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8月16日(月) 京都五山送り火 旧暦7月9日
散歩コースの途上にあった向日葵。 家の壁に沿って丈高く咲かせていたが、もう大方は花はなく二本だけが咲き残っていた。 今年は炎天下の向日葵を見ずに終わってしまった。。。。な。 ブログでやれ歯痛である、やれ顔が腫れたとさわいでしまったものだから、ブログを見て心配してくださっている方がいて恐縮している。 「俳句日記」を連載していただいている大石悦子氏に伺いたいことがあってお電話をしたところ、「まあ、大丈夫なのですか」と開口一番におっしゃってくださる。「あらら、お騒がせをして恐縮です。先ほど歯医者さんへ行ってきました。大丈夫です」と身を縮ませながらお返事をしたのだった。また、友の会のAさまは、ご丁寧なお手紙と自家製のブルベリーソース等々心づくしのものを送ってくださり、励ましてくださった。わたしは本当に恐縮してしまったのだった。ほかにもきっとご心配をしてくださっている方々がいらっしゃると思うが、yamaoka、元気にいたしております。歯は丁寧に対応してくださる歯医者さんに任せ、蕁麻疹は薬をのめばおさまり、顔の腫れもひき、ホッとしております。 でも心配してもらえるなんて嬉しいな。。。 しかし、yamaokaを甘やかさないでくださいまし。 ブツ(物)など与えてはいけません。 すぐに調子にのる女でございます。 あの人? ほっといて大丈夫よ。 そんな風に思っていただけるのが一番有りがたいです。 今日は「菊香」という香を炊いてみた。 秋になりましたからねえ。。。 新刊紹介をしたい。 四六判上製布クロス表紙帯あり。 194頁 二句組 著者の成冨好乃(なるとみ・よしの)さんは、昭和7年(1932)長崎県大村市生まれ、ことし89歳になられる。昭和48年(1973)俳誌「玉藻」入会、昭和58年(1983)「ホトトギス」入会、平成9年(1997)「狩」入会。現在は久留米市にて療養中でおられる。本句集は、ご子息の成冨雅明さんのご尽力にて刊行することのできた一冊である。原稿入稿から、出来上がりまでなんどかふらんす堂に足をお運びくださり、いろいろと打ち合わせをされたのだった。銀座の有名なお蕎麦屋さんの店主が成冨雅明さんである。昭和47年(1972)から平成25年(2013)までの42年間の作品を収録した第一句集である。鷹羽狩行氏による「鑑賞七句」を句集の最初に収録してある。それをいくつか紹介したい。 手花火の消えて指先までも闇 闇の深い山国か。花火を楽しんでいる時は、指先は鮮やかに見える。ところが消えてしまうと、ふたたび元の真っ暗闇。都会から久しぶりに帰郷すると、闇の深さに驚かされることがあるが、この一句もそうした感慨が土台にあろう。 始めから満開なりし水中花 水の入ったガラスの器に入れてひらかせる水中花は、眺めるたびに涼しげである。「始めから満開なりし」が眼目。花は花でも人工の花であり、蕾のときもなく、散ることもない。満開のまま咲きつづけなければならない水中花のあわれ。 聖夜劇星のひとつが泣きだせり 教会や幼稚園などの、子供たちによる聖夜劇。中村草田男に「聖夜劇幼基督(クリスト・キント)しやつくりこ」がある。この句では星の役の子供に焦点があてられた。劇の真っ最中に突然泣きだしたのを「星のひとつが泣きだ」したと飛躍していったところが秀抜。 ほかに、 初夢のおぼろげなるを吉とせん 路地の風さらつてゆきし風鈴屋 青葉木菟闇の襞より声洩らす 枯れすすむほどに色増す烏瓜 母、成冨好乃の投句ノートは平成二十五年の十一月で終わっている。母が倒れたのは翌十二月だった。病院に担ぎこまれ九死に一生を得たものの、半身に麻痺が残り言葉も思うように出なくなってしまった。四十一年続いた母の投句もここで途絶えている。(略) 毎月「狩」が届くのを心待ちにし、狩行先生に取り上げられ講評が付こうものなら、それは母にとってこの上ない喜び。その講評句が七句掲載された『新狩俳句鑑賞』は母の宝物である。その七句を狩行先生の講評とともにこの句集の巻頭に紹介させて頂いた。 ご子息成冨雅明さんの「あとがき」を抜粋して紹介した。 春愁や顔知らざりし母のこと 揚げ花火大きく闇の動きけり初蝶を見しと誰かに伝へたく 春風の優しきものに触れたがる 吹かれゐる軽さとなりし烏瓜 燕来る一本道の港町 神妙に叱られてゐるうかれ猫 これは担当の文己さんの好きな句である。 初蝶を見しと誰かに伝へたく この句はつぎに文己さんがあげている〈春風の優しきものに触れたがる〉と並んで配されている句である。わたしもこの二句に心がとまった。本句集は、初歩を「玉藻」「ホトトギス」で学ばれた方らしく気負いがなくすうっと人の心に入ってくるような俳句が多い。そして季題のもっている本意がきちんと抑えれて作句されている、だから共鳴句が多い。無理でなく心にやさしくとどまる俳句なのだ。初蝶をはじめて見たときの心の昂ぶり、見たのよ、と伝えたくても目の前には誰もいない一抹のさびしさ。春を迎えれば心が浮き立つのに、春はともすれば人の心の孤独感を感じさせる。擬人化された春風は、春をよろこぶかのようにやさしくやはらかく吹いている、しかし、そこにはふっとその春の喜びに取り残された自身がいる。春愁もまたひとしおなのだ。本句集はやさしい表情をまとっているが、どこか孤独の影がある。その孤心の余情が作品世界を深めている。 「あとがき」で雅明さんは、こう書く。 父親はもちろん母親の顔も遺影でしか知らないで育った母は、三十過ぎの若さで夫とも死に別れ、姉と妹、そして私の三人の子供を女手一つで育てた。そんな母の人生に大きな楽しみをもたらしてくれたのが俳句である。 揚げ花火大きく闇の動きけり 一瞬の景をとらえ、それをシンプルに表現するのが巧みな俳人だと思う。この一句「大きく闇の動きけり」で、揚花火と闇との関係をうまくとらえた。ぱっと花火が揚がった状態を、闇が大きく動いたというのだ。花火は闇までも巻き込んで開く、その躍動感が伝わってくる。その隣りに置かれた一句〈ひとゆらぎして開き初む水中花〉も私は好きな句である。大きな空の出来事も、コップのなかの小さな出来事もさらりと達者に詠むことのできる作者である。 花烏賊の透きし命の裂かれけり これはわたしの好きな一句である。花烏賊の透きとおった身体。それが裂かれるのを「命の裂かれけり」でより痛々しく美しい描写となった。透きとおった命はあえかな悲鳴をあげているかのようだ。しかし、裂かれている花烏賊はあくまで透きとおって美しいのだ。烏賊の命はひんやりとしているのだろうか。 「夕雲雀黒き礫となりて落つ」の句が好きです。印象が鮮明で、まるで影絵のようです。とは校正者のみおさん。 「一滴を絞りきつてはしたたれり」が特に好きな句でした。とは、おなじく校正者の幸香さん。 妹が嫁いでからは唐津市の呼子という山に囲まれた小さな港町で一人暮らしをしていた母。はた目には寂しい環境のようにも見えた。しかし、俳人成冨好乃にとっては、あふれる自然に囲まれた、俳句の素材にことかかない素敵なところであったのかもしれない。帰省した時、都会とは比べものにならないくらい深い闇から、「ホーホー」と青葉木菟の鳴く声が聴こえることがあった。母はこのどこかもの悲しげな声を何度となく一人で聴いたのだろう。二年ほど前、もし句集を作るとしたら……とタイトルの相談をした時、母はずっと前から決めていたかのように、やっと聞きとれるくらいの一音一音をつなぎ「あ…お…ば…ず…く」とこたえた。 母にとって俳句は魂の発露であり、句集『青葉木菟』は母の人生そのもののようにも思える。 雅明さんの「あとがき」から更に紹介した。 本句集については、成冨雅明さんはたいへんこだわられた。 何度かご来社をいただき、造本のスタイル、布の手触りと色、本のレイアウト等々、一つ一つ確認をしていただきながらの進行となった。かつて編集のお仕事をされていたことがあるらしく、また、お母さまのイメージを大切にされていたこともある。 その思いを引き受けながらのブックデザインは君嶋真理子さん。 この写真だとちょっと色が再現できていないのであるが、布クロスの色はやや緑がかった浅い群青ともいうべき色。 赤みを帯びた金色の箔とよく合う。 寝たきりのお母様でも凹凸を触って分かるようにと、 大きな箔押しの題字を希望されました。 クロスの手触りにもこだわられていました。 と担当の文己さん。 見返しは錆朱。 扉の用紙は和紙風の透明感のあるやわらかなもの。 栞紐は臙脂、花布は紅。 華やかさを秘めた一冊となった。 青葉木菟闇の襞より声洩らす 青葉木菟は青葉の頃に南方から渡来し、夜、ホーホーと繰り返し鳴くフクロウの一種。森の真っ暗闇には、幾重にも折り畳んだ「襞」があって、もの悲しい声はその襞から聞こえてくるように思われた。 鷹羽狩行氏の「鑑賞七句」より紹介した。句集名ともなった一句である。「青葉木菟」は、好乃さんが決められていた句集名ということであるが、青葉木菟の声のもたらすさびしさは好乃さんの心の奥にあるさびしさに通底しているようにわたしには思われるのだ。 あるがままてふ涼しさのありにけり 句集の終わり近くにある一句である。いいなあって思う。そのあとにつづく句が〈ハンカチに残る悲しみ洗ひけり〉で、すこし悲しくなってしまうけれど、この「あるがまま」という言葉は、好乃さんのある到達した感慨なのではないかと思った。ジタバタせずに「あるがまま」そんな風におもったら身体も心も軽やかになり涼しい風が吹き抜けていった。 とても好きな一句である。 成冨雅明さんより、出来上がった見本をお送りしたあとメールをいただいた。 先週、九州に行って、母に見本を渡しました。 ガラスごしの面会だったので、うまく話せなかったのですが、きっと喜んでくれ ていると思います。 ありがとうございました。 好乃さま、手にとってくださったのですね! お母さまのためにこうして一所懸命に句集をつくられた息子さんです。 きっとたくさんたくさん感謝されていると思います。 雅明さま。 お疲れさまでございました。 そして有り難うございます。 雅明さんの銀座のお店「手打ち蕎麦成冨」はInstagramがオフィシャルサイトであるということ。 以下にご紹介しておきます。 コロナ禍の状況でなければ、ふらんす堂スタッフ全員で食べに行こうなんて思っていたのだが、いまの状況とてもそれができない。 いつか、きっと伺いたいと思っている。 新橋演舞場の傍ということです。 予約制です。 これは、先日の「マン・レイ展」のあとに書店で買ったハンカチ。 気に入っている。 猿がいいでしょ。 ほかにも動物がいて鰐にも心を動かされたのだけど、猿にした。 あと「翡翠」のヤツも買った。 今度お披露目しますね。(やや自慢モード)
by fragie777
| 2021-08-16 19:39
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Comments(2)
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りんりん。
at 2021-08-17 20:45
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本の表題が堂々として胸を張っているようです。青色だいすきです。ハンカチの猿と足もとが見えてます。美術展が、好物で何かしらグッズをいつもで大散財。ムンク展でのノートは、英単語帳に。それから夜の水平線はとても好きでネット購入しました。
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fragie777 at 2021-08-17 21:48
りんりんさま
夜の水平線を買ってくださったのですね。ありがとうございます。 美術展は好きなものだとテンションがあがりますね。 いつもショップに行っていろいろとわたしも物色します。 そして、もっと買っておけばよかったということがあります。基本的に高いものは買いません。雑貨のようなものがメインです。マスキングテープもいいのがあれば買います。が、今回のマン・レイ展では残念ながらありませんでした。 (yamaoka)
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