ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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会うてゐる人なつかしき……

9月14日(火)  旧暦8月8日


今朝は歩くのに最適な気候だ。
紫外線は強くなく、雨は降っておらず、大気のひやりした感が肌にここちよい。
というわけで、歩いて出社することにした。



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風船葛(ふうせんかずら)である。
緑がやさしい。


会うてゐる人なつかしき……_f0071480_17142631.jpg

花はとりわけ可憐である。



会うてゐる人なつかしき……_f0071480_17142987.jpg

この辺はかつて野良猫がたくさんいたのだが、このごろとんと見かけない。
きょろきょろしてみるが、人の姿もなくひっそりとしている。



仕事場に製本屋さんからの、表紙の箔押し見本がとどく。
見本というか、すでに進んでいるものなのだが、予定しているのとはちがうとんでもない箔が押されてないかどうかを確認して、製本屋さんに連絡をするのである。



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これだと文字はちょっと読みにくいが、たいへん美しく箔押しされている。
金箔が渋い表紙の色とよく合っている。
酒井弘司氏の句集「地気」の表紙となるものである。

この色が消炭とでも言ったらいいのか、黒にちかいのだが、もっとやわらかくてなんとも言えない深い良い色である。日本の伝統的な色である。こんな色の着物を粋に着こなしたいところであるが、まず私には無理。
本の仕上がりが楽しみである。







新刊紹介をしたい。



金田志津枝句集『花の雲』(はなのくも)


会うてゐる人なつかしき……_f0071480_17145710.jpg

四六判フランス造本カバー装帯あり 202頁 二句組


俳人・金田志津枝さんの第四句集となるものである。第二句集『児童劇』、第三句集『壬生の舞台』はふらんす堂より上梓されている。昭和25年(1950)より俳句をはじめ、昭和46年(1971)に後藤比奈夫に師事、それより今日まで俳誌「諷詠」によって俳句を作り続けてこられたのである。「あとがき」にこう書かれている。
私には『青利根』『児童劇』『壬生の舞台』の三冊の句集と俳人協会刊行の『自註・金田志津枝集』がある。そのことに満足し、その後句集をつくることは考えていなかった。令和の時代となって思いもかけず疫病蔓延の世となり家居の時間が多くなったことで、手もとの三冊の句集を読み返す機会を得た。そして、三冊目の句集上梓からすでに十二年が経っていることに気づいたのだった。その間に二人の弟妹を亡くし、平成二十八年二月には夫を見送り、同じ年の六月には「諷詠」前主宰後藤立夫を失った。令和二年六月五日には、名誉主宰後藤比奈夫が旅立った。夫には出来るだけの手を尽くし心を遣った思いがあるが、比奈夫先生にはお見舞いはもちろん葬儀への参列も叶わなかったのである。
多くの大切な人失った12年間の歳月が生み出した作品をこの度の第4句集にまとめられたのである。そして今年は米寿を迎えられる。本句集には、「諷詠」主宰の和田華凜さんが序句を寄せておられる。華凜主宰は、金田志津枝さんの縁筋にあたる方だ。

 天界へ届く囀米寿美し     華 凜

「愛する伯母へ」と記し、「金田志津枝さんは、私の母方の伯母である。教師だった彼女は幼い私に文学の楽しさを教えてくれた師でもある。志津枝さんは花鳥諷詠の俳句をするために生まれて来たような人だと思う。彼女の話す声はまるで自然を賛美する囀のようである。今私のもとに送られて来る志津枝さんの俳句は、天界にいる愛しい人達へ届ける鎮魂歌である。」とお祝いの言葉を送られている。

この12年間に弟妹をはじめ後藤立夫主宰、最愛の夫、敬愛する比奈夫主宰と続けて失うという喪失の歳月であった金田志津枝さんであったが、集名を「花の雲」とした。
 来し方の見ゆるや花の雲の中
に拠る。いまの金田志津枝さんの気持ちの総括なのであると思う。なんとやわらなかやさしい潤いのある光につつまれた心持ちであることか。死者もまた花の雲のなかにいて、ともに安らっているそんな思いにさせる一句である。喪失のさびしさよりも、ともに生きた人たちとの敬愛と親和の日々が穏やかな充足感となって彼女を包んでいる、そんな一句である。こんな風に自身の生を見つめられたらどんなにいいだろう。亡き人を思いながらも、ヒリヒリするような寂寞感というよりもっと死者の思いに寄りそうような優しさである。

 妹よあなたがサンタさんだつた   (妹滿里子逝く)
 捜すこと勿れ涼しきところに居   (亡夫より)
 なめくぢと書いて涙をこらへたる  (六月五日、後藤比奈夫名誉主宰逝去)
 がんばれのささやき夏の夜の夢か

 夫を恋ふ夫の嫌ひな海鞘食べて

この一句、後半にある句であるがわたしの好きな句である。すこし笑ってしまう。このおおらかにして図太い生活者としての姿勢、遺影は苦笑いをしているかもしれないが、おおいに妻のありようを認めているだろうって思う。夫の嫌いなものを食べて夫を愛しみながらもおおらかに人生を楽しむ、たいへん結構なことである。亡き人も生の領域に引き込みながらもまず達者に生きることだ。そのしたたかさが見事だ。

 会うてゐる人なつかしき朧かな

これは句集の前半にある句。さりげない一句であるが、とてもいい句だと思う。目の前にいる今会っている人がなつかしいというのである。目の前にいる人への懇切な思いが伝わってくる一句である。その目の前の人は特定な人というより、作者の人間への向きあい方なのだ。そしてある年月を生きて来た人だからこそ、この「なつかしい」という感情は生まれるのではないか。とわたしは思った。「会うてゐる人なつかしき」とはなんと素敵な思いなんだろう。そして「朧」。しっとりとしてあたたかでやわらかな感情。この一句にながれる時間の濃密さ。好きな句だ。

 栗ひとつ剝くためにあるよき時間

この句も、金田志津枝というひとの健康的な充実した生をおもわせる一句である。この句の良さは、栗ひとつ剥くという一瞬の時間を作者がその人生においていかに大切にし丁寧な思いを注いでいるか、見えて来ることだ。「よき時間」と敢えて言う、生活の一コマ一コマを丹念に生きてきた著者であるからこそ、ともいえるが、金田さんにとって目の前のささやかなことがとても大切なのである。それは、いま目の前にいる人へのなつかしい思いへとも通じていくものだ。

 あの日より師のなき月日冬帽子
 薄氷に水のさびしさ見えにけり

句集の最後におかれた二句である。喪失感より生の充実感とわたしは書いたが、頑張って明るく生き抜いてこられた金田志津枝さんがみせたさびしさである。なによりもこころをつかれる。薄氷にみる「水のさびしさ」とは、、、、。金田さんのひそやかにして深い悲しみにひやっと触れてしまった、そんな思いがしている。


校正者のみおさんは、「切株に雪が降るだけなる聖菓」を評して「びっくりしました。ブッシュドノエルって俳句で詠むとこんなふうになるのですね……。」と。
本句集をよんだある俳人の方が、「いい句集ねえ、心のある句集だと思いました」としみじみとおっしゃっていたことを書き留めておきたい。



句集名「花の雲」は集中の「来し方の見ゆるや花の雲の中」に拠った。「花の比奈夫」と言われるほど「花」の句の多い先生。その先生に供えるには花のつく句集名は最良だと考えた。また、この名によって私の八十八年のすべてが花の雲の中にあったように、仕合わせだったことがわかる。両親から始まって出会った全ての人の愛の中に生きて来た私であることを思い、またすべての方々への御礼の籠もった句集名であるとも思い、嬉しかった。

「あとがき」を抜粋した。「私の八十八年のすべてが花の雲の中にあったように、仕合わせだった」とあり、「愛の中に生きて来た私」であるとご自身を総括できるのはなんと素晴らしいことだろうか。「花の雲」良いタイトルだ。


本句集の装釘は、君嶋真理子さん。


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句集名の優しさが、品良く実現した装釘となった。


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金箔の文字がいい。


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帯は君嶋さんに花を書き足してもらい、二色刷りに。
それによって透明感のある帯となった。


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カバーをとるとフランス装の本となる。
グラシン(うす紙)は巻いてない。


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手触りがやさしいがしっかりしている。


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扉。



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天アンカットで白の栞紐。


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「四時滴々」という言葉を遺してくれた夫、「心が優しい状態の時、よい句が生まれる」と教えてくれた比奈夫師。私を囲む四時に触れながら優しい心をもってこれからも俳句を離れることのない月日を送ることと思う。(「あとがき」より)

「心が優しい状態の時、よい句が生まれる」は、いかにも後藤比奈夫先生らしい言葉である。
お優しい先生だった。


句集上梓のご感想を、著者の金田さんに伺った。

〇本が出来上がってお手元にとどいた時のお気持ちはいかがでしたか。
手にしたとたん透明な感じがいたしました。表紙の地の色と花の模様の色と動き、また題名の金色のバランスが落ちついていて嬉しかったです。何人かの方から志津枝のイメージが変わった!やさしい雰囲気がよいといわれました。

〇第四句集になるわけですが、この句集に籠めた思いはありますか。
50年教えていただいた比奈夫先生、義弟でもある前主宰後藤立夫、先だった弟や妹、そして60年余連れ添った夫。その人たちの供養への思いがあり、今の自分にはこれしかできないと思い立った句集でした。出来上がって少し安らぎを覚えました。

〇句集上梓後の今後の俳句への思いをお聞かせください。
私は「四時(しいじ)という言葉が好きです。また蕉翁の詞に「三尺の童にさせよ」というのがあります。比奈夫先生は最後に「粽より酸素が好きで百三つ」という句を残されました。私も三歳の稚児になって素直に優しい心持をもって四時万物に対いたいと思います。




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金田志津枝さん

お近くにお住まいなので、昨年はじめふらんす堂に立ち寄ってくださったときのもの。




 沙羅の花子は吾が老に触れざりし

一人息子さんがおられるとうかがっている。優しい心根の息子さんであり、その息子の気遣いをよくわかっている作者がいる。「沙羅の花」の季語だからこそ、いっそう切ない。















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今朝さいていた木槿。







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by fragie777 | 2021-09-14 20:16 | Comments(2)
Commented by りんりん。 at 2021-09-16 08:58
こころを込めた装釘がいつもいいなあと。
拝見しているだけでも和みます。
ただ本を作れるような身分ではありません。
百年早いです。
少し前の猫もいいなあ。猫が異常なまでに好きで、世界一の猫好きを自負してます。
では。
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Commented by fragie777 at 2021-09-16 11:07
りんりんさま

装釘にはこころをくだいておりますので、そうおっしゃっていただけると嬉しいです。
りんりんさま。
それでは、
百年経ったら句集をおつくりさせてください!
わたしも頑張って生きなくちゃ。。。?!

猫はなやましい存在ですね。

(yamaoka)
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