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8月18日(木) 旧暦7月21日
ご近所の丸池公園の臭木の花。 近くに寄れば強い匂いを発する。 野趣に充ちた花である。 コロナ支配(?)の昨今マスクと手の消毒はすっかり日常化してしまった。 おおかたどこでも入口に消毒液が備えられていて、手指の消毒が義務づけられて(?)いる。 正直、わたしはこれがだんだん辛くなってきたのである。 といのは、指と指のあいだがただれてしまって、皮膚科でステロイドの軟膏を貰ってつけているのだが、つければ痒さはおさまるがつけなければすぐにあかくなってもの凄く痒くなる。 目下その繰り返しである。 キイボードを打っている今も今日は右手の中指と薬指にわたって痒い。 さっきから掻きながら仕事をしている。 マスクも常時つけているので、耳の裏も赤くただれてきた。 皆さんはいかがですか。 これもR化の症状なんだろうか。 つらいなあ~。 新刊紹介をしたい。 四六判フランス製本カバー装 218頁 二句組 著者の渡辺健(わたなべ・けん)さんの前句集『深山木』につぐ第2句集である。渡辺健さんは、昭和11年(1936)年東京生まれ、平成7年(1995)「若葉」入会。平成23年(2011)句集『深山木』上梓。現在は「若葉」同人。俳人協会会員。 『日も月も』は平成二十三年の『深山木』につづく第二句集です。この十一年間の句の中から三七九句を自選しました。 と「あとがき」にある。 句集『日も月も』は、書影写真でわかるようにオレンジ色が印象的なお洒落な一冊である。 前回の句集『深山木』もそうであったが、句集の造本にこだわりをお持ちの渡辺健さんである。 今回のテーマの色はオレンジ。 句集のご相談にふらんす堂にみえられたとき、一冊の本をご持参くださった。 洋書である。 マルグリット・デュラスの本である。 布貼りで、型押しと金箔押しのもの。 とても印象的だ。 日本にいるとこういう本を手にすることはあまりない。 実際の書物をとおして体験するものだ。 ということで、このオレンジの色をテーマカラーに句集づくりが開始されたのだった。 担当は文己さん。 初音てふ一途なるもの聞きとめし 木犀の香をゆらめかせ夜の地震 死者すでに遠しと思ふ冬銀河 潮騒のして探梅の行き止まり 小さきものみな美しき秋茄子も 新樹光浅き眠りの中までも 諳んずる古句あたらしき夜の秋 寒林をゆく懐に書のぬくみ この風よこの雲よ今日鷹渡る 文己さんの好きな句をあげてもらった。好きな句がたくさんあったという文己さん。ここに紹介するのに大分しぼったという。 潮騒のして探梅の行き止まり 海の近くの梅園である。海は見えているのだろうか。見えていたのかもしれないが、いや見えていなかったのだ。潮騒がしているが、海は見えないそんな場所にある梅園だ。「行き止まり」という措辞に眼前の切羽詰まった感があり、それゆえにこそ潮騒が際だってくる。この梅園のむこうには青い海がある、そんな景がただただ潮騒によって呼び起こされる。聴覚と視覚のせめぎ合い。そしてはるか先にひろがる海への想像がやや逼迫した感覚を解き放ってくれる。 諳んずる古句あたらしき夜の秋 晩夏となってなんとなく秋を感じるそんな一夕、身も心も夏の暑さから解放されつつある。そんな夜には古人たちの詩歌がいっそう身近におもえてくる。こころのおもむくままに好きな句をそらんじてみる。秋へと移行する季節の透きとおるような感触、そんななかでそらんじる一句は、まるで新しいひびきを得た一句のごとく作者の耳にとどく。この句「夜の秋」の季語がとてもいいと思う。秋のかすかな気配のなかで古句は、新しい韻きを伴って再生されるのである。 寒林をゆく懐に書のぬくみ この一句、わたしも好きな一句である。きっと読書家であられるだろう作者が見えてくる一句だ。読書というものを楽しむだけでなく、物としての書物をも愛する方なのだ。寒林という殺風景な、かつ厳粛さが支配する木々の間を一人寒さに耐えながら歩いて行く。しかし、懐にかかえた書物の存在感が作者には嬉しい。その書物に作者は心を寄せているのである。作者の身体と心を温めるのは着込んでいる外套ではないのだ。その書物のある重たさや手触り、その世界が騙るものそれらすべてが作者を温める。この一句の良さは、一人の人間の身体感覚をとおして「寒林」という季語が見事に詠まれているということだ。そこを1冊の本をかかえて通る内省的な人物像もたちあがってくる。そしてさらには1冊の本の存在感が寒林と拮抗する。 ゆるびつつ重さを加へ白牡丹 牡丹の花がさいていく様を一句にした。牡丹の花の前にたち全身全霊をもって牡丹を感じている一句だ。「ゆるびつつ重さを加へ」という措辞は、まさに牡丹ならではの、おそらく牡丹の花以外には云い得ないものだと思う。「ゆるぶ」という表現しかり、「重さ」という語彙しかり、地球の重力というものを牡丹がいちばん知悉しているのではないだろうか。「ぼたん」という語の響きもまたそれを思わせる。天体を支配する大いなる力との緊張関係のなかで牡丹は花ひらき、そして散ってゆくのである。 夏つばめ海の色なるビルの窓 この句もすきな一句である。ビルの硬質な窓硝子に海を想起させたのが巧みだと思う。夏つばめの勢い、そして高くそびえる窓、あるいはその窓の先には海が展開しているのだろう。それを「海の色なるビルの窓」と詠むことによって読者に想起させた。ビルの林立する都会の風景、海の青の窓硝子、硬質な材料の中で夏つばめの柔らかな旋回、命の躍動が見事だ。とても良い句だと思った。 校正者のみおさんは、 木犀の香をゆらめかせ夜の地震 「こんな地震の句は初めて見ました。震度2か3くらいかな…と勝手に想像してい ます。」と。 装幀は、君嶋真理子さん。 渡辺さんのご希望のオレンジ色をうまく活かしたフランス製本カバー装である。 飾り枠のみを金箔押しに。 カバーをはずしたところ。 グラシン(うす紙)をかけないフランス造本である。 見返しは目のさめるようなオレンジ。 扉。 天アンカットで栞紐は、白。 本当にオレンジ色が素敵である。 日も月も海より出づる貝風鈴 句集名となった一句である。 本句集を読んでいくと、自身の身の回りをふくめた世界へのゆったりとしてあたたかなまなざしを感じる。季語をとおして季節をじっくりと味わいながら一句をなしていく、悠揚たる心持ちの作者がいるのだ。 句集上梓後のお気持ちを文己さんが伺ったのであるが、コメントはとくにいただけなかった。ただ、文己さんへのメールで、 次は十年後となると、私は95歳という事になるわけですから、もう少し早めに三 冊目を考えることにしましょう。その時はまたよろしく。 お元気でお過ごしください。 というお言葉をいただき、とても嬉しかった。 是非に第3句集も刊行させてくださいませ。 花は葉に人に会はねば言葉褪せ 本当にそうであると思います。人間は関係のなかで生き、言葉を交わしつつ日々を新しくしていくものなんだと思います。まさにコロナ下に生きるわたしたちのきびしさですね。 初鵙や老いゆくことにまだ慣れず どうぞ、老いゆくことに慣れないで、ご健吟に励んでくださいませ。 そう、第三句集を目指して。。。。
by fragie777
| 2022-08-18 19:02
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