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1月19日(木) 旧暦12月28日
臘梅。 それとも万作? これは臘梅の在来種だそうです。 さきほど教えていただきました。 「園芸種ではなくて、香りが良いですね」と井上京美さん。 園芸種と在来種の違いなんてわたしには、わからないなあ。 寒梅も咲いていた。 こちらは白。 春は近い。。。 今日の毎日新聞の坪内稔典さんの「季語刻々」は、岩田奎句集『膚』より。 日向ぼこ大きな友は疲れけり 岩田 奎 「「大きな友」が多様な読みを誘う。大物の友か年長の友か、疲れているのはその友か、友の相手をする自分か。」と坪内さん。 たしかに大きな友っていったい、わたしは若い友人を思い起こしたりしたのだけど。。そして何故に疲れるのだろう。 新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装帯有り 206頁 二句組 著者の福井靜江(ふくい・しずえ)さんは、1953(昭和28年)奈良県天理市生まれ、現在は京都市にお住まいである。2001(平成13)年「蘭」入会、2013(平成25)年「蘭賞」受賞、「蘭」同人、2016(平成28)年「鳳蝶賞」受賞。俳人協会会員。本句集は、第1句集であり、松浦加古名誉主宰が序文を寄せている。抜粋して紹介したい。 句集名を「朱雀」にしますと靜江さんの声を電話口で聞いたとき、私の心は朱雀のように朱く羽ばたいた。明日香村に守られている有名なキトラ古墳の存在である。この古墳の内部の壁に描かれている四神のうちの一神が「朱雀」である。天の四方を守る神々の名、「青龍」「白虎」「玄武」に比べ、「朱雀」は最も愛らしく美しい。福井さんらしい詩情にみちている。(略) 秋燕に開け放たるる朱雀門 天武天皇の御代の年号に「朱雀」が用いられたのは、すでに中国からの思想が入っており、政治の理想を「朱雀」という語のめでたさに求めておられたのであろう。掲出の句、南を守る神「朱雀」を意識しての上で、南へ帰る燕の安寧を祈りながら詠まれたものである。奈良の平城宮跡に小さく立つ作者。燕の無事を祈りながら、祈りは世界の永遠の平和へとつながる。現在のウクライナの惨状に心を痛めながら、われわれも共に祈りたい。 奈良県出身で京都住まいの福井静江さんらしい、一冊となった。句集が出来上がるまでいろいろと担当の文己さんとこまやかなやりとりがあった。 出来上がった句集を手にしたとき、わたしは(ああ、本当に福井静江さんらしい一冊になった)とこの本の出来上がりを喜んだのだった。 担当の文己さんの好きな句は、 軒先に在釜の旗や桜どき 故郷の匂ひまとうて日焼の子 条坊の残れる畑に葱太る 露地菜売り朝の春泥こぼしけり 土用入くるりくるりと梅を干す 瞼閉ぢ蠟梅の香を抜け出せず 片方の手袋どこで泣きゐるや 在釜の旗、嵯峨の月などの京ならではの言い回しが良いなぁと思いました。 まさに「京なれや」、、 句集を拝読しながら京都、奈良を旅したような気持ちになりました。 と文己さん。 露地菜売り朝の春泥こぼしけり 京の情趣がたっぷりとある本句集であるが、この一句は、そういう情趣を排した句としても成立する。が、きっとここで売られているのは露地栽培の京野菜であるのではないだろうか。この句の魅力は「朝の春泥」である。「春の泥」は水分たっぷりな泥である。露地菜についてきたのだ。ハウス栽培とはちがって泥も水気を含みその泥がついたまま収穫されたのだ。運ばれる間にすこし乾いては来るもののまだしっとりとしている。そんな泥がついた朝取の菜が店頭にならんでいる。人間の手がそれをつかんだときに,泥がこぼれた。その瞬間を詠み止めたのだ。まだ春の寒さの残る朝、黒い土のついた春野菜のみずみずしい青。そこに朝の光が射しこんでいる。清々しい朝の喧噪。そんな人間の生活の一場面を、春泥のついた菜に焦点をあてて新鮮に詠み止めた一句である。 片方の手袋どこで泣きゐるや 手袋の片方を失くした。っていうことはけっこう誰もが経験することだ。わたしなどこれまでいったいいくつ片方を失くしてきたことだろうか。で、その失われた手袋についてであるが、それをわたしはどのように思い出すだろうか。この句を見て、ふっとそんな風におもった。わたしの場合、まっ、失くしたもんは仕方ないわ。と、45秒ほどその手袋を惜しみ、あとは忘れる。まことにドライである。この句の作者は決してそうではない。失くした片方の手袋が、もう一つの手袋を、あるいはその手袋の主を恋うて「泣いているのではないか」と手袋に思いを馳せているのだ。きっととても大切にしてこられた手袋であろう。思うにこの手袋の持主は生きることへの姿勢が肌理細やかで心情の熱いお方であると。粗っぽく物事に対しない、「泣きゐるや」という表現に余韻があり、イ音がつづくのも心の心痛を読者に感じさせる。諦めきれない思いが「や」の語尾でいっそう伝わってくる。 初蝶のどこからとなく二羽となり この一句はわたしが好きな句である。初蝶をみた。春になってはじめての蝶に会うのはうれしいものだ。(あっ、初蝶!)って思い、月並みだけど虚子の〈初蝶来何色と問ふ黄と答ふ〉という句を思い出したりする。(ああ、やっぱ黄色)とか、(黄色じゃないんだな)とか。初蝶をみたうれしさにしばらく目で追う。作者も初蝶を喜んで目で追いかけたのだろう。そしてふっと(あれっ、いつの間に)ともう一羽が現れたことに気づいたのだ。いったいどこから、、、初蝶は飛ぶのがおおかた速い。だから必死に目でおっていても見失うこともある。この句、初蝶にであった瞬間をさりげなく詠んでいるようであるが、いつのまに一羽から二羽となった初蝶にであって、確かな春の訪れを実感しているのだ。「どこからとなく」という措辞に緊張をとかれた心のゆるみを思う。 同じ蝶でも作者の福井靜江さんの自選句は、〈双蝶の白そら高く禁裏へと〉。この句は「両陛下大宮御所にお泊まり」という前書きがある。 三椏や暖簾の白き紙問屋 この一句もいいな。「暖簾の白き紙問屋」が、いかにも京都らしい。東京では暖簾をかけている「紙問屋」さんはもう存在しないだろう。こんな風情は京都ならばこそ。そして「三椏」の季語がとっておきだ。三椏は早春に咲く。歳時記によると古くから上質和氏の原料として栽培されるという。そんな三椏を咲かせている紙問屋。そこにかかっている暖簾の白さが早春のきっぱりとした清潔感をよび、ここで扱われている紙の上質さも呼び起こす。思うに紙問屋さんの暖簾はなんと言っても「白」につきると思う。こんな紙問屋さんには是非に白い暖簾をくぐって行ってみたい。それこそ三椏の咲く季節に。仕事柄、紙には大いに興味あり、なので。 校正スタッフの幸香さんは、「〈美しき言の葉咥へ小鳥来る〉に特に惹かれました。」と。 「蘭」同人で義父でもあった福井洗石子(せんせきし)の影響を受け俳句の世界に入りました。義父は「蘭」京都支部を率いておりましたので、自宅へは常に句友の方々の出入りがございました。導かれるように句会へ参加させていただいたのが平成十三年ごろでございます。 住まいは洛中のど真ん中で行事が多く、生家は平城宮跡や明日香にも近い。これらに囲まれた生活に悠久の時を感じました。 やがて手ほどきをいただきました義父が亡くなり、しばらく俳句から遠ざかっておりました。そんな折、松浦加古主宰(当時)からお誘いをいただき、以来二十年ご指導をいただき今に至っております。お蔭をもちまして句集『朱雀』の上梓にいたりました。 「あとがき」を紹介。 本句集の装釘は,君嶋真理子さん。 句集名「朱雀」について、 題名「朱雀」は四神の一つ。天の四方のうち「南」をつかさどる神獣とされており、墳墓(キトラ古墳)の壁面にその姿をみることができます。 奈良県明日香村は父祖の地。自らの縁の糸が見える気がいたし句集名といたしました。 と福井靜江さんは、「あとがき」に書いている。 カバーにその「朱雀」を配した。 タイトルはタイトルは、ツヤあり金箔。 帯には金銀の箔が散らしてある用紙をつかった。 格調の高さは、この句集に響き合っている。 火をつかさどるという朱雀。 ゆうえに赤のクロス。 赤といっても朱色ではなく、やや黒みを帯びた赤である。 表に押したカラ押しがみえるだろうか。 見返しの用紙は、帯とおなじ用紙。 扉。 栞紐は白。 花布は、金。 幾山野越え来て急かず春の川 句集『朱雀』の一句一句の抱える抒情の深さ。まさに野澤節子の唱える命の証となって多くの人々の心を和ませることと思う。一冊を読み終えたあとの穏やかで満ち足りた気分。靜江さんの人柄が伝わってくるようだ。私自身の心の糧として大切に温めていきたい。(松浦加古・序) 句集上梓後のお気持ちを伺ってみた。 ◆所感 生きてこの世になにを残すことができるか、と問うたとき私にはこの一冊しかない。 社会の役に立つようなこと、褒められるようなことも何も無い。 そんな私に授けてくださったのがこの句集かもしれない。 一冊の句集を編むにあたりどれだけ多くの方々のお力をいただいたかを思うと本当に頭が下がる。 今後自分の俳句の可能性を広げることができるよう探りながら今を詠んでいきたい。支えてくださいました先生方、諸先輩方に今は感謝しかない。 福井靜江さん(中央)。 句友の木村清子さん(左)ときよみずこうさん(右)とともに。 追伸に「おきばりやす」と受験子へ 靜 江 この「おきばりやす」って京言葉でしょ。 よき言葉っておもった。 「頑張れ」っていう意味だろうとおもうけど、もっと相手の心にそっと気持を寄せるようなものやさしさがある。 こんど使ってみようかなあ。。 でも、 きっと (似合わねえ……)っていう顔をされるのがオチだろうな。 「はんなり」っていう物腰、いいなあって思うけど一生縁がなさそうだわ。
by fragie777
| 2023-01-19 19:08
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Comments(3)
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