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9月13日(火) 鶺鴒鳴(せきれいなく) 居待月 旧暦8月18日
神代植物園で真っ赤な実をみつけた。 なんの木の実かしら。 ひときわ鮮やかである。 枝をたどっていくと木に名札がつけてあった。 それを見て驚いてしまったのだ。 「アオハダ」と記されている。 あら-! わたしん家のアオハダは、こんな赤い実をつけたことなんてない。。。 で、調べたところ、アオハダは雄株と雌株がともに植えられてないと、赤い実をつけないんですって。 そうか、 わたしん家は、株立ちではあるが、一木のみである。 この木のそばに、実をつけないもう一本の木がやはり株立ちで植えられていたのだった。 さらに調べてみたところ、わたしん家のアオハダは、その花の形態から雌株のようだ。 そばに植えられてなくても、ちかくの公園とかに雄株が植えられていれば実をつけるらしい。 わたしの家のアオハダにもきれいな赤い実をつけさせたいな。。 雄株よ、来い!! 新刊紹介をしたい。 46判ハードカバー装帯有り 244頁 二句組 本句集は、内田進・泰代(うちだ・すすむ・やすよ)ご夫妻の合同句集である。内田進さんは、昭和10年(1935)兵庫県神戸市生まれ。泰代さんは、昭和12年(1937)香川県高松市生まれ。ともに昭和62年(2001)「ホトトギス」へ投句をはじめ、平成元年(1989)「九年母」に投句をはじめる。平成28年(2016)「ホトトギス」同人。泰代さんは日本伝統俳句協会会員。俳句においては、まったく足並みをそろえられているご夫婦である。本句集には、「ホトトギス」の稲畑廣太郎主宰が序句を寄せられ、また、序文は、おふたりが敬愛する大阪カトリック教区の酒井俊弘(俳号・湧水)司教が寄せられている。 二筋の航跡永久に月涼し 廣太郎 おふたりをよく知る酒井湧水司教は、進さん、泰代さんのそれぞれの俳句をとりあげながらその来し方にふれつつ思いのあふれた序文をよせられているが、ここでは抜粋してその一部のみ紹介したい。タイトルは「航跡の文(あや)-序にかえて) 夫君の内田進さんは、精神科医としてずっと世に貢献してこられました。医師として勤務を始めた中で俳句と出会い、患者さんにも勧め、ともに句を詠むことで俳人としての歩みを始められました。 天職を唯ひたすらに去年今年 秋灯下一字の重き鑑定書 二度と着ぬ白衣をたたむ花の冷 白梅の空に溶け込む一樹かな 駅ごとに乗り込んでくる寒さかな 奥様の泰代さんの句風は、一言で言えば「やはらか」。かと言って弱々しく色が薄いという意味ではなく、季題に色鮮やかな言葉を絡めた詩情あふれる句です。 乗りかへの須磨は明るき花の駅 汗の手を濯ぎ産声抱き上ぐる 告解を終へて春寒解かれけり 聖堂を出でし一歩に冬の月 新しき楽譜の届き春隣 最後に、この句集の題名に託したお二人それぞれの句と、序を記した私からの存問句でこの拙い序の結びといたします。 人生の航跡綴り去年今年 進 露の世や吾子の航跡とこしへに 泰代 夏潮に航跡の文波の彩 湧水 本句集のタイトルは「航跡」。このタイトルについて、「あとがき」で内田進さんは、次のように書いておられる。 句集名は、早世しました長男圭一が帆船海王丸に乗り世界を航海実習した際に、神戸港で見送った思い出、そして、夫婦で長い航海の旅路のような人生を送ってきたことを重ね合わせて「航跡」と名付けました。 本句集には、早世をされたご長男を詠まれた句が収録されている。 向日葵や吾子の絵日記色褪せず 進 吾子の背な流す思ひに墓洗ふ 泰代 内田さんご夫妻は、2021年に句集『音色』を上梓されたの俳人涌羅由美さんのご両親であり、涌羅由美さんがこの合同句集を上梓されるにあたっていろいろとご尽力をされたのだった。酒井湧水司祭の序文には、由美さんとそして妹の生田真紀さんの作品館賞なども紹介されている。それを通してご両親によせるお二人の思いが伝わってくると同時に、内田ご夫妻を思う方々のあたたかな心にふれることができる序文である。 この句集の担当は、文己さん。 悴める手を温めて触診す 進 大聖堂入口までの夏帽子 花嫁の父と呼ばれて朧かな あたたかやいつも誰かがゐる水辺 泰代 水仙にはじまる島の景色かな 海の日の帆船空を引き寄せる 大聖堂入口までの夏帽子 進 カトリック信者であるご夫妻である、礼拝はことかかず行かれていることだろう。この一句、気持のよい景がみえてくる。大聖堂とあるからヨーロッパなどを旅したときの一句か。あるいは日本にある大聖堂のことか。思うに大聖堂の建物があるところはたいてい大きな広場んどがあり大聖堂まではいささかの距離があるところが多い。大きな夏帽子をかぶった婦人がその階段(があったとして、なくてもいい)を登っていく。あるいは近づいていく。広々とした聖堂前は太陽が照りつけている。そんな日差しをさえぎる夏帽子であるが、それは聖堂までのこと。聖堂のなかはひんやりとしてやや暗く、もはや夏帽子は不要である。また聖堂であるから帽子をとって祭壇の前に立たなくてはいけない。しかし、そいう状況説明はどうでもいいことで、この俳句は景のシンプルさがいい、それにつきる。大聖堂と夏帽子。それのみが詠まれて、しかも大聖堂に近づいて行く夏帽子がまぶしく圧倒的である。 花嫁の父と呼ばれて朧かな 進 この句も面白い。「朧」がなんかいい。「花嫁の父」であることのやや複雑な感情をこの「朧」と共有(?)しているのだ。水蒸気をたっぷりふくんだ春の夜、ややものの形が朦朧としている、そんな状態の「朧」.自分のもとを去っていく娘へのすこしセンチメンタルな思い、晴れがましい思い、照れくさくて消え入りたいような、そんないろんな感情が錯綜する、その思いを「朧」ととらえた一句である。おそらく「朧」がこんな風に詠まれたことはないだろう。朧も驚いているのではないか。。。いや、朧は父のさみしさをやさしく包み込んでいるのだ。 あたたかやいつも誰かがゐる水辺 泰代 この一句、わたしも好きである。「水辺」がいい。そして「いつも誰かがゐる」のである。春の水辺のあかるい風景が目にうかんでくる。春の水は、冬の厳しさから解放された人たちを呼ぶのである。春になって人のこころも好日的に解き放たれていく。身体が緊張ゆるびつつあるそんな時に心がとらえた弾力あるおもい、それが一句となった。「あたたかや」と上5にまず置くことによって、読者は最初からあたたかな気持でこの一句に向き合うのだ。巧みな叙法である。あるいは、水辺に誰か人がいる、それを見たり思ったりすることだけで「あたたか」な感情を持てるということ、それはもとより、泰代さんが自身の人生のありように満ち足りている故なのかもしれない。 水仙にはじまる島の景色かな 泰代 「水仙にはじまる」という措辞が上手いと思う。水仙にはじまる島というだけで、もう島の様子がみえてくるではないか。多くをかたらず水仙という季語のみでこれから訪れようとしている、いや船から下りて一歩踏み出した島のありようがよくわかる。日当たりのよい決して大きくない島、畑などがひろがり、人々は素朴に生きている、土の匂いもして大地の湿りも足底に感じる。潮の香、気持のよい海風。冬もおわりつつあり春が近づいているのだ。この句、下5が「景色かな」とあり、なんともぶっきらぼうな一句であるけれど、なにより水仙がいい。水仙と島はよく似合う。 校正スタッフのみおさんは、〈野を焼いて風むらさきに暮れゆけり 泰代〉の句が好きです。野焼きの煙が夕闇に溶け込んでいくように感じました。 幸香さんは、〈臨終を告げし窓辺に朝の虹 進〉〈冬空の重さ湖にもありにけり 泰代〉に特に惹かれました。 自然豊かな病院に勤めていた四十年ほど前に、心を病む患者さんに俳句を勧め、一緒に新聞への投句を始めたことが、私の俳句への第一歩です。 妻もまた、母親や妹達が俳句をしていたこともあり、大阪朝日カルチャー教室や芦屋ホトトギス会に三十五年間楽しみに通い続け、稲畑汀子先生に直接ご指導を受けて参りました。 「ホトトギス」同人義妹白根純子の勧めで昭和六十二年より「ホトトギス」に二人で投句を始め、稲畑汀子先生、稲畑廣太郎先生のもとで花鳥諷詠を学んで参りました。そして地元の句会では、五十嵐播水先生、五十嵐哲也先生のご指導を仰ぎ、「九年母」にも投句するようになり、現在は小杉伸一路先生にご指導頂いております。廣太郎先生には、「カトリック新聞」でも選を頂き励みになっております。 細々と夫婦の共通の趣味として俳句を続けて参りましたが、結婚六十年を迎えるにあたり、「ホトトギス」同人の長女涌羅由美、そして教育現場で励んでいる次女生田真紀からの熱心な勧めもあり、この度思い切って、今まで詠み続けてきた俳句を句集に纏めることにいたしました。改めて句を読み返してみますと、家族の歴史や二人で旅した思い出などが走馬灯のように甦ってきます。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 本句集の装釘は君嶋真理子さん。 題簽は、酒井湧水司祭の手によるもの。 タイトルは箔押しを考えたのだが、この筆勢を活かすために箔押しは避けたのである。 表紙の文字は、銀箔押し。 題簽をそのまま型押しに。 ご希望によりブルーの遊び紙をはさんで、おふたりの句集の境目とした。 白梅の空に溶け込む一樹かな 進 乗りかへの須磨は明るき花の駅 泰代 上梓後のお気持ちをうかがったみた。 内田さまよりの所感。 待ちに待った句集『航跡』が届きました。予想以上期待以上の喜びに、思わず 本を持つ手が震えてしまいました。 題字の「航跡」の筆勢も生き生きと引き立ち希望通りの帆船のイラスト、そし て海のイメージの装丁に感激しています。 今、頁を繰りますとこれまでの家族の思い出が一気に甦り、亡き息子にも会え た様な思いがいたしました。そして娘たちや孫達に、私達の人生を句集という形 で残すことが出来、感慨深いものがあります。昨年、娘 涌羅由美の句集『音 色』の出来栄えとセンスの良さに、もしも自分たちが句集を出版するなら是非ふ らんす堂様に……と思っていましたが、念願が叶い夢のようです。 関係者皆様の温かいご支援に深く感謝申し上げます。本当にありがとうござい ました。 涌羅由美さまからも丁寧なメールをいただいた。 自分の句集の時もそうでしたが、ダンボール箱の中につめこまれた沢山の本を見ますと、改めて上梓ししたことの喜びと感激で胸いっぱいになります。本当にいろいろとありがとうございました。 両親も想像以上の素敵な本の完成にとても喜んでいます。そして、そんな両親の姿を見ていますと、改めて私らしい形で親孝行できて、本当によかったと改めて思います。 厳しい暑さのせいで、すっかり元気をなくしていた父もほとんど見えていない目を近づけて、何度も何度も句集を見つめ、そして、カバーを外して彫り込んである「航跡」の文字を指でなぞっています。そして、母が幾たびも父のために音読しているようです。 昨日は、弟の遺影が飾ってある祭壇にも供えました。 なかなか言葉では言い尽くせませんが、まずは感謝の気持ちをお伝えしたく長々と失礼いたしました。 内田進・泰代さまご夫妻 担当の文己さんは、 「句集編集を通して、ご夫婦の絆はもちろん、ご家族の絆の強さが伝わってきました。 涌羅さんが「私らしい形で親孝行ができてよかった」と仰っていたのが印象的で した。ご両親にとっても、きっと何よりの親孝行だったと思います。」と。 内田進・泰代ご夫妻に、句集をよろこんでいただけたことがなにより嬉しいです。 ありがとうございました。
by fragie777
| 2022-09-13 20:15
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