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12月5日(月) 納めの水天宮 旧暦11月12日
今は冬菊がハッとするほど美しい。 光を放っているごとくだ。 つい近寄ってしまう。 これは昨日矢川に咲いていたもの。 夏物をやっとクリーニングに出せた。 車の後部座席につんだまま数カ月が過ぎた。 出さなくては出さなくてはと思いながら、放っておいたのだった。 クリーニング屋さんは、駐車場から仕事場に行く途中にあるというのに。 今日はとうとう決行したのだった。 なんだか気持がすっきりとした。 新刊紹介をしたい。 著者の佐々木潤子(ささき・じゅんこ)さんは、昭和39年(1964)東京生まれ、現在は宮城県・仙台市在住。平成3年(1991)「きたごち」入会、柏原眠雨に師事。平成8年(1996)句文集『遠花火』上梓、平成14年(2002)「きたごち」同人、平成18年(2006)「きたごち」編集長、令和2年6月、篠沢亜月と共に「しろはえ」創刊代表。俳人協会会員、俳人協会宮城県支部幹事、宮城県芸術協会実行委員。本句集は、第2句集であり、「きたごち」主宰の柏原眠雨氏が序文を寄せている。 序文を抜粋して紹介をしたい。 俳誌「きたごち」が四百号を越えたところで、本年十二月をもって終刊にすることとした。創刊当初は編集から発送まで私一人でこなしていたが、結社が大きくなるにつれ、妻と娘に手伝って貰うようになった。やがて年を追って娘の手を借りることが増え、平成十八年九月号からは、編集人佐々木潤子、発行人柏原眠雨、という形をとって現在に至っている。その娘の潤子が句集を纏めることとなった。 潤子は以前に一度句集を出したことがあった。旅行記を集めた文集を後ろに付けた句文集であったが、一応これが第一句集となり、今回が第二句集である。この間句集を編むいとまもなく毎月「きたごち」発行の仕事に追われてきたので、今回の句集は平成七年から昨年までの長い期間のものを集約する形になった。 この期間に身辺に生じた最大の出来事はいうまでもなく東日本大震災である。その折の句が若干収録されているので、その中の一句 炊き出しの最後はカレー春満月 から、句集名の「春満月」を採った。(略) 以下、柏原眠雨氏は本句集のを特長を、「旅吟が多いこと」「五感をいかした写生句であること」「俳諧性のあること」などについてたくさんの引用句をあげて鑑賞しておられる。そして、 写生は、良い物に目を止めることで句を高める。見方の面白さも評価される。そのような努力が認められる句を最後に挙げる。 カメラに向く句碑と百人秋日和 薄紙の婚姻届ヒヤシンス 山門にあしなが募金つつじ燃ゆ 銀杏散る村の誇りの銅像に ルビ付の子供みくじや神の留守 「きたごち」の廃刊に先立って、潤子は篠沢亜月さんと二人で俳誌「しろはえ」を立ち上げた。これまでの俳誌編集の経験を踏まえ、新しい歩みを堅実に積み重ねることで、俳句の力も高めて欲しい。多くの方々の力添えを願ってやまない。 句集の後半を拝読すると柏原眠雨氏はお身体をこわされた様である。今はお元気になられたが、父として、娘に託す思いの溢れる序文である。 本句集の担当は、文己さん。文己さんの好きな句をあげてもらった。 ドイツ語の売り声恐きバナナ売り 揚羽蝶陰陽石にまた戻る 雨に濡れ焚かるるを待つ立雛 春寒し燭燃えつきて眠りけり 炊き出しの最後はカレー春満月 眠る山にケーブルカーの擦れ違ふ 「旅吟の数に驚きました。1冊の句集を通して、日本中、世界中を旅したような気分になりました。」と文己さん。 ドイツ語の売り声恐きバナナ売り 「ドイツ三句」と前書きのあるうちの一句である。「バナナの句は硬質のドイツ語を耳にした折の気分が出た。」と柏原眠雨氏は、序文で鑑賞をされている。ドイツ語は習ったことがないので、いったいどんな言葉が発せられたのかはわからないが、ドイツ語がもつ雰囲気はわかる。かつて、大学生だったころ、フランス語の授業でテキストを読むように名指しされたことがあった。一年生だった頃と思う。たどたどしく数行を読み上げていったところ、その教授より「君のフランス語はまるでドイツ語みたいだね」と言われ、その場にいた同級生たちに笑われたことを覚えている。すごく恥ずかしかった。忘れもしないわ。フランス語のなめらかさはもとよりなくて、きっとたどたどしかったのだろう。しかし、そのことはまたドイツ語に対しても失礼であったかもしれない。ドイツ語はドイツ語らしい覇気のある発音であり、あるいきおいがある。その上でのバナナ売りである。日本のようにかつてあった「バナナの叩き売り」のような売り戦法だったのだろうか。作者の耳はその声をいきいきととらえたのである。 東口から西口へ花吹雪 この句をよんだとき、かの有名な安住敦の〈しぐるるや駅に西口東口〉をすぐに思い浮かべた。この安住敦の詠んだ駅もそう大きくない駅かもしれないが、校正スタッフの幸香さんが「それほど大きくない地元の駅が目に浮かび、心惹かれる景です。 」と鑑賞しているように、こちらはもっと小さな駅なのだとわたしも思った。それも都会の駅ではなく、安住敦の句は、安住敦が詠んだということもあって都会の私鉄の駅などを思い浮かべるが、こちらは田舎の小さな駅、西口から東口が見通せるようなそんな駅を思う。ローカル線がとことこと走っているような鄙びた駅。そんな小さな駅の桜が満開である。風が吹けばたやすく花びらは東口から西口へと流れる。乗り降りする人も多くなく、花びらは自在に風に吹かれていく。そんな景が浮かんでくる一句だ。 天にしし座手に熱燗のワンカップ これはわたしの好きな一句である。というかこの一句をみて、俄然佐々木潤子さんを身近に感じてしまったのだ。だって「手に熱燗のワンカップ」ですよ。句集の前半に収録されている句なので、お若い頃の一句ではある。でもいいな、空の星を見上げながら、熱燗のワンカップを飲むなんて、きっと外であるいは立ち飲みかもしれない。そんな気取りのない様子が見えてきて、いいなっておもったのと、これは、もう本当に余計な話ではあるが、「しし座」というのが気に入ったのである。わたしは「射手座」なのであるが、「獅子座」の男子とは相性がいいのである。だからこの一句、獅子座の男性をこころに思いながら、熱燗を飲む、っていう風にわたしは読んで、そんなのもいいわねって思ったのである。まったくもって通俗的でごめんなさいませ。でもこの一句、すっかり覚えてしまったのだ。 雨に濡れ焚かるるを待つ立雛 なんとも哀れな一句である。流されるのではなくて、「焚かるる」のである。それを待つ「立雛」。立っている雛さまであることによって「待つ」ことがよりリアルにみえてくる。しかも、雨に濡れながらという。役目をおえた(?)お雛さまの哀れな境涯(?)が、しんしんと伝わってくる一句であると思う。「待つ」という措辞が、雛の心情を見事に表現していると思った。 風鈴を吊つて新居の畳の香 いいですね、新居って。良き暮らし振りが見えてくる一句だ。風鈴がたてる初めての音、それに聞き耳をすます。ああ、いいわねえなんて言いながら、くつろいでいるとふわーっと新しい畳の匂いが鼻をつく。青畳の匂いはなんといってもいい、風が開け放たれた窓から通っていく。涼風だ。聴覚から嗅覚へとさりげなく読者をいざなういながら、涼しさを体感させるような一句である。 令和四年十二月に、所属結社の俳誌「きたごち」(柏原眠雨主宰)が終刊を迎える。平成八年に海外紀行文と共に纏めた句文集『遠花火』を上梓したが、「きたごち」終刊前に第二句集を残したいと今回の出版を決めた。平成三年から六年までの句は第一句集に載せたので、本句集は平成七年から令和三年までの二十七年間の句の中からある程度自選をし、最終選句を主宰に依頼した。(略) そもそも、「きたごち」主宰である父の手伝いをしていたのが俳句との出会いである。自分で作句するようになっても、毎月の「きたごち」の編集、校正、発送作業に追われ、俳句そのものを楽しむ余裕はほとんどなかったように思う。「俳句って面白いものだな」と感じるようになったのは、令和二年六月に篠沢亜月さんと共同で俳誌「しろはえ」を発行するようになってからだ。「きたごち」終刊後は、「しろはえ」に一層力を入れて行きたいと思っている。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 「しろはえ」に情熱を燃やす佐々木潤子さんである。 本句集の装釘は君嶋真理子さん。 「装丁のイメージは、震災からの復興の祈りを込めた、明るいイメージでと君嶋さんにお願いしました。」と文己さん。 表紙。 扉。 華やかな美しい一冊となった。 潤子の句は現場で見聞した体験を詠んだものばかりで、「きたごち」の写生の句風を素直に実践している。俳句には実感が大切であり、「きたごち」では対象に五感で接することが大事と説いているので、その意味で潤子の句は「きたごち」の申し子ということができよう。(柏原眠雨。序より) 震災という辛い経験をなされた佐々木潤子さんであったが、句集を拝読すると豊かな時間をたくさん過ごされたことがわかる。 句集上梓後のお気持ちを伺ってみた。 学生時代に、俳句と海外旅行記を合わせた句文集を出版したことがありましたが、本格的な句集を編んだのは、この『春満月』が初めてです。 気付けば前回の出版から27年が過ぎており、柏原眠雨主宰の「きたごち」誌に掲載された27年分の句を全て抜き出して纏めるところから作業を始めました。若い頃は、つまらない句でも「若々しくていいね」などと言われて褒められたような気分でしたが、改めて読み返してみると、拙い句ながらも若かったからこそ詠めた句もあるのだと感じました。そして一句一句、どの句からも当時のことが甦り、俳句=自分史なのだと改めて思いました。 句集の制作過程では、いくつもの表紙絵のデザインを頂戴した時の喜びと、選んだ表紙絵に色が付いたときの感動は忘れられません。色指定をしなかったにも拘わらず私の大好きな色合いで、私のイメージをはるかに超える美しい表紙に仕上げていただきました。プロの仕事の凄さを感じるとともに、お会いしたこともないのに、私のことをよく解ってくださっているようでとても嬉しかったです。 所属結社誌「きたごち」はこの12月で終刊となりますが、結社理念の「俳句の基本を大切に」を守り、今後も客観写生、即物具象の句を詠み続ける所存です。そして、篠沢亜月さんと立ち上げた俳誌「しろはえ」を通して、俳句を楽しみたいと思っています。 佐々木潤子さん。 柏原眠雨主宰の「きたごち」は12月号をもって終刊となる。 34年間続いた俳誌である。 12月号は特集号となる予定である。 これまでのご寄贈をありがとうございました。 佐々木潤子さんが篠沢亜月さんと編集・発行をされている俳誌「しろはえ」。 俳誌「しろはえ」で、いよいよ俳人として充実される佐々木潤子さんである。 第2句集の上梓を機に、更なるご健吟をお祈り申し上げております。 矢川緑地の紅葉。
by fragie777
| 2022-12-05 20:06
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