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7月8日(木) 温風至(あつかぜいたる) 旧暦5月29日
先日の神代植物園の濡れた薔薇。 なかなか寒い一日だった。 この薔薇園を出てすこし歩いていくと、わたしがいつも行く橅の木があってその先にこわい木々が立っているのだ。 薔薇園にいてそのことを思ってしまう。 ↓ここ。 その日も行ってとおくから眺めてた。 こわいでしょ。白い木々がシマサルスベリ。手前にある黒くみえる一本の木が橅の木。 ここはほとんど人がいない。 怖いけど、気になるのだ。行ってしまう。。 とうとう二階の寝室の冷房が壊れてしまった。 つけるとものすごい音をたてるのである。 冷房が歯ぎしりをしているようなイヤな音である。さっそく工務店さんに連絡をした。 「yamaokaさんとこ、建ててからもう25年以上経ってますよねえ。冷房を取り替えたことありましたっけ?」 「二階の和室のひとつは取り替えたけど、あとの部屋はぜんぶとりかえてないかも」 「そりゃあ、駄目になるわけですよ。よく持ちましたねえ」と驚いている。 「ただねえ、いま電気屋さんがなかなかつかまらなくて、もうたいへんなんですよ」 「そりゃ、弱ったわ。寝るときに暑いのはちょっと困っちゃうなあ」と訴えると、 「わかりました。なんとかしてみます」と工務店の社長さんは電話を切ったのだった。 台風で屋根が剥がれたときも、裏木戸がこわれたときもいろいろと直してもらっている頼りになる工務店さんである。 そうかあ、もうそういう古い家となってしまったのだ。 いろいろとガタがきているわが家である。あっちこっちとメインテナンスが必要である。 そこに棲みついている人間も古くなるはずだわ。 新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装帯なし 180頁 2首組 著者の芹澤香代子(せりざわ・かよこ)さんが、卒寿をむかえたことのお祝いの記念に上梓されたはじめての歌集である。第1歌集であるが、短歌歴はながい。 「あとがき」にはこう書かれている。 人生も終りにさしかかり過ぎ去った日々をふり返ることが多くなりました。 以前亡母と共に「コスモス」に入会、作歌に励みましたが、母亡きあとは遠ざかっていました。今当時の作を読み返してみまして、亡母と共に過ごした日々が思い出され、又、私の歩んで来た日々を顧みて当時の作品をまとめてみたいと思い立ちました。 そして「あとがき」によるとご親戚の方に励まされながらご上梓へたどりつかれたのだった。 本歌集は、そういうことにより1970年から1979年までのお母さまと一緒に短歌をつくられたその作品が収録されたものである。「雜」の項目が立てられてあり、ここはお母さまがなくなられてしばらく短歌をつくらなかった芹澤さんがふたたび短歌つくりはじめるようになったものを、「コスモス」の選者である小島ゆかり氏にお願いをして選句していただき収録したものである。 ご自身の記念として上梓されたものゆえ、冊数も多くはつくらずにお身内の方やご友人を中心にさしあげたものである。ふらんす堂でご縁をいただいたのは、ご親戚の方が「ふらんす堂友の会」の会員の方で、そのお方が芹澤香代子さんにふらんす堂をご紹介くださったのである。90歳というご高齢なので担当のPさんが、なんどもお家まで通って打ち合わせをしたのだった。 雉鳩は丸き姿を映しつつ睡蓮の鉢廻り水飲む 習字をば習ひ始めし母上は子供の如しひたすら書きます 目覚めむれば香の満ちてをり室内に百合の蕾は一夜に開きて 揺れなびく蚊帳吊草を刈りながら若くはなしと腰伸ばしたり みどりこきさつきのはかげはまゆふは卒寿の庭に白く輝く 本歌集のなかよりPさんがあげた短歌である。 歌集を読んでいくと、高齢のお母さまをつねに見つめる視線があって、母と娘の緊密な関係がうかがわれる。 身辺の草花草木につねに心を動かされる作者がいる。 四季の彩りに囲まれているのだ。 揺れなびく蚊帳吊草を刈りながら若くはなしと腰伸ばしたり 作者は「老い」にとても敏感である。母の老い、作者自身の老い、読んでいくと「老い」ということばがかなり散見される。どちらかというと、老いていくことをかこつ短歌が多いかもしれない。〈老の先見すゑて生きる母とゐて吾が過す日のおのづときびし〉ややペシミスティックな作者像が見えてくる。わたしは老いということにたいして、どちらかというと、いや結構に、楽天的かもしれない。 草木の伸びゆく様をいとしむは老のはじめと友は言ひけり この一首にこころが釘付けになった。なに、なに、これってやばいかも。ここ数年とみに木々にこころがいくyamaokaである。木肌を愛おしそうに手でさすってみたり、頰をあてたり匂いを嗅いだり、まるで恋人のようだ。しかしながら、それは「老いのはじめ」ということか。たしかに若いときは、木の存在なんてあって無きようなもの、擦過して顧みることもなし、だった。そうか、わたしが木々に心を寄せるのも、そうなんだ、老いのきざしか。。まあ、いいじゃないの。ドキッとした一首であったけれど、ふん言いたいだけいうがいいわ、と居直ってみせる。あくまでも強気である。 本歌集にはたくさんの草花が出て来る。とくに四季の花々がたくさん登場する。 桜だよりを読みしあしたは嬉しくてみなぎる力吾が身に覚ゆ なつかしき京の桜を想ふ朝みえざる力湧き上りきぬ 「雜」より抄出した。桜の花がお好きなのだろうか。「桜」に元気づけられる作者がみえてきて、ほっとする。 亡き夫の青春の日々今知りぬ残せし品をなつかしくみる 語らざりし吾と会ふまでの日々日記よみつつなほなつかしきかな 「雜」には、亡くなられたご夫君も登場する。芹澤香代子さんは、短歌をつくることによって悲しみの気持ちをそこに定着させ、新たに生きる力を養っていたのかもしれない。ペシミスティックなお気持ちがつよいとわたしは書いたが、その気持ちを言葉にすることによって、生きる力をもらっていたのだ。短歌があって良かったですね、と申し上げたい。 句集の上梓されてより、担当のPさんに「なにゆえもっと早く歌集をつくらなかったのだろう」と歎かれたということである。ご友人にご自身の歌集をさしあげたくてもすでにご友人はおおかたこの世にいない。それがとても残念であるということであった。 しかし、ここに一冊の歌集は生まれたのである。 それは芹澤香代子という人間の内面とその暮らしの日々をかたるのに充分なものだ。 そして差し上げた方々にはその思いがきっと届くと思う。 思い切って一冊にされたことをわたしは喜びたいと思う。 本の装丁は和兎さん。 上品な出来上がりをとても喜んでくださった。 紫がお好きだということで、布クロスは紫に。 見返しは金銀をふらせたもの。 カバーと扉には浜木綿の花。 花布は金、栞紐は白。 みどりこきさつきのはかげはまゆふは卒寿の庭に白く輝く 「卒寿の庭」というのがいいですね!! 卒寿、おめでとうございます。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 歌集のご上梓をこころよりお祝いをもうしあげます。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 芹澤香代子さんは、華道をたしなんでおられる。 どうりでたくさんのお花が登場するはずである。 浜木綿の写真があればいいのだけれど、かわりに百合(!)を。
by fragie777
| 2021-07-08 19:35
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