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10月26日(月) 旧暦9月10日
神代植物園に咲いていた十月桜。 先週はぜったい髪を切ろうって決意したのに、結局美容室に行けなかった。 鏡をみるたびに、(伸びたよなー、うっとおしいなあ)って思っている。 今行っている美容室って、じつはふらんす堂のお隣のビルの二階、あるいて三十秒もかからないところなのだけど、人気があるらしく予約ですでにいっぱいだったのである。30年間通っていた美容室がいつでも電話をいれれば予約できたことに慣れてしまって、甘くみていたのだ。けっきょく、予約できたのが31日(土)。 まっ、仕方ないわ。 出掛けることもほとんどないしね。 11月1日からは、髪をさっぱり切って軽やかな人生がスタートする! って考えることにしよう。 新刊紹介をします。 四六判ソフトカバー装 180頁 二句組 著者の清水志(しみず・えさし)さんの第3句集である。清水志さんは、昭和18年北海道岩見沢市生まれ、現在は札幌市在住。平成8年(1996)に俳句をつくりはじめ、平成11年(1999)「狩」(鷹羽狩行主宰)に入会、平成17年(2005)「狩」同人、平成31年(2019)「狩」終刊により「香雨」(片山由美子主宰)に入会。本句集は、第1句集『流氷』、第2句集『遠山河』につぐものである。帯文を「香雨」名誉主宰である鷹羽狩行氏が寄せ、先輩にあたられる太田寛郎氏が帯の12句を抄出している。 白樺の林を縫つて紋黄蝶 白魚の目の大いなること哀れ 白鳥や二羽てふ数の美しき 本句集には、母や妻や子を素材とした作品が多い。その中に、小さな蝶から白鳥まで、生き物を詠んだ句があり、著者・清水志さんの慈愛に満ちた眼差しを感じさせる。生きとし生けるものすべてに対する、愛情あふれる句集と言ってよいだろう。 鷹羽名誉主宰の帯文を紹介した。 本句集がふつうの第3句集とすこしちがっているのは、第3句集にあたる220句に、既刊句集より50句を加えていることである。そのことは当初から清水志さんがこだわられたことで、さらにもう一つ、句集名を「夜汽車」とされたいということであった。 上京の夜汽車の切符啄木忌 春の灯となりたる夜行列車かな 海峡をわたりし梅雨の夜汽車かな 寒紅や夜汽車の窓を鏡とし 赴任地へ走る夜汽車よ冬銀河 集中にある「夜汽車」の句を紹介した。清水志さんの青春時代にはじまってその人生を貫くように夜汽車は走っていたのである。人生と切ってもきりはなせないところに夜汽車はあった。 句集『夜汽車』は私の第三句集です。二二〇句を収めました。これに既刊の二句集から各五十句を加え、三二〇句をもって一冊としました。句集名の「夜汽車」は、夜学へ行くべく上京の際に利用した夜汽車での出来事や、私の青春時代はまだ汽車が輸送の主力でしたので、さまざまな思い出があり、これに決めました。 「あとがき」である。 どれほどの思い出が夜汽車によって育まれたか、昭和の香りがするロマンがある。 清明やバケツに満たす井戸の水 夏至の日の水平線の遥かなる秋の雲ひとつ離れぬ手稲山 高遠の旅美しや夕桜 さざなみを岸に遊ばせ風五月 車椅子止める二月の日だまりに 人を寄せつけぬ知床冬に入る 赴任地へ走る夜汽車よ冬銀河 出来秋の実に大きな塩むすび 担当の文己さんの好きな句である。 あまりわたしの好きな句とだぶらないなあ。 夏至の日の水平線の遥かなる 気持ちのいい句である。作者の清水さんは北海道生まれで北海道で生活をされている方だ。第1句集が「流氷」ということでも、海の風景は身近なのだろうと思う。夏至は昼がもっとも長い日である。そんな日はこころも解放され、とくに北海道であるならば暑さもそれほどでなく、たっぷりと明るい時間を楽しむことができるだろう。水平線までの距離もこころの広やかさがともなってさらにさらにいつも以上に遙かに感じれるっていうものである。作者の心の爽快感がそのまま伝わってくる一句だ。 秋の雲ひとつ離れぬ手稲山 この句は、太田寛郎氏も帯びに抄出されている一句である。「手稲山(ていねやま)」は、今調べたところによると、「札幌市内の西に連なる山並みの中でひときわ高い頂に、テレビアンテナが林立するのが手稲山だ。テイネイはアイヌ語で「濡れている」を意味し、山麓を流れる発寒川の湿地帯を指したもの。原名はタンネウエンシリ「長い断崖」で、山頂南面の長い崖がそれだ。手稲山は北大の前身である札幌農学校時代から学生たちによって登られ、寮歌にも唄われたお馴染みの山。」とあり、清水さんがくらす札幌市にある山である。写真でいま見たのだが、なかなか美しい雪山風景だ。スキー場でもあるようだ。これは「手稲山」への挨拶句。なだらかな稜線がつづく秋の手稲山を雲がひとつ離れていく。秋晴れの大きな空、白い雲ひとつ、「手稲山」という固有名詞によって独自の俳句となった。アイヌ語を語源とするというのも北海道らしくていい。 ふるさとの真白の蚊帳に母と寝て これはわたしの好きな句である。「真白の蚊帳」がなんとも胸にせまってくる。帯文で鷹羽先生が語っているように「母や妻や子を素材とした作品が多い」なかの一句でとりわけ印象的だった。母親への濁りのない清らかな愛情を「真白の蚊帳」が象徴しているようだ。母と息子のまっさらな時間。。。。 桜蘂降りしよ少し歩かうか この句は面白い一句だ。呼びかけの一句である。桜蕊がさかんに降っている。桜が散っていたって一句になるかもしれないが、ちょっと通俗的になる。「桜蕊」が渋くていいじゃない。桜が終わってその残滓であるといったら、桜蕊にしかられそうだが、そうであっても一種の華やぎの趣はある。岡本眸の句に「桜蕊ふる一生が見えてきて」という有名な句があって好きな一句だが、なにか桜蕊ってひとをシンとした気持ちにさせるものがあるのかもしれない。桜蕊がふるのをみてふと、これからのこと、あるいはいまおもっていることなど、そぞろ歩きながら話したくなったのかもしれない。「桜蕊」であるからこそ一句となった。 夜具一つ重ねて眠りたる白露 この句も印象的だ。思うに清水さんは、「白」の使い方がうまいと思う。帯に鷹羽先生によって紹介さいれている句もすべて白があり、「白樺に記せしわが名や鳥雲に」という太田寛郎氏がえらんだ帯の句もある。わたしが紹介したこの句は「白露」が季語。24節気のひとつで「陰気やうやく純にして」と歳時記にあるそんな気を感じさせるものだ。この一気に読み下す叙法もいいし、それが「白露」に収斂されていくというものまさに「陰気」が「純」となるそんな一瞬をおもわせる。清水さんにとって眠りとは、さきほどの「真白の蚊帳」のように汚れなき純白の時間であるようにもおもえてくる。北海道に生き、北海道で暮らす人の特別な眠りの時間なのであろうか。。。 この句集には、平成十一年の「狩」入会から平成三十年の「狩」終刊までの会員時代の句を収めています。たいした句はありませんが、初心から二十年間積み重ねて来られたことに満足しています。 鷹羽狩行先生(「香雨」名誉主宰)にはこの間、「狩」主宰としてご指導を賜り、心より厚く感謝申し上げます。また、ご多忙の中この度も帯文を頂き、お礼申し上げます。 私は「狩」終刊後、「香雨」に入会し、末席を汚しています。主宰の片山由美子先生には日頃のご指導はもとより、この度の句集刊行にもご尽力を頂きました。太田寛郎先生(「香雨」白雨集同人)には選句のほか、さまざまな疑問等にもご教示を頂きました。有難うございます。お二方に心よりお礼申し上げます。 「あとがき」である。 本句集の装丁は君嶋真理子さん。 夜汽車がはしる風景を装画とした。 タイトルは銀箔押し。 ブルーでもすこし黄色がまじった温かさのあるブルーである。 郷愁を感じるブルーだ。 カバーをとった表紙にも夜汽車がはしる。 見返しは表紙と同じ用紙。 扉にも夜汽車がはしる。 郷愁の夜汽車は、この句集を貫いて走っているのだ。 10月の後半になると雪が降る(年もある)という清水さんのお話を思い出しながら 雪国の生活の句をしみじみと読ませて頂きました。 とは、担当の文己さんの感想である。 校正スタッフのみおさんが好きな一句はつぎの句。 笹鳴や日をはすかひに雑木林 本文の最後のほうにある句、 帰省子を待ちたる見合写真かな このお見合いはうまくいったのでしょうか。 ちょっと気になりました。 秋晴に輝いていた白鷺 この白は清水志さんにささげたい。
by fragie777
| 2020-10-26 19:44
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