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12月7日(月) 大雪 旧暦10月23日
![]() 昨日の神代植物園は、楓紅葉がすばらしかった。 いま訃報が入った。 有馬朗人氏が亡くなられたということである。 今日の午前中、ご自宅で倒れていたのを発見されたということ。 先日、「天為」の方の句集のご序文をいただいたばかりであり、お電話でお話したばかりだったのに。 とてもお元気なお声だった。。。 享年90歳。 ご冥福を心よりお祈り申し上げます。 とてもショックで気持ちが茫然としているが、 新刊紹介をしたいと思う。 四六判ハードカバー装 198頁 二句組 著者の岡葉子(おか・ようこ)さんは、1951年千葉県生まれ、現在は東京都町田市在住、本句集は第1句集である。1990年カルチャーセンターの俳句教室にて俳句をはじめ、2000年「萌」入会、2000年「萌」新人賞、2004年「萌」結花賞受賞、2005年「萌」賞受賞、。「萌」同人。俳人協会会員。本句集は2000年から2018年までの句を収録している。 「あとがき」によれば、 平成が終りをつげたとき、にわかに俳句にも一区切りつけて新たな一歩をふみだそうという思いがわいた。この句集には「萌」に入会した平成十二(二〇〇〇)年から平成三十(二〇一八)年までの作品を収めた。三田きえ子主宰、伊藤康江副主宰の選をへたもの、なかでも思い出深い句をえらんだ。 この町に通ひなれたる立葵 海よりも山暮れなづむ立夏かな 休館日とて噴水のひとり言 あめんぼの輪に雨の輪のかぶさりぬ 一善をなして涼しきひと日なり 藍浴衣身ひとつといふ軽やかさ 少女にも黙す日のあり白桔梗 帆船の絵皿に夏の来りけり 白粥のふつふつと春立ちにけり さしあたり毛色にて呼ぶ子猫かな 担当の文己さんが好きな句をあげた。 少女にも黙す日のあり白桔梗 わたしも好きな一句である。「白桔梗」の季語が、少女という未成熟さをやどす固さとその清潔な輝きに響き合っている。桔梗という花の折り目正しさのある典雅さは、紫の花にこそであるけれど、白はまた別のおもむきがある。おおらかにおしゃべりをしていた愛らしい少女がふっと黙ってしまう。そんな少女をみて、ご自身が少女だったころを思い浮かべたのかも知れない。その小さな沈黙は、少女の心のなかに生まれつつある内面の翳りでもあり、世界と自身との親和関係がすこしずつうしなわれていくような不安、そんな少女に、白桔梗は、凜とした白をはなって清雅な気高さを保っている。沈黙の少女へやや距離を保ちながら。 さしあたり毛色にて呼ぶ子猫かな こういう呼び方って猫にいちばん多いかもしれない。トラ、ミケ、クロ、茶トラなどなどとか呼び名だけでその猫の様がわかる。しかし、「さしあたり」である。まずは、毛色で呼んでおいて、これから貰われた猫は、愛情の籠もった名前をもらうんだろう。いや、そういう猫はラッキーで、貰われないかもしれない。作者の目の前には生まれたばかりの子猫が何匹かいて、話題となっているのだが、話題にするにためには「あの子」「この子」ではまどろっこしい。ということで、毛色で呼んじゃえということ、よくあることだ。 帆船の絵皿に夏の来りけり この句は、文己さんのとりわけ好きな句で、岡葉子さんの自選句のなかから文己さんが選んで帯に用いた一句となったということ。帆船の絵皿って、帆をかけた船が描かれている皿のことだろうけど、多分これは皿として用いているのではなくて飾られている絵皿ではないだろうか。わたしは想像したのは、やや大きな皿で華やかなブルーで絵付けしてあるもの。それがリビングの一角の皿立ての上に飾られている。作者お気に入りのものなのだろう。いつも見ている絵皿であるのだが、その青の色がひときわ強い日差しに鮮やかに浮き上がった。まぶしいくらい。ああ、この強い光は、、そうか、もう夏がやってきたのか。季節は身近ないろいろなものをとおしてわたしたちにその到来を知らしめてくれるのだ。 あともどりかなはぬ水の澄む日かな わたしの好きな一句である。あるのよねえ、ふっと昔のことを思い出して自分を抹殺したくなることって。もうそういうときは舌をかみ切って死にたいくらいの気持ちにはなるが、絶対死んだりはしないけど、「ああ、どうしよう!」とか「もう、絶対いやだ!」とか叫んでいる自分がいる。つい最近のことではなくてかなりの大昔のことでもリアルに自分の恥を思い返すことがある、わたしはそういうことがしょっちゅうある「恥多い人生」であるけれど、岡さんは、「水澄む日」に過ぎてしまった過去のことを思い出し、もうあともどりはできないのよねえと溜息を漏らされたのだろう。澄む水にご自身の姿を映したときにふっと思いだされたのかもしれない。あるいはこの「水澄む」の季語の澄んだ水が心の陰影を映し出しているようでもある。 平成二年に転勤を機に職場の句会にさそわれて俳句をはじめた。国語の教員だったので教科書の俳句はわかったつもりで教えていたが、作句となると手も足も出ない。そこで職場にほど近い関内のカルチャーセンター俳句教室に通いだした。 カルチャーセンターでは故山口冬男、故大井雅人、日美清史、三田きえ子の各師にご指導いただいた。 平成十二年に三田先生が「萌」を主宰されるにあたり「萌」に入会し、長らくのカルチャーセンターを卒業することになった。 ふたたび「あとがき」を紹介。 「萌」で熱心に学んだ岡葉子さんは、「萌」でたくさんの賞を受賞されている。 本句集の装幀は君嶋真理子さん。 繊細で美しい仕上がりの上製本となった。 見返しは淡いブルー 表紙はオフホワイトのシルク感のある布。 花布のみ真赤で、あとはすべてパステル調である。 扉。 丸背が美しい仕上がりである。 「葉月」は陰暦八月の異称。八月は私の生れ月であり、名前の一字にもかようところから句集名とした。(あとがき) 扇風機まはりて町の写真館 祭提灯ともり川風まねきけり 川の面に灯の色ながる初浴衣 藍浴衣身ひとつといふ軽やかさ 本句集のなかごろにおかれた4句である。 夏の景がならんでいるのだが、どれも懐かしい昭和の匂いのする情緒ある風景である。 お陰様で、皆さんまず装丁の美しさを褒めてくださいます。 お好きな句は様々で、 俳句の多様性に改めて感じ入っています。 「俳句は晩年こそ大事」とか。 10年後の句集作りをめざして、励みたいと思っています。 その節はまたよろしくお願いいたします。 ご丁寧なメールをいただいた。 岡葉子さま、 こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。 テレビ効果か、今日は北大路翼著『加藤楸邨の百句』にたくさんの注文をもらったのだった。 書店への出荷を待っている猫たち。
by fragie777
| 2020-12-07 20:17
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