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12月21日(水) 旧暦11月28日
ご近所の丸池公園。 水の中に落葉が堆積している。 この池はあちこちに湧き水があって水が豊かである。 昨日このブログで君嶋真理子さんのことを書いたら、君嶋さんから すごい積雪です。これから週末も心配。雪合戦して帰ってくるのでスキーウエアで通学する息子。びしょびしょ。 うちの前のコインパーキングで動けない車を雪かきして助けてます。 というメールを貰った。 新潟の雪はさらに激しくなる様子だ。 気をつけて君嶋さん! 今日の讀賣新聞の長谷川櫂氏による「四季」は、内田進・泰代句集『航跡』より。 駅ごとに乗り込んでくる寒さかな 内田 進 「人間の恰好をした『寒さ』がコートの襟を立て乗り込んでくるかのようだ」と長谷川さん。「寒さ」を人間で喩えるとしたらどんな人間になるだろうか。性別は男、痩せていて四十代くらい、背が高く、身体の細部が尖っていて、目つきがするどい。っていまさっとこんな想像をした。わたしの想像力、けっこうありきたりかもって思った。。。いまいち、おもしろくないよね。 新刊紹介をしたい。 四六判ソフトカバー装グラシン巻帯有り 194頁 二句組 著者の小林成子(こばやし・せいこ)さんは、昭和15年(1940)兵庫県生まれ、現在は宝塚市在住。平成5年(1993)「火星」入会、平成19年(2007)恒星圏同人、平成28年(2016)「火星賞」受賞。俳人協会会員。本句集は平成7年(1995)から令和2年(2020)までの作品を収録した第1句集である。序文は山尾玉藻主宰が寄せている。 山尾主宰は、1章から4章までを、章ごとに作品を丁寧に紹介している。そして作者の歩みにそいながらその特質にふれている。ここでは4章の一部を抜粋して紹介したい。 第四章には一層ぶれのない写生眼で対象を見据え、良き詩的センスで選ばれた季語との融合の佳さを示す句が顕著となる。 昼過ぎの榾火の丈や残り福 白象に罅はしりゐる花の雨 花罌粟の震災跡へ波がしら スタンドは遠嶺の高さラガー駆く 一句目の「昼過ぎの榾火」の程よい「丈」が、落ち着いた雰囲気の「残り福」を頂く心によく適っていて、二句目では「白象」像の「罅」に着眼しつつも、その陰の景に情趣豊かな「花の雨」を添える事を忘れない。三句目は揺れ続ける「花罌粟」にまだまだ消えぬ罹災の不安感が推し量られ、「波がしら」にはそれなりの切迫感がある。四句目ではラグビーの「スタンド」の高さを「遠嶺」の高さに喩えて臨場感を高めている。それぞれの季語は一見脇役的にも思えるかも知れないが、一句の点睛となって大きく深い空間を創造している。 保句集の担当は文己さん。 夏の雲と秋の雲間を母逝ける 秋風を聞けるラ・フランスの容 月明の本堂に椅子畳む音 坂あれば雲湧きやすしラムネ玉 天空に近く稲刈はじまりぬ 朴落葉踏みたくてバス乗り継ぎし 皆のあとゆくうれしさに桃の花 文己さんの好きな句をあげてもらった。 秋風を聞けるラ・フランスの容 わたしもおもわず〇をつけた一句。なんと巧いことを言うのだろうっておもった。風を聞く特権をもっている果物って、洋梨をおいてほかにないんじゃないか。だってあの形でしょう。「聞ける」が上手い。『秋風に吹かれ」とかじゃなくて、「聞ける」である。「聞く」という言葉がいちばんふさわしいのは「秋風」である。そしてそれを聞くのは「ラ・フランス」であるというのだ。この句「ラ・フランスの容」としたことによって、景色の輪郭が明瞭となったのである。秋風が吹きつけるラ・フランスであったら景色は茫洋としているが、「容」としたことによって読者の目にら・フランスの容をはっきりと呼び起こしている。そこが巧みだ。しかもその容が秋風を聞いているという、果物に生気を蘇らせている。無駄な言葉のない締まった一句である。 坂あれば雲湧きやすしラムネ玉 この句は第3章にあり、山尾玉藻主宰も序文でとりあげておられる。作者も帯の自選に入れている。「誰もがその懐かしさで素直な思いとなる『ラムネ玉』の効用で、『坂あれば雲湧きやすし』を理屈無く納得させる。」と山尾玉藻主宰。視界のひらけた坂上に立ったとき白い夏雲が湧き上がった。それだけでも気持のいい句である。そこで飲むラムネ玉であったらそりゃあもう爽快感に満ち満ちている。この一句、「ラムネ玉」の下五が大きな空間の景を求心的に締まったものとしているのも巧みだが、わたしがそれ以上に上手いとおもったのは、「雲湧きやすし」の措辞である。「雲の湧きたる」ではなく、「雲湧きやすし」としたことによって、平面的な景色におさまらず生動する大気を詠み止めていることだ。まさに「ラムネ玉」にむかって雲が湧き起こっていくような気配さえ思う。 月明の本堂に椅子畳む音 秋の夜の澄明な空気感に満ちた一句である。この句を読んで、かつて奈良で遊んだ日のことを思い出した。新薬師寺だったとおもう。あの有名な十二神将のいるお寺である。秋の夜のひとときを寺を開放して音楽の一夕の催しがあって聴きに行った。バイオリンとフルートの演奏だったかしら、そのへんはよく覚えていない。お堂の中にはいってもいいし、周囲のすきな場所にすわって三々五々音楽を聴いたと思う。この句そんな秋の夜の集会(?)がおわった後の様子である。多くのひとが去って、片付けがはじまっている。閑散となったお堂に月明かりが差し込んでいる。そして、片付けるための椅子を畳む音だけが鳴り響いている。月明の視覚へのはたらき、椅子をたたむ聴覚へのはたらき、そしてお堂にみちた澄んだ空気感と静けさ、秋ならではの気配にみちている。 白象に罅はしりゐる花の雨 これはわたしの好きな一句。山尾玉藻主宰も序文でとりあげておられる。「『白象』像の『罅』に着眼しつつも、その陰の景に情趣豊かな『花の雨』を添える事を忘れない」と。この句、まず色が見えてきた。白象の「白」、そして「花の雨」の淡いピンク。その色の取合わせがまず気にいった。しかも「白象」というのがいい。たんなる象ではなく「白象」と詠むことによって、美しい象が眼にやきつけられる。その白い美しい象に「罅」がはしっているというのだ。あるいはこの「罅」は「皺」なのかもしれないが、「罅」とすることによって白象の痛々しさをよびおこす。そこに桜の花びらととともに雨がふりつけるのである。しかし、この雨、その罅をやさしく潤すような雨であるのかもしれない。大きな白象のからだに濡れた花びらが降りかかる。「罅はしりゐる」という措辞がやはり巧みである。シャープな罅の線とやわらかに降りそそぐ雨。「はしりゐる」と切ることで「花の雨」が効果的である。 校正スタッフのみおさんは、「好きな句がたくさんありました。中でも〈初雪へひとりひとりを送り出す〉から は、作者の優しさが伝わってきて大好きです。」と。 校正スタッフの幸香さんは、「〈聖夜来る瓢の腰の金の紐〉面白い取り合わせに惹かれました。」と。 山尾玉藻先生に初めてお目にかかったのは、平成五年十月の「東吉野火星一泊吟行」でした。「火星」入会と同時に、当時ご指導いただいていた杉浦典子様のご縁で参加させて頂きました。東吉野の美しい紅葉に手入れの行き届いた庭園、床のある広間に岡本差知子先生と玉藻先生がにこやかに座っておられました。深々とご挨拶させて頂いたのを覚えております。以来、玉藻先生の温か くも厳しいご指導のもとに、幸せな俳句生活を送ってまいりました。 このたび、先生にお勧めをいただき句集を上梓することになりました。生来あまり過去を振り返らない性質の私ですが、稿を纏めていくうちに、一句一句の景の中に当時の心情が蘇り、自分の来し方が刻まれているのを実感しました。それは有難く幸せなことでした。より一層俳句を敬い、奥深い俳句を学んでいかなければなりません。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 本句集の装釘は君嶋真理子さん。 「カバーは紺色をご希望されました。 『落ち着いたなかに明るさの感じられる、とても良い色合いですね。』とおっしゃって頂きました。 見返しの紺が華やかできれいです。」と担当の文己さん。 扉。 先々の草揺れてゐる蛇の衣 これまでの成子さんの俳句生活が豊かなものであった事は疑う余地がない。 成子さんにはこの後も俳句の道をたゆまず歩み続けられ、ご自分の足跡を刻み続けられる事を願って止まない。(山尾玉藻・序) 以下は、見本をまず手にされた小林成子さんがくださったお言葉である。 シンプルに品よく仕上げていただき、感謝しております。 冬の午後の曇天ですが「わだち」の辺はしぶい光を漂わせています。 表紙から帯に続く図柄ののびやかさにも細やかなお心づかいを思います。見返しの藍色は私のもっとも好きな色でした。 担当の文己さんは、「紺」の色にずいぶんこころを配ったので、ホッとした様子だった。 句集上梓後のお気持ちをうかがった。 先ずはここまでこちらの意向を汲みとって装丁の案を出していただいたこと、深く読み込んでいただいていたことに感謝しております。 まだまだ自分の作品を客観的に読むことは出来ませんが、より愛おしく思われます。 これからも写生に心がけ朴訥に詠み続けたいと思っています。 俳句の道をあゆみ続けられることに感謝しつつ、自然の織りなすちいさな感動を、ひとのこころの機微を、写生をとおして詠んでいければと願っています。 ふらんす堂のみなさま、ほんとうにありがとうございました。 こちらこそ、ありがとうございました。 さらなるご健吟をお祈りもうしあげております。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 今日も寒い一日となった。 お客さまの多い日であったが、わたしはなんとかノルマを果たした。 だれもほめてくれないから、よくやった!とわたしはわたしを褒めてやった。 明日は明日のノルマが待っている。 ガンバ!! 仙川には真鴨もやってきていた。
by fragie777
| 2022-12-21 19:38
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