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10月28日(木) 霎時施(こさめときどきふる) 旧暦9月23日
使われなくなった牛乳瓶箱。 昭和の匂いのするなつかしいものだ。 名栗の山里をあるいているとこんな風にむかしのものに出会うことがある。 なつかしく、そして哀れでもある。 忘れられたまま朽ちていく。 行儀良く捨てられたタイヤ。 このまま風雨にさらされてありつづけるのか。 1個でなく2個よりそっているのがなんとも慰めとなる。 花野の一角に大きな甕と古い横文字の立て看板。 横文字のみの立て看板。 このすぐ傍には結構大きなログハウスがあって売りにだされたままいつまでも売られずにあった。 そして売り主は売ることをあきらめたのだろうか、やや放置というかたちでそのログハウスはある。 ログハウスを買うとこの看板もつける、そんな雰囲気づくりのグッズだったのだろうか。 よくわからん。 「Another Dream Come True」と赤文字で書かれた英語が空回りをしている。 山里で繰り返されるいくたびもの季節の豊かな巡りのなかで、これらのものもいずれは朽ちていく。かつては人間と関わりをもったものであり、人間から忘れ去られたものたちだ。人の気配を消しながら、すでに役割からおりたものとして、気の遠くなるような時間をかけて朽ち果てていくのだ。 漫画家の白土三平が亡くなっていた。 今日の朝日新聞で、四方田犬彦氏が追悼の文章を寄せている。「歴史の変転、忍者通し描く」と題して。 白土三平の漫画は小学生の頃だったとおもうが、少年漫画雑誌に連載しているときから愛読していた。「カムイ」はすこぶるカッコよかった。そして長編漫画「カムイ伝」。高校生のときに大流行となり授業中に何巻もある漫画本が読んでは渡され読んでは渡された。先生の眼を盗んで、わたしたちはカムイをはじめ三人の少年主人公に夢中になった。女ばかりの高校だったので、それはもう遠慮なく目を輝かせてこの一大ローマンについて語りあった。とは言っても、話はなかなか非情で残酷であり、江戸幕府が強いた士農工商という身分制度のその最下層にあった非人たちをクローズアップさせたものだ。忍者ものとしての「カムイ」という物語とは別に、そこにはひとつの支配被支配の歴史が語られていた。 今日の四方田さんの追悼文を読んで驚いたのは、この「カムイ伝」はまだ未完であったということだ。ちょっと抜粋したい。 『カムイ伝』では武士と農民、被差別民の三人の少年が封建社会の社会開拓を目指し、苦闘するさまが描かれている。この三人がアイヌの長シャクシャインの乱に馳せ参じて終わる予定だったが、蝦夷地に渡るはるか以前のところで惜しくも物語は中断されてしまった。 そうか、高校時代に夢中になり、その後ふっつりと忘れてしまったのであるが、あの『カムイ伝』は未完だったのだ。「カムイ外伝」というのもあって、こちらは忍者カムイの活躍を中心に描かれ、テレビでも放映されていた。それがいつだったか覚えていないが。。 そして四方田さんは、続ける。 わたしは評判の高いこの二作より、70年以降に執筆された「神話伝説シリーズ」の方に、作者の思想的深まりを見ている。もはや歴史が一元論的に進歩発展するといった「大きな物語」の時代は過ぎた。より根源的なところで人間を動かしているのは歴史でも政治的イデオロギーでもなく、古代から語り継がれてきた神話であり、民間伝承である。白土先生はこの認識に基づいて、ウエーバーのカリスマ論からレヴィ=ストロースの王翰論までを理論的に渉猟し、政治権力が発生する始原について連作を発表された。(略) と書き、白土三平が漫画において成し遂げようとしていた思想のありようを語っていく。 わたしにとっては、白土三平は、小学生の頃によんだ忍者「カムイ」の作者であり、高校のときに狂うように夢中になった「カムイ伝」の作者である。かけがえのない物語をあたえてくれた漫画家である。 心からの哀悼を申し上げたい。 今日は朝から出社。 ゲラを校正者に送り、詩集のレイアウトをし、句集のレイアウトをした。 途中、口中の仮歯がとれて、急遽歯医者さんへ。 一時間くらい口をあけたまま。 とりあえず仮歯をつけたが、 わたしの口中には大きな深淵がある。。。 歯医者からもどって池田澄子さんと電話ですこしおしゃべりをする。 「わたし一本も抜けた歯ってないのよ」と池田さん。 「そいつぁ、すごいですよ」とわたし。 そのあと四方山話に花が咲いて多いに笑いあって電話を切ったのだった。。。 マスクをしていても大きく口をあけて笑うと、わたしの口中の深淵がうごめく。。。。 南天の実。
by fragie777
| 2021-10-28 18:43
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