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1月6日(金) 小寒 旧暦12月15日
バンコク滞在の3日目に行った水上マーケット。 ここは面白かった。 食べ物だけでなくいろんなものが売られており、わたしはここでペラペラした多分男ものの小サイズのシャツを買った。ものすごく安い。そしてド派手。しかし、暑さにもかかわず着心地はばつぐん。 それを着てゴム草履を履き、へらへらと動き回ったのだった。 新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装帯あり 236頁 二句組 向瀬美音(むこうせ・みね)さんの第2句集である。向瀬美音さんは、1960年東京生まれで現在は東京・新宿区にお住まいである。2013年頃から作句を開始し、大輪靖宏、山西雅子、櫂未知子の各氏より指導をうける。 第1句集に『詩の欠片』(2019)があり、『国際歳時記 春』(2020)、『国際俳句歳時記 冬・新年』(2022)の編著者である。現在、「俳句コラム」主宰。俳句大学機関誌「HAIKU」[Vol.1世界の俳人55人が集うアンソロジー][Vol.5 世界の俳人150人が集うアンソロジー][Vol.6 世界の俳人90人が集うアンソロジー]の編集長兼発行人。日本ペンクラブ会員、日本文藝家協会会員、日本伝統俳句協会会員、俳人協会会員、国際俳句交流協会会員、フランス語圏俳句協会AFH会員、上智句会所属、「舞」会員、「群青」購読会員。 こうしてみると日本のみならず、世界を視野にいれての俳句活動である。 本句集に、大輪靖宏氏が序文を寄せている。 美音さんは、外国語学部の出身で語学に堪能であり、卒業後も外国人との接触が多いため、第一句集はすべての句に英訳、仏訳を添えてあるほか、欧文の季寄せも載せるなど外国人を意識したものであった。そして、『国際歳時記』および『国際俳句歳時記』はそれぞれの国の言語で詠まれた句を日本語の俳句に翻訳しての歳時記である。つまり、ここには外国の人に俳句を作ってもらうにあたって、季語がいかに大切かを認識して欲しいとする気持ちが強く出ている。このように美音さんは特に季語にこだわり、外国人の作品であっても、季語あってこその俳句という姿勢を貫いてきたのだ。〔略) 梳る髪に夜の香朧月 やはらかく髪結ひあげて春の宵 黒髪の櫛に軋みし無月かな 香水を一滴をんな取り戻す 香水を変へ恋人を変へにけり このように見てくると、美音さんの句はかなり大胆な試みのもとにあることがわかる。いままでの美音さんの句全体を見渡してみると必ずしも試みが成功しているとは言えないものもあるのだが、そうした不成功を怖れないところが美音さんの特徴とも言える。むしろ、ここからまた何か新しいものが生まれるのではないかという期待が生じてくるのである。 本句集の担当はPさん。 枝先の膨らみ春は光より ときめきは晩年に来よ桃の花 香水を変へ恋人を変へにけり 湖の深さを測る夏の月 日脚伸ぶ紅茶に入るる陽の光 Pさんが選んだ5句であるが、Pさん曰く「向瀬さんを連想させるような句を選びました」ということ。 香水を変へ恋人を変へにけり この一句。ひゃーって思った。やるな、とも。大輪氏も序文でとりあげている。この句、句集の頁をめくっていくとやはり(おお!)って立ち止まってしまう。この句の面白さは、「香水を変へ」が先行することである。恋人が変わったから、「香水を変へ」たのではないのだ。なんということよ。そこが過激でいい。そろそろ恋人に飽きてきたので、ここで新しい香水にして、恋人も新しくするか、って思ったのではなく、逡巡などぜずに、いとも簡単に恋人も変えてしまったのだ。恋人というものが、ハンガーにつるされているごとく、つぎの恋人をチョイスしたのである。「けり」の切れ字がなんともあとくされがない感情を表現している。そう、きっぱりと、ね。「香水」の一句として歳時記にあってもいいんじゃないか。って思った。俳人・向瀬さんの「香水」の季語をもちいた大胆にして実験的な一句かもしれない。 ときめきは晩年に来よ桃の花 この句、このブログで鑑賞しようかどうしようか迷った。だってあまりにもわたしにとってストライクだから。ちょっと恥ずかしい。ただ、わたしの場合、腐R女的次元における「ときめき」であるので、はたからみたらおバカな笑っちゃうようなトンチキな「ときめき」であるが、この一句の場合は、リアル次元における「ときめき」と考えるのが普通かな。そう思うと、「桃の花」という季語が、なんとも可愛らしくて好感度が高い。これが牡丹だったり百合だったりするとすこし生臭い「ときめき」となるんじゃないかしら。まあ、そういう生臭い晩年のときめき(?)があってもそれはそれで恥ずべきことでもないけれど、そういう場合は、「ときめき」ではなく、もっとこうちがう表現があるような気がしてくるのだけれど、どうかしら。 荷風忌やソーヌゆつくり蛇行して この句は、わたしが面白いと思った一句である。永井荷風(1879~1959)が亡くなったのは4月30日。永井荷風という小説家は、わたしにとって心の底がみえにくい複雑な心情をもった人間としてある。中七下五の「ソーヌゆつくり蛇行して」という措辞が、なんともそのわかりにくい心情をたどっているようで、あれれ、わたし間違ってしまった!「ソーヌ」を「ソース」と間違えて鑑賞していたのだ。いま気づいた。「ソーヌ」は、フランス東部を流れる川のことだ。そうか、ソーヌ川の蛇行を思いながら、「ふらんす物語」の荷風をしのぶということは十分有り得るわけで、そうか。。。しかし、「ソース」で鑑賞してしまったyamaokaは、オムレツのようなものにソースをくねくねとかける、そんな場面を思い浮かべ、下町の場末の匂いがしてくるようで、これも永井荷風という人間の情趣をよびおこすのではないだろうか、って思ったのだ。向瀬さま、トンチンカンな勝手な鑑賞を許してくださいませ。 言の葉の少なき手紙雪しまく この一句もきらいじゃない。「雪しまく」の季語が一句を引き締めている。言葉が少ない手紙の行間を雪が吹き荒れる音が充たしていくように、雪の気配があたりを支配している。しかし、作者のこころは、雪が吹き荒れる只中にあって、その言葉すくなき手紙にとらわれているのだ。もうすこし語ってほしいと思っているのだろうか。なにかを切望している作者のこころが見えてくる。しかし、外は雪が吹き荒れるばかりだ。 この句集は私の第二句集である。第一句集は、句の数を抑え、欧文の訳を添え、更に欧文の季寄せも載せた。作り溜めた句をまとめて、季節順に編纂して一集にまとめたのは、この句集が初めてである。 初学の頃は、カルチャー教室で現代俳句系の若手俳人の指導を受けた。現代俳句から入ったからか、二年も経つと、俳句というものが全くわからなくなってしまった。俳句をもうやめてしまおうと思った時期である。そんな時母校で、上智句会とソフィア句会というのものがあると知り参加してみた。そこで初めて大輪靖宏先生とお会いしたのだ。まず、大輪先生の人柄の温かさ、そして包容力、優しさに魅了されてしまった。句会での大輪先生の優しさに溢れる鑑賞は素晴らしく、季語についてとても丁寧に説明をされる。 俳句の闇に迷っていた私の句も採って下さり、素晴らしい鑑賞をしてくださって、私は俳句を続けようと決心した。(略) その後、「俳句コラム」というインターネットを使った国際俳句の会の主宰もすることになった。会員は現在2500人いて、インターネットを使って活動しているので、時空を超えて繫がっている感じがする。毎日投稿される100句近い句を読んでいるうちに、最初の1年はその雑多さに頭も疲弊し身体が少し病んだりもしたが、2年目からは、投句者に対して初めに季語の説明を記載して季語の本意を理解してもらってから句を集めるようになると作品の質が変わり楽になった。 それ以降、この国際俳句のグループ「俳句コラム」に季語をどんどん紹介することを続けていて今では季語を中心に作品がまとまってきている。 その一方で私自身の日本語の俳句も深めようと櫂未知子先生、山西雅子先生に厳しくも愛に溢れた指導を毎月受けている。俳句は座の文学であり、句会に通うこと、吟行すること、歳時記を徹底的に学ぶことの大切さは忘れていない。 向瀬美音さんの国際俳句への情熱的な取り組みをしって欲しいと思い、すこし長いが「あとがき」をできるだけ抜粋した。 本句集の装釘は和兎さん。 タイトルはツヤ消し金箔。 表紙の布クロスは、向瀬さんにふさわしい眼のさめるようなピンクである。 こういう色は誰にでもつかうことはできないが、向瀬美音さんにはよく似合っている。 花布は金。 栞紐は濃い紅。 ほれぼれするような美しい色。 情熱的な色を隠している一冊である。 美音さんは外国語に堪能で、すでに多くの外国人に俳句の指導をしているのだが、これに日本文化、日本文学の伝統を背景として身につければ、まさしく大きく飛躍することが出来よう。〔大輪靖宏・序) 本句集上梓後のお気持ちをうかがった。 (1)本が出来上がってお手元に届いたときのお気持ちはいかがでしたか? 美しい出来上がりで、驚きました。 とても嬉しくて幸せな気持ちになりました。 出版社と私の気持ちがぴったりだと思いました。早速、日本と海外の俳人の知り合いに60冊郵送しました。 日本の句集の美しさを海外の俳人に知ってもらいたいと思いました。 (2)初めての句集に籠めたお気持ちがあればお聞かせ下さい 第一句集が句の数が180句で、英語、フランス語訳を加え、欧文の季寄せを付け加えたので、句集としては中途半端で、いつかきちんとした日本語だけの自分の句集を作ろうと思っていたので、選句に力を入れました。5年間、雑誌で取られた句を中心に集めました。この句集を読んで私という人間が少しでも理解してもらえれば嬉しいと思いました。 飾ったところはなく、素直に自分を表現しました。 (3)句集を上梓されて、今後の句作への思いなどございましたらお聞かせ下さい。 今後は吟行、句会を積み重ねて、自然と一体できる自分を表現した句を作っていきたいと思います。 日本文化、伝統、文学を学んで行き奥深い句を作っていきたいと思います。 向瀬美音さん。 女正月シフォンのドレス買ひにゆく 大ぶりの真珠のピアス初句会 まさにシフォンのドレスや大ぶりの真珠のピアスが似合うマダムである。 タイ旅行で愛用したゴム草履。。。 ここで出すの、ちょっと恥ずかしいかも。。。
by fragie777
| 2023-01-06 20:04
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Comments(2)
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ときめきは晩年に来よ桃の花
今の私の心にとても響きました。佳いお句ですねえ。 いつの年代にもどんな事にも「ときめき」はあり、それはそれで素晴らしいことですが、 晩年に来る「ときめき」には、とても価値があるように思います。 晩年にこそ「ときめき」が必要ではないかとも。 このお句は、これからの私の心の拠り所になりそうです(yamaokaさんおっしゃるところの、私もR女ですので)。
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