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10月5日(水) 旧暦9月10日
名栗のジェラード屋さんの入口におかれていた。 さりげないけど季節感たっぷり。 こういうの、いいな。。。 (最近、朝歩いてないな……)と思いながらも、仕事のことを考えるとちょっと気持が急いてしまい、ここんとこ車出勤である。 今日は雨がふるらしいということもあって、(まっ、いいや)って車に乗り込んだ。 仕事場にいくと、ややっ、わたしの机の上が整然となっている。 (アレー、きれいだな。) 「整理してくれたの?」ってすでにはやくから出社しているPさんに聞く。 Pさんは、顔もあげずに仕事に没頭していて、 「はい」とだけ。 「わあ、ありがとう!!」と言うと、 「気持わるくないんですか? 机の上がそんなに汚くて」とぐさりと一言。 「そうなのよねえー、気持わるいよ。でもきれいにする仕方がわかんないのよ」と。 どうやらわたしの脳細胞は、その情報が欠如しているらしい。 ということで、新刊紹介をしたい。 四六判変型ハードカバー装帯あり。 392頁 詩人・山崎るり子さんのどの頁にも「猫がそっといる」詩集である。一日一篇の詩を366日インターネット上に書き続けたものを一冊にしたもの。 「二〇一八年の七月のこと、 いまや皆がすなるブログというものを 私も、と思い立ったのです。 が、パソコンを持っていない。 そこで娘に頼み込んで(ほとんど丸投げで) 一日一詩「猫まち」をはじめました。 今まで出会ったたくさんの猫たちが 私の中を通り過ぎていきました。 この詩集はそんな一年間の詩をまとめたものです。」 「はじめに」より。 山崎るり子さんのお誕生日の7月23日よりはじまり、翌年の7月22日までの詩が収録されている。一頁に一篇。長めのものもあれば、一行のものもある。 まずは最初の一篇を紹介したい。 はじまり 七月の草はらに真っ白の猫が来て こっちを向いて座った 「これから始まる良い事も悪い事も みんな受け取るように 贈りものですから」と猫は言った 一行の詩以外は、すべてタイトルがついている。 猫を抱いて猫の見ている雨を見る これは9月9日の日付のもの。9月の長雨の季節か。。。 今日の日付のものは。。。 風 野の原に現れる風文字 猫の背中で筆を整えて 次の一行 また次の一行 詩が続きもの(?)になっているのもあって、物語を読むようだ。 わたしは「ヨモタさんちの猫」と題した12篇の詩が好き。 2篇のみ紹介したい。 ヨモタさんちの猫 1 ヨモタさんのお母さんは今日も猫を捜している 「ヨモタさんちに猫なんかいた?」と近所の人は立ち話 「そういう時おばあちゃん何歳?って聞いてごらんよ 十歳って答えるから」 「七十年も前の猫?ハハハそりゃあ見つかんないわ」 ヨモタさんのお母さんは高くてやさしい声で 今日も猫を呼んでいる ヨモタさんちの猫 7 ヨモタさんのお母さんが溜めこんだリボンや紐が棚から溢(あふ)れ出す 「明日捨てますよ」とヨモタさん 翌日帰ると百のリボンの先、百の紐の先に煮干しが結びつけてある 「町中の木にぶら下げに行くよ」 ヨモタさんは仕方なく一緒に出かけ 高い木 低い木 ブランコやジャングルジムにも登る 「お月さんからもぶら下げたい」とお母さん 風が町中の猫に知らせに行く いろんな猫が登場するけれど、いろんな人も登場する。そしていろんな動物も。この詩も好き。2月20日付けのもの。これも「二匹」と題して8篇の詩がつづく。 二匹 6 「二匹一緒に貰(もら)って下さい ずっと一緒に育ったんです 別れさせるなんて可哀想(かわいそう)で……」 仕方ないので二匹一緒に貰ってきた 二匹は別々に食べ 別々に遊び 別々に寝て 別々に生きている 一匹は糖尿病の灰色猫で 一匹は漬物石くらいあるアカミミガメだ 山崎るり子さんはとてもしなやかな詩人の魂をもっていて、ヒトやイノチあるものが生きて行くことのいろんなことがこの詩集にはすべて詰め込まれている、そんな思いがしています。混沌は混沌のままに。 本詩集の装画は、さかたきよこさん。 山崎るり子さんがお好きなさかたさんの絵を表紙とカバー等に使わせていただいた。 帯のことばは、石黒亜矢子さん。 「猫の中にそっと猫がいる。 言葉に、猫の存在に、ぎゅんとした」 装幀は和兎さん。 正方形にちかい変型版。 山崎るり子さんとふらんす堂をむすびつけてくださったのは、山崎さんのご長女の石井まゆさん。 今回の本作りのすべてに関わってくださり、お母さまである山崎るり子さんとふらんす堂とのパイプ役になってくださった。 ふらんす堂のお近くに住まわれているので自転車で何度もご来社くださったのである。 帯の裏の詩はまゆさんが選んだもの。 そもそもは、東直子さんの歌集『十階』の愛読者で、この『十階』の本のかたちがとてもいいのでと、ふらんす堂を心にとめてくださったのである。そして山崎るり子さんの『猫まち』を刊行させていただくことになったのである。 さかたきよこさんの装画によるこの本はとても評判がいい。 ふらんす堂の本作りの枠をひろげてもらった一冊である。 表紙。 見返しと表紙はおなじ用紙。 扉。 目次。 目次に対応して月の位置がわかるように。 赤の花布。 鮮やかな青のスピン。 死ぬことを受け入れている猫を抱く 一行の詩のなかで、わたしが一番好きな詩。 死んでしまった愛猫のヤマトを思う。。 老猫のヤマトを抱くたびに「長生きしてね」と言うと、悲しそうな目をした。 最後から二番目の詩を紹介します。 猫は 猫はタオルです 涙が拭けます 猫は日向です 凝こった体をじんわりさせます 猫は子守唄です 猫の喉の揺れと合わせていれば 夜は味方です 猫は湯たんぽではありません 足の先でつつかないで ご上梓後のお気持ちを山崎るり子さんに伺ってみた。 ●上梓後の思い 今回の詩集は特別でした。 私は何もしなかったからです。 ブログに詩を載せる操作をしてくれたのも、 それを本にするため ふらんす堂さんに頼んでくれたのも、娘。 おかげで私は、少しハラハラ、ほとんどワクワクして 本の出来上がりを待ちました。 ふらんす堂の山岡さんの猫は、昔から大好きな漫画家の大島弓子さんから譲り受けた猫という事も知り、びっくり。 感慨深い一冊になりました。 そうなのです。亡くなったヤマトも元気でいる日向子も大島弓子さんから譲ってもらったものなんです。 ●今後について このごろ、いろいろなイラストレーターの方の作品を見る機会があり、やっぱり絵はいいなあ、すばらしいなあ、と思いました。 絵と詩といっしょになった、絵本のような本が出せたら、と夢のように考えています。 山崎るり子さん 撮影は次女の下島あゆさん。 ●石井まゆさんより 私が小学生のころ。家庭科の宿題の献立調べで「今日のご飯はなあに」と聞くと、「今日の夕食は,春の足音よ」と答えるような母です。のちに50歳近くになって、突然詩を書き出した時、私も兄も妹も驚きませんでした。 私は私でそんな詩人とは無関係に生きていたのですが、「ちょっとブログ手伝って」からはじまり、いつの間にやらずるずる引きずり込まれ、今回「猫まち」の本づくりを手伝うことになりました。ふらんす堂のみなさんのおかげで素敵な本に仕上がり、ちゃっかり良い親孝行ができたとほくそ笑んでおります。 石井まゆさんの切り絵の作品。 山崎るり子さま。 今回のご縁をとても嬉しく思っております。 いつかお目にかかる日がありますように。 石井まゆさま 何から何まで本作りに引き込んでしまいました。 ありがとうございました。 そして、お疲れさまでした。 『猫まち』が多くの人に読まれることを願っております。 ふらんす堂にいる猫たちと記念撮影。
by fragie777
| 2022-10-05 20:01
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Comments(2)
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