふるえる 乾いた筆が思わず 共振れする 霏霏 「見る」と「聴く」 「描きたい」と「書きたい」 ひえびえと裂かれてゆく深淵に雪はふりつむ 眠りに落ちた絵師は ついに胡粉に触れた 骨白に燦めく微塵の生誕を見すごさなかった筆先 河津聖恵さま ご受賞おめでとうございます。 こころよりお祝いを申し上げます。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() なお、「ふらんす堂通信177号」にて受賞特集をする予定である。 今日は吉祥寺のパルコのなかにある映画館「UPLINK」で映画を一本見た。 表題は甘い恋愛もののようであるが、いやいや、なかなかハードな内容で複雑な人間心理を描き出した迫力ある面白いものだった。 韓国映画であるが、ヒロインの俳優はタン・ウェイという存在感のある役者で、わたしは中国ドラマで見て知っており好きな役者だったが、今回さらにいい演技をしていたと思う。男性主演俳優パク・ヘイルもおよそこれまでみた韓国ドラマでは見たことのない役者で澄んだ目をもった色気のある役者だった。 この映画を見たあと夜の吉祥寺を散歩していたときに河津聖恵さんの受賞を知ったのだった。 力のある詩集がこうして賞を取るということは、本当にうれしい。 スパークリングワインで乾杯をしたのだった。
by fragie777
| 2023-03-04 22:44
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