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6月18日(金) 旧暦5月9日
わが家の令法(りょうぶ)の花が咲き始めた。 山の木の花なので派手さはないが、山の木にしては雅趣がある。 好きな花のひとつ。 虫たちもどうやら好きらしい。 「あなたには、ジェロームがいる?」って、その保健室のアドバイザーの女性はリュカに尋ねる。 リュカはパリの男子高校生。最近、同じ高校の男子生徒が好きになって自身の性のありように悩んでいる。 ちなみに「ジェローム」とは、自身のことをさらけ出して何でも話せる人、この女性アドバイザーの場合は、「夫ではなく、恋人」とあえて言い(すごくフランス的)、そしてその名がジェローム。 「あなたのジェロームを捜して」と彼女はリュカに言う。 「ジェローム……捜してみます」と言ってリュカは席を立つ。 これは、「SKAM FRANCE」というタイトルの実話に取材したフランスのドラマだ。 LGBT、虐め、宗教問題、移民問題、精神疾患等々、いまの高校生がかかえる問題を等身大目線で取り組んでいて興味深い。 わたしはBLの延長戦上で、このドラマを知ったのであるが、(すみません、不届きもので)わたし自身の常識や価値観をいろいろとくつがえしてくれて、面白い。 (ジェロームか……) わたし、いるかなあ? このブログを読んでいるあなたさまはいかが。 新刊紹介をしたい。 四六判ハードカバー装帯あり 96頁 山口真喜(やまぐち・まき)さんの第1詩集である。山口真喜さんは、1947年青森県弘前市生まれ、現在は横浜市在住。2011年「詩壇の集い」入会。神奈川県新聞文芸コンクールにこれまでに4度入選をされ、2018年には富山文学賞を受賞されている。富山県詩人協会会員。本詩集に、横浜の「金井教室」で指導を受けている詩人の金井雄二氏が帯文を寄せている。 山口真喜さんの詩を読んでみてください。 力強さと繊細さ、ユーモアとペーソス。 独りの女性の、生きてきた証がここにあるのです。 そして何より、現代詩がどこかに落としてきた忘れ物が、 この詩集で見つかるのです。 金井雄二 さっそく一篇の詩を紹介したい。 底紅 夏休みはあと三日で終わりだ 卓袱台にやり残した宿題が積まれている 縁側から見える空には入道雲がわきあがり 白い木槿が庭のあちこちに咲いている 卓袱台の向こう側で母が繕い物をしていた でも針は少しも進んでいない ぼんやりと庭を見つめている 父は昨日も夜遅くに帰って来た 茶の間から母のこもった声と 父の酔っただみ声での 言い争いが聞こえていた あれは夢ではなかったのだ 「かあさん、何か冷たいものが飲みたい」 そうだね、お茶にしようか 目が覚めたような顔をして母は立ち上がった 白い木槿は底紅って言うのよ、知っていた? あんなにいっぱい咲くとうるさいね 切ってしまおうか そう言って微かに笑った 「底紅」は木槿の花、秋に咲く花である。 白の花の底に鮮やかな紅があるものを「底紅」という。俳人の後藤夜半が愛した美しい花だ。 「切ってしまおうか」という母。 底紅への残酷なことばを放つことによって母のかなしみはすこしでもやわらいだのだろうか。。 わたしの好きな詩をあげてみた。 富山市に通い、暮らし始めて三年目に出会ったのが、 「詩壇の集い」です。 月一回、北日本新聞社の会議室で池田瑛子先生の指導の下、富山県内の詩を書く仲間が集う会でした。 そこが私の出発点です。 それから十年になります。 また横浜に戻り、昨年から金井雄二氏の金井教室で学ばせて頂いております。 コクヨのメモ帳に、想いを連ねることは、自分を見つめる良い機会になりました。それが詩集になるとは、ただ幸運なことです。 見守り続けてくださった皆様に本当に感謝いたします。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 本詩集の装丁は、君嶋真理子さん。 「女はいつも小走りで」という具体的なタイトルをどういう一冊にするか、悩ましいところだ。 爽やかでスマートな一冊なったのではないだろうか。 本の仕上がりが重くれないようにこころがけた。 表紙。 白の花布にスピンは青。 角背である。 女はいつも小走りで駆けながら それでも足は大地を踏み 諦めない (「女の暮らし」より) もう一篇、詩を紹介したい。 うっかりしていました 石がそこにあることに気づかなかったのです それでもんどりうって、転んでしまいました 両手でうまく体を支えられなくて おでこを打ってしまいました 触ったら、手に少し血が付きました いつも歩いている何でもない道なのに 迂闊でしたね 見ているはずが見えていなかったのです わかっているはずが わかっていない あの人の気持ちも いつの間にか ずれていました あれから会っていません 電話をしたら 声が妙に強張っていて 敬語なんか使うんですよ おでこの傷にバンドエイドを貼って お風呂に入ってお湯に潜ったら 剥がれて、浮いてしまいました 涙のせいではありません 本詩集の担当は、文己さん。 文己さんの担当について、とても丁寧で親切で嬉しかったとおっしゃっていただいた。 詩を上梓されてよりの感想と近影のお写真を送ってくださった。 山口真喜さん 初めての詩集を出版して、初体験のこの胸のドキドキ感は、素直に嬉しいです。 怖いことや冒険はなるべくは避けて通りたい臆病者ですが、背中を押してもらったことに、今は感謝です。 また、気付かなかった癖を専門家にたくさん教えていただきました。 そうか、あれっ、と、校正が戻って来るたびごとに、へえ~。 元をただせば、出所は一つ、私なのですから、一連の流れも癖もあろうというもの。その教えには頷くばかりでした。 そして仕上がった、〈若作りの女性の、海辺での燕と一緒の、小走りの本〉は、只々、本人を幸せにしてくれております。 装幀の君嶋真理子様に感謝しております。こんなに爽やかな表紙になりました。 これからの自分の目標は、まだ混沌としています。 書き散らしてある原稿用紙に目を通すのも、う~んと、溜息しか出ません。 もう枯渇してしまったのかもしれません。 夜中に、突然目覚め、暗闇の中で書き留めたくなったら、また考えます。 詩集を出版するにあたり、関わっていただいた皆様に、有難うございました。 山口真喜さま、 詩集を上梓されてふたたび出発点に立たれたのだと思います。 どうぞ、心をあたらしくしてさらに歩みはじめてくださいませ。 そう、小走りで。。。 そして、軽快に力強く。
by fragie777
| 2021-06-18 19:35
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