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9月19日(土) 子規忌 彼岸入り 旧暦8月3日
稲の秋である。 今日は久しぶりに友人たちと谷保天神裏の里山をあるく。 曇り日の一日であったが、稲穂はかくも充実していた。 顔をうずめると香ばしいあたたかな稲の香が鼻をつく。 いい匂い。。。 うっとりとしてしまう。 カイト(凧)のようなものが空を飛んでいたが、「鳥脅し」であるらしい。 おとなりの田圃ではちょうど稲刈りが終わったところ。 道具をかたづけはじめている。 刈られたばかりのまだ青々とした稲束。 季語でいうところの「稲架(はざ)」であり、「掛稲(かけいね)」のことだ。 「いったいどのくらいの量の稲を刈ったのですか」という友人の問いに、 「まあ、わたしたちが食べる量ほどですよ」と答える男性。 背中が充足感に満ちている。 いわゆる「ほまち田」である。 しばらく歩くとまた稲田が。 友人によるとこの畑の案山子制作への技術の高さはハンパじゃないという。 まるで人間がかがんで作業をしているみたいだと。。。 この写真でわかるかしら。 ふたり(?)の案山子がいるのだけれど。(肩と頭だけが覗いている) わたしたちもアッ、人間がいるって思ってしまう。 下校の中学生たちがみえる。 田圃のなかにある中学校である。 『禾(のぎ)』という第5句集のあとがきに 「不思議とは存在そのものでもある。中で、稲の不思議さと美しさを改めて感じ、田圃に通いつめた。「禾」と題した所以である。」とある。 何句か紹介してみたい。 穂を孕む稲の香強しとも強し 斎藤夏風 井に組みて八重の棒稲架仕上りぬ 手刈して切尖揃ふ稲の束 稲穂波角ひと揺れに始まりぬ ほまち田の出穂の三角うつくしき 出穂の田の蜘蛛の巣けふは水平に 棒稲架に落日の靄たちにけり そして、やはり福田甲子雄という俳人もわすれてはならない。 『福田甲子雄全句集』より。 故郷は稲の刈りごろ雲とべり 福田甲子雄 早稲の香に沈みゆく陽の泥まみれ 稲架を組む男のおけさ夕日を呼び 稲刈られにはかに土の色親し 稲刈つて鳥入れかはる甲斐の空 稲架解きて光も風も束をなし 蛇笏忌の田に出て月のしづくあび 十月三日は蛇笏先生の命日。この日は、満月に近い月の光が昼のように野を照らしていた。ことに、昼からの雨があがって大気が澄んでいる。家から西に少し行くと田に出る。この田に来て、稲のみのる匂いを体いっぱいに吸うと、何もかも忘れてしまい月の光の中へとけていくようだ。稲の葉にも、畦道の草にも露がぎっしり宿って、おりからの月光に虹色を放つ。あたかも月の雫のように感じられた。(「自句自解」より) これは谷保天神のわが神鶏のキング。 大きな声で高鳴きをしたいた。 「久しぶり、元気だった?」と言って近づいても、 しらんぷりである。 キングゆえに人にへつらうことはしないのである。 羽艶もよく、いつもながら孤独であるようだが、充実しているのだろうと安心した。 今日はひさしぶりに電車に乗ったせいか、行きでは電車を二本乗り損ね、帰りは降りる駅を降り損ね、さらに違う電車にのって遠くに運ばれ、ようやく仙川の駅にたどりついたのだった。
by fragie777
| 2020-09-19 20:40
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