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5月13日(木) 旧暦4月2日
仙川の軽鴨。 この日は二羽で川を見下ろしていた。 お待たせしておりました北大路翼著『加藤楸邨の百句』の再版が出来上がってくる。 また、電子書籍版も配信になった。 この際、是非にお求めを。 夕方ちかく自転車屋さんに行く。 自転車を見るためである。 いろいろと置いてあるものを見たり、カタログを見たりして買うことに決めた。 ただ、それは7月以降にならなくては入荷しないという。 「急いでいるわけじゃないから待つわ。」と男性スタッフのMさんにつげて、待つことにした。 何か買うときってまず何にこだわります? 値段、ブランド、性能、デザイン、etc. わたしはデザインだ。 デザインと色、その次が使い勝手。 時間がかかっても気にいったものにしたい。 7月になるのが楽しみだ。 自転車屋さんていいなあ、いい匂いがする。 空飛ぶ自転車だ。 見ていると心が浮き立つ。 「10分で戻るわね」とスタッフの文己さんに告げて、結局30分以上も自転車屋さんで時間をすごしてしまった。。。。 新刊紹介をしたい。 四六判ソフトカバー装帯あり 198頁 二句組 著者の大澤保子(おおさわ・やすこ)さんの第2句集である。大澤保子さんは、昭和9年(1934)東京生まれ、昭和59年(1984)「草笛」入会、平成元年(1989)「小熊座」入会。平成5年(1993)第1句集『葡萄園』上梓。「草笛」「小熊座」同人、草笛賞受賞、現代俳句東北大会賞受賞、現代俳句協会会員、岩手県現代俳句協会副会長、岩手県俳句連盟理事。本句集に「小熊座」主宰の高野ムツオ氏が序文を寄せている。 高野ムツオ主宰は、大澤保子さんの句にじっくりと向き合う。そして、「風土に立脚しているとはいえ、土の匂いや土に生きる体臭はそれほど濃くはない。むしろ静動異なりながら、その鋭利鮮明な映像は理知的で確たる構成力も伴っている。これは保子さんが東京生まれで、俳句以外に短歌や詩にも精通していたことにも拠るが、鬼房の俳句や文章を通じて新興俳句や社会性俳句を咀嚼し血肉としていたことが大きいだろう。」と保子さんの句を評する。さらに、 「平成七年頃には二十句応募の細谷源二賞に挑戦し小川双々子の一席に入っている。小川双々子は加藤かけいにも学んだ東海中部の前衛俳句の重鎮で、記憶に間違いなければ、昭和三十一年に鬼房、鈴木六林男、津田清子と共に「天狼」の同人に推挙されていたはずだ。つまり、保子さんの俳句は当時から、一地方色を超えた普遍的な風土性と現代性を兼ね備えていたのである。とはいえ保子さんはやはり鬼房が指摘する通り、北方型の俳人である。」と語り、句歴の長さと深さにふれ、一風土をこえた普遍性と現代性を評価しつつ、やはり東北に生きる俳人であると位置づける。 おとうとよ鉄の匂ひのつばくらめ 青鹿のごとく月下の一流木 月代や犬の首輪が水底に 立ち止まるたびに冬木となつてゐる 綾取の川をのぼれば妣のくに 戦よあるな土を零して蟹のぼる 草木と同じ息せり初しぐれ 奥羽山脈よりの風花鬼房忌 序文であげておられる俳句から抜粋して紹介した。 担当スタッフの文己さんの好きな句のなかから5句のみを紹介。 切株をあたためてゐる春の雪 桐の花母に卒寿の歩みありうしろにも桐の一葉の落つる音 虎杖をほきと手折れば黄泉の国 石けんの窪みはるかに春の海 切株をあたためてゐる春の雪 この一句、雪が切り株をあたためるなんて、と思わず思った。春の雪といえども雪は雪である。冷たいよ。ああ、でもここは東北なんだ。冬のあいだガンガンに凍り付いた樹木たち、春になって気温がやわらぎ木々の身体もほどけていく、こに一句の光景は、ふんだんに水を含んだ春の雪が切り株を明るく濡らしているのだ。そして切り株はたっぷりと濡れている。濡れるということは雪が外界の気温によって溶けはじめている。春の雪の降る季節ともなれば、木々も目覚めを促さされる。木々にも血流がかよいだした。そんな森の息吹を感じさせる一句だ。北国でなくては詠めない一句であり、まさに春の雪という季語の本領発揮の一句となったのではないだろうか。そういえば、師の鬼房に〈切株があり愚直の斧があり〉の句があって好きな一句であるが、あるいはこの「切株」は、鬼房の切株として詠んでいるのかもしれないと思った。 石けんの窪みはるかに春の海 わたしもこの一句は好きである。これも春の句だ。東北人にとってやはり春のおとずれは格別なものがあるではないだろうか。石鹸の窪みから春の海へと思いが飛翔する、その距離がすごい、って思う。まあ、たいていは石鹸は水のそばにあるものだから、その飛び方はまったく奇想天外というわけではないが、小さな手の上の石鹸のくぼみが、春の海へと連れて行ってくれる、春はすべてを解放してくれるのだ、洗面所で手をあらっときに石鹸の窪みに気づいたとたん、バックの映像が一挙に春の海へとかわる、そんな映画の一シーンのようにも見え、あるいは「窪み」で一端切れて、ふと窓の外をやると海がはるかに見える、こっちの方が現実的だな、でも、映像が飛んでいくほうが、楽しいから、わたしはそんなふうに詠みたい。いずれにしても春が待ちどおしい北国なのだ。 完熟といふ痛みあり榠樝の実 この句も好きである。榠樝の実のみを詠んだものであるが、まさに「榠樝の実」の真骨頂ともいうべき姿だ。細見綾子さんだって〈くわりんの実傷ある方を貰ひたり〉と詠んでいるくらいだから、その熟し度は傷によって知られるというもの。この一句、榠樝の傷を詠まずして「痛みあり」と詠んだところが上手いと思う。しかも「完熟=痛み」として詠んだことによって、榠樝が榠樝たることを公言した。なんだか榠樝の実ってカッコいいわ。 校正スタッフのみおさんは、〈黒南風を来て豊頬のかまど神〉が好きです。と。 ほかに、いろいろとぐっときた句があるのでいくつか紹介すると、 風船のころがつてゐる仏間かな 夕河鹿紙に重さのありにけり 涅槃図のどことも知れず水の音 水餅に鬼房のこゑ充満す 勤務せし三校流されたりと春 東北日本大震災を被災された大澤保子さんである。 句集『葡萄園』の上梓から永い歳月が経ちました。第二句集の計画を立て、句稿の整理を続けて来ましたが、実現までには届かず、今日になってしまいました。 高野主宰には、御多忙の中を、懇切な御指導を賜りましたことを心より御礼申し上げます。 顧みますと、俳句の手解きをいただきました森荘已池先生、小熊座へご縁を結んで下さいました「草笛」代表の亡き宮慶一郎氏、小熊座へ入会致しまして佐藤鬼房先生から高野主宰へと御指導をいただいて参りました。 この永い歳月を思い返しますと、感謝と幸せな気持ちでいっぱいでございます。 句集名「巴旦杏」は高野主宰が選んで下さいました。「祖母の名はやすの巴旦杏たわわ」に拠るものです。 その上に、身に余る序文を頂戴致しました。自分の俳句の原点を大事にこれからも続けていきたいと願っています。 地元で、永い間、御指導をいただいております「草笛」代表の太田土男様、多くの句会でお会い致しました皆様、本当に有り難うございました。 これまで俳句に心良く協力してくれた亡き夫、そして家族に感謝します。 「あとがき」を抜粋して紹介した。 装釘は君嶋真理子さん。 金文字の題簽は、ご本人によるもの。 表紙。 見返しは地模様のある透きとおったもの。 扉。 涅槃西風水面は氷りつつ流る 鬼房先生が保子さんの句に指摘された「爽やかな心象の飛翔」の翼が、目に見える世界から目に見えない世界へと、いよいよ融通無碍の力を発揮し始めた証であろう。(序・高野ムツオ) このたびは母大澤保子の句集刊行につきましてたいへんお世話になり、まことにありがとうございました。 おかげをもちまして本人念願の第二集をまとめることができ、わたくしたち家族の者も安堵しているところです。 代送いただいた分は続々到着し、母のもとに受け取りの電話が多数入っているとのことです。一人住まいのうえにコロナ禍で外出を控えるなか、懐かしい友達からの電話で楽しいひとときを過ごしているようです。 あらためましてこのたびのご助力に厚く御礼申し上げます。 ご子息の大澤研一氏よりご丁寧なメールをいただいた。 そういえば、この句集のお話をいただいたときにも、お母さまにかわってご子息よりいろいろとご連絡をくださったのだった。 ご家族の皆さまに祝されてのご上梓となったことを改めてうれしく思います。 さきほど、友人からKindleを買いました。という連絡をもらった。 いよいよ彼女も電子書籍をよむのか。 良きことである。 こんな色の自転車にのってぐいぐい飛ばしてみたいけど、無理。 わたしは電動自転車を買ったのよね。 ちょっとダサい。。
by fragie777
| 2021-05-13 19:50
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