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3月5日(土) 啓蟄 旧暦2月3日
気持ちの良い春の一日となった。 今日は啓蟄である。 わたしも家を出て、今日は練馬区立美術館 で開催されている香月恭男展に行く。 香月泰男(かずき・やすお)(1911-74)と言えば、シベリア・シリーズが有名であるが、今回の主旨は「戦後美術史に大きな足跡を残した香月泰男の画業の全容をたどる回顧展」であるということ。そして、「本展では、シベリア・シリーズを他の作品と合わせて制作順に展示します。この構成は、一人の画家が戦争のもたらした過酷な体験と向き合い、考え、描き続けた道のりを浮かびかがらせるでしょう。戦争が遠い歴史となり、その肌触りが失われつつある今、自身の『一生のど真ん中』に戦争があり、その体験を個の視点から二十年以上にわたって描き続けた、『シベリアの画家』香月泰男の制作の軌跡にあらためて迫ります」と。 画集ではみたことのある香月泰男の作品だったが、いちどは見てみたいと思っていたものなので、どんなことをしてでも行っておこうと思ったのだ。まったく余談であるが、チラシに「戦争が遠い歴史となり、その肌触りが失われつつある今」と記してあって、それをそのままここに書きうつしながら、いやいやまさに戦争は遠い歴史ではなく、身近なものとして迫りつつある不穏な気配に世界が満ちている現在ではあるなと思う。 香月泰男は、俳人の宇佐美魚目が愛した画家である。 今回見て思ったのは、初期のものにすごくいい作品があるということだった。 わたしはだいぶ前に購入した、詩人の谷川俊太郎が編集した『春はる夏なつ秋あき冬ふゆ』(新潮社版)の香月泰男の絵と文からなる一冊を愛読(?)していたのであるが、 今回たくさんの作品を見て、この本に収録されているものとはまたまったく違った世界があるということだった。もちろんここに収録されている作品も好きであるけれど。 初期の作品に心を奪われたのだった。 そしてとても構図がデザイン的であるということ。それも極めて斬新で、目をみはるようだった。 実物をみないとわからないような圧倒的な斬新な構図。 おそらくその迫力は画集では伝わらないかもしれない。。 天窓の青は、作品に描かれている青だ。 シベリアで私は真に絵を描くことを学んだのだ。 それまでは、いわば当然のことと前提にしていた絵を描くことができるということが、 何者にもかえがたい特権であることを知った。 描いた絵の評価、画家としての名声、そんなことは一切無関係に、 私はただ無性に絵が描きたかった。 香月泰男が戦場に持っていった絵具箱が展示されている。 それを枕に寝ていたということも。 何を体験したか、ということも一人の人間にとっては大切なことであると思うが、わたしは今日の展示を通して、絵そのものが訴えてくるもの、その力に引き付けられたのだった。画力と言っていいのだろうか。 図録を購入した。 絵はがき。 会場はかなりの人がいたが、混雑するほどではなかった。 見ておいてよかった香月泰男展だった。 練馬区立美術館の庭(公園)にはいろいろなオブジェがあって楽しかった。 近くのカフェで疲れた足を休めた。 ものを動かす本流は、 平凡と言はれるやうな生活に耐へ得る 人間の力から生まれてくるのではないかと思ふ ――香月泰男
by fragie777
| 2022-03-05 21:31
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